山田研究室初の博士号取得者が出ました

いや、ほんと感激です。昨年12月31日をもって、山田研究室初の博士号取得者が出ました!!このキャリアを始めて、もう13年くらいですかね。前任では院所属はできませんでしたし、九大にきて、8年くらいでしょうか。赤堀先生のような研究室を作って、教育工学研究の発展に貢献したいなと思って、がんばってきました。やっとこの日を迎えることができました。

もちろん、私の力だけでは何もできませんでした。教育工学研究がメジャーとなっていない研究科で、社会科学系に分類される専攻で、教育工学のような、理系色がある研究分野の理解をして頂くことも大きな課題でしたし、今もそれは課題として存在すると思っています。教員や学生それぞれに何か考えるものはあるとは思いますが、教育学というものがそもそも多様性があり、様々な領域との連動性を受け入れている学際的な特徴があるという点もあり、その多様性を受け入れる度量はある研究分野だと思っています。

副査になって頂きました本学大学院人間環境学研究科の久米弘先生、田上哲先生、また木村拓也専攻長、岡幸江 前専攻長、専攻の先生方、外部審査員に入って下さった京都大学 緒方広明先生には大変なご助力を賜りました。大変感謝しております。特に久米先生におかれましては、普段のゼミもうちの学生が参加しているのですが、その場で様々なフィードバックを頂き、よりよい博士論文になったと思います。他にもラーニングアナリティクス基盤の提供・準備にご協力くださった島田敬士先生、谷口雄太先生、Lu Min先生にも大変感謝しております。

さて、実際に博士号を取得した学生、いや、もう今は学生じゃないか・・・博士号授受者は下記の方です。

陳 莉(博士(教育学) 博士論文タイトル「Collaborative Problem Solving-based STEM Instructional Design based on Learning Analytics (ラーニングアナリティクスに基づく協調的問題解決型STEM授業のデザイン)」

陳さんは現在、AIP加速研究の学術研究員をしてもらっています。ラーニングアナリティクス研究に従事してもらっています。2020年に開催された国際会議CELDAではBest paper awardを受賞しています。元々中学校の化学の先生をし、その現場の管見をもちつつ、新しい技術、特にラーニングアナリティクスを活用して、協調的問題解決学習を取り入れたSTEM教育のデザインを模索するという大きなテーマに取り組みました。今でこそ、GIGAスクール構想とかあり、学校現場にICT導入が積極的に進んでいますが、この研究を始めた頃は、まだまだその先駆けで、協力を得るのになかなか苦労しました。その苦労が実ったと思います。現場還元性が高い研究ですので、これからの1人1台端末時代、さらに教科教育としても、STEM/STEAMが広がっていく様相がある中、有用な知見になっていると思います。

これからの陳さんのキャリアがどうなっていくのか、楽しみです。私の研究室は最初に説明したように、私の指導教員でした赤堀侃司先生の研究室の姿を目指しています。厳しくも、研究に専念し、研究者、社会人として成長の実感が感じられる研究室を目指していきたいと思います。まだまだその道半ばですが、教育・学習の質改善に寄与できる教育工学研究を進め、国内外に発信できればと思っています。それを担う人材を育成していきたいと思います。

陳さんに続いて、これからも教育工学研究を世界的に担っていける研究者人材の育成を精一杯やっていきたいと思います。

今後ともどうぞよろしくお願い致します。

新年あけましておめでとうございます

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。といっても、もう2週間ばかし経ってしまいました。海外で初めての新年を迎えましたが、日本と違って、3日から早々に日常が始まりました(2日は日曜日だったので)。

昨年はあまりよい研究成果を挙げることができませんでしたが、今年の目標をどうするか・・・ですね。サバティカルも残り8か月ほどになりましたので、やはり論文ですよね。SSCIを始め、高みを目指してがんばりたいです。

また、昨年、採択して頂きました2つの科研費に関するプロジェクト。これもかなり重要なものになります。GiGAスクール、高等教育における教育の情報化が当然のものとなり、様々な教育関係データがそろってきます。しかし、そのデータをどうするのかはやはり人がどうするか、具体的に言うならば学習に関するステークホルダー、特に学習者や教員がどうするかなのだと思います。ここはなかなかシステムだけでは語れない部分かと思います。来年度はその本流の研究を進めて、研究成果を出していきたいと思います。

またこれに伴う、学習ダッシュボードの開発を進め、国際共同研究も進めていきます。この8か月、がんばりたいと思います。

あと、早速、IEEE ICALT 2022のTrack 14のChairとなりました。Maiga Chang先生(Athabasca University)、Mouna Denden先生(Polytechnic University of Hauts-de-France)とともに務めます。TrackのScopeとしては、「フォーマル学習やインフォーマル学習におけるICTを活用した評価」です。フォーマルとインフォーマルをつないだシームレスラーニングにおける評価も対象です。幅広く、ICTを活用した教育・学習評価と捉えて下さい。ぜひご投稿ください。PC memberだと思ったので、受けたのですが、Chairだったとは・・・既にご協力くださっている方々もいます。大変感謝致します。場所はルーマニアのブカレストなのですが・・・この状況下だとわからないですね。オミクロン型は世界中にひろまり、ウィルスも必死で変異をして、生き残ろうとしますからね。まさに本能ですね。ワクチン接種とのイタチごっこになりつつありますが、新型コロナウィルスが落ち着き、現地開催になることを願っています。

今後ともどうぞよろしくお願い致します。

またまた大変だった2021年も終わります

日本ではもう新年を迎えていますかね?まだかな?今年も大変な年でしたね。コロナも落ち着くと思いきや、新型がまた出て、収まる気配を見せずでしたが、コロナのことで、日常生活にもいろいろ変化があった1年でもあったかと思います。私個人としてはこのキャリアを始めてから初のサバティカルを頂くことができ、アメリカのミシガン大学で研究をしているのは人生で大きな出来事です。初の海外生活ですから、いろいろ戸惑うことも多いです。少しずつ慣れてきていますが、慣れた頃には帰国ですね。1年間頂きましたが、あまり意識しないと思っていたのですが、もう1年ないんですよね。残り8ヶ月ですか・・・よい研究成果を出せるようにしたいと思います。

さて研究業績ですが・・・2020年12月末のブログを見ていると、昨年は論文(共著)3本(いずれも国際誌、うち1本はSSCI)、国際会議は18本(うち1本はBest Paper Award受賞)、Book Chapterが1本でした。

さて今年ですが・・・論文(共著)1本(国内英文誌)、国際会議5本、Book Chapter 2本(そろそろ出版されるでしょう。編者の先生からもそのように説明がありましたし、出版年は2021年と出版社ページにも書いてあったので)という、寂しい結果となりました。研究室メンバーもがんばってくれたのですが、1名の学生は博士号取得に向けた審査が本格化し、私もそちらに当然最優先で注力していたため、なかなか業績が出せず・・・という状況が続きました。あと、オンライン開催の国際会議は楽と言えば楽な面もあるのですが、開催期間中の時差がかなりきつく、渡航とは別の意味で身体的負担が大きいこともわかりました。それが国際会議投稿へのモチベーションを下げた可能性もあるかなと思っています。便利だとは思うのですが、これが平日となると、修士学生は授業もあるし、博士学生まで含めるとRAやTA等のアルバイトもあるし、体にかなりこたえます。発表時間については大会運営側も時差をかなり配慮してくれるのですが、自分が見たい研究となると、眠気と戦わないといけない状況も多々発生します。真に「いやー、勉強になった!」「自分の研究に活かしてがんばろう!」とか、思えるのは、対面で参加し、その発表者の意気込みに直接、目や耳、話をして感じることが重要なんだろうなと、経験値として考えるものがあります。コロナ禍が早く収まればいいなと思います。

とはいえ、一番、私がこのキャリアで大きな出来事もありました。サバティカルもありますが、私が大学の研究者として初めて博士号取得者を出せるところまで来たということになります。実はまさに12月31日に取得となります。このキャリアを始めてから13年ほど経っていますが(博士号取得から)、初の博士号学生です。これは本当に感激です。とうとう博士号取得者を出すことができました。これは大きな節目に当たるかなと思っています。あと2名、博士課程学生がいますが、残り2人にも指導を行い、博士号取得を目指せるようにがんばっていきたいと思います。

今年度は島田先生代表のAIP加速研究が最終年度となり、ラーニングアナリティクス基盤開発と評価も1つの節目になりそうです。文部科学省からPlus-DX予算もつき、ラーニングアナリティクス基盤開発を進めていますが、まさにその基盤に研究知見も展開し、これまでのラーニングアナリティクス研究の知見を広げていくフェーズに入ります。来年から実運用をするので、これは大きな動きかなと思います。まさに情報工学・知能情報学の研究者だけではなく、教育工学など様々な研究者がラーニングアナリティクス研究に関わって、大きくしてきた成果と言えるかと思います。どちらかだけではここまでの成果も挙げられなかったと思います。

私個人の研究としても、次のフェーズとして、科学研究費を2つ、獲得しました。挑戦的研究(開拓)国際共同研究基金Bです。両方ともまさか通るとは・・・と思いました。特に前者は採択率1桁と言われるものですから、なかなか厳しいと思っていました。前者は教育データリテラシー育成、それに関わるラーニングアナリティクス基盤の開発・評価になっています。特に「教育データリテラシー育成」というものが重要です。この教育データリテラシーというものをただラーニングアナリティクスの観点から見るのではなく、教育哲学や教育社会学などからも検討し、これからどんどん加速すると思われるICT活用型教育において、効果的な成果を得るための前提を議論していきたいと思います。国際共同研究基金Bでは現在受け入れて下さっている、ミシガン大学情報学部のStephanie Teasley先生との共同研究で、こちらはダッシュボード開発を見据えたものです。今、いろいろデザイン検討の土台となるデータ分析をしており、これを研究業績化していきたいと思っています。そのデータに基づいて、ダッシュボードのデザインや開発に関する研究に取り組んでいきたいです。両方ともこれから大きくなる種ですので、来年は大きくなるように研究を進めたいと思います。

来年もいろいろイベントもありますが、1つ1つこなしていきたいと思います。大きな研究も進め、教育・学習環境の改善に寄与できるように1つ1つ努めて参りたいと思います。来年もどうぞよろしくお願い致します。

博士学生が次世代研究者挑戦的研究プログラムに採択されました

九州大学はJSTより次世代研究者挑戦的研究プログラムに採択をされているのですが、山田研究室の耿学旺くんが学内で募集していた本プログラムに採択されました!!本当におめでたい知らせでした。

耿くんはARを使用した日本語複合動詞学習支援システムの開発研究をしています。修士の頃から学外の研究費を獲得したり、博士後期課程学生になってから早速Springerの論文誌や国際会議でも多数、採録されたりとしっかりと成果を出している学生で、AIP加速研究でもRAとしても大きな活躍をしています。そんな彼がここでも成果を出してくれました。指導教員として誇らしいです。

博士号の審査に乗るためのCandidateになる条件までもう少しなので、ぜひこのまま頑張って欲しいです。これからも期待しています!!

CLILに関するレビュー論文が掲載されました

これも長かったなあ・・・うちの博士学生、がんばりました。構想から2年?かな?やっと表に出せました。採録通知を受けてから、出版までも長かったなあ・・・(泣)。レビューした論文は140本を越える超大作です。

CLILというのは、学習対象なっている言語で専門や教科の内容について教える授業形態です。大学では授業の国際化対応に迫られ、専門を英語で教えるという取り組みをしている大学も多いかと思います。本学も各学部に国際コースを設置して、行っていますが、まさにそれはCLILと言われる授業形態になります。もちろん大学だけではなく、初等中等教育において、教科内容を英語で教えるというのは広い意味でのCLILにあたります。

これ、実践レベルでは世界で数多くされているのですが、研究というレベルではまだまだで、最近、海外誌でも特集号が組まれたレベルです。CLILは授業デザインも実施・運用も結構大変で、経験値が利くのですが、教育工学の研究としては、これを経験依存のみにするのではなく、何かしら授業デザインの観点を提示し、多くの先生方に取り組んでもらえるように知見をだしていきたいところです。今回のレビュー論文はインストラクショナルデザインでもメリルの第一原理(the First Principle of Insturction)の観点から、現在のCLILに関する研究がどういう観点で授業デザイン研究を行っているのかレビューしたものです。

CLILにご興味がある研究者や学生、実践の方がいましたら、お読み下さりますと幸いです。今回、メインで執筆した博士学生は日本語教育におけるCLILを行っていますので、これからこのレビューを踏まえ、よい研究をしていけるといいなと思います。

Hao, H. and Yamada, M(2021). Review of Research on Content and Language Integrated Learning Classes from the Perspective of the First Principles of Instruction, Information and Technology in Education and Learning, 1(1), Rvw-p001. https://doi.org/10.12937/itel.1.1.Rvw.p001

今後ともどうぞよろしくお願い致します。

博士論文公聴会を開催致します

ここまでやってきました・・・長かったです。まだ学位授与が確定されたわけでは全くないのですが、公聴会という、どういう結果になるにせよ、学位授与における1つの節目にあたる場に到達しました。とうとう山田研究室初の博士号授与の可能性がうっすらと見えてきました。

教育工学は比較教育、教育史、教育哲学、教育社会学など教育学におけるメジャーな研究領域からは異質に見える研究領域かと思います。特に山田研究室はICT活用を前提とした研究をやっていますので、情報工学との結びつきがとても強いです。その領域における研究業績の評価など、いろいろ見直すところがあったわけですが、教育学は様々な研究領域とも関連させながら発展している領域もであり、その度量の深さというものもあり、お認めくださったことでいろいろ進展がありました。教育システム専攻の先生方、この議論を進めて下さった岡 前専攻長、木村 現専攻長に感謝致します。

Short noticeになってしまうのですが、下記の通り、博士論文公聴会を開催致します。ご興味がある方はぜひご参加ください。下記の通り、申込フォームにご登録を下さった方へ11月4日午前中までに会議URLとパスワードを送ります。どうぞよろしくお願い致します。

【陳莉氏 論文公聴会】
日時:2021年11月4日(木曜日) 13時〜14時30分
論文提出者:陳莉氏(九州大学基幹教育院 学術研究員)
論文題目:Collaborative Problem Solving-based STEM Instructional Design based on Learning Analytics
(ラーニングアナリティクスに基づく協調的問題解決型STEM授業のデザイン)  *プレゼンテーションは日本語で行います。

会場:Zoom会議
会議URL:参加いただける先生方は「2021年11月3日(火曜日)」までに下記申込フォームに
ごお申し込みください。ご参加お申し込み下さった方に11月4日午前中までにZoom URLとパスワードをお送り致します。
参加申込フォーム:https://forms.gle/QTRWdcU6VfiMmggMA

国際共同研究基金Bが採択になりました

大変ありがたいことに、科研費 国際共同研究基金Bに採択されました。審査をして下さった先生方に感謝致します。ありがとうございました。通知は12月だと思っていたら、10月だったのですね・・・基幹教育院の事務の方よりご連絡を頂いて、「え?またあ。まだ先だったはず」と思い、申請リストを見たら、「おおお!!採択されているー!」と。

実は、正直、驚いています。あまり自信はなかったのです。この科研費の公募に気づいたのが遅かったのですが、今回、サバティカルということもあるので、いい機会になると思って、がんばって書きました。しかし、この科研費は一緒に共同研究をしてくれる海外の先生のご協力が必要になります。その先生に一筆、書いてもらわないといけませんし、英語でその先生に何をやってもらうのかも書いてもらわないといけないのです。

本当に無礼を承知だったのですが、今回、サバティカルで受け入れ教員をして下さっているステファニー先生にダメ元でお願いしたのですが、いろいろ調整にすぐ動いて下さって、共同研究のグラントに出すことについてご承諾を下さりました。ステファニー先生にもとても感謝しています。

今回のネタですが、九大、ミシガン大学それぞれで研究開発し、成果も発表しているラーニングアナリティクスダッシュボードがあるのですが、それをより良いものにすべく、多角的にデータを分析し、有効性が高くなるデザインを検討するものです(その「有効性」というのがなかなか微妙な言葉ではあるのですが・・・w)。

先日、ステファニー先生も大変お忙しい中、お時間を作って下さり、ディスカッションをしたのですが、これ、なかなか難しいテーマなのです。単に、「ユーザーインターフェイスいいし、理解度もあがるし、良かったね」という代物ではないんですよね。ステファニー先生とも「一筋縄ではなかなかいかないよね」と、深イイ話ができて、これからの共同研究が楽しみになりました。

分担者はJST AIP加速研究などでもお世話になっている合田先生(熊本大学)、元基幹教育院の助教で大学院システム情報科学研究院の准教授で戻ってこられた大久保先生、法政大学のネハル先生の4名で行います。この科研は若手もいれて、若手育成にもつなげないといけないということもあり、ミシガン大学との共同研究で研究者育成にもつながればいいなと思います。いや、私もまだまだなんですけどね・・・しかし、年齢的にそうではないということになってきたことに少し寂しさも感じます。ですが、「若手」と定義されている研究者の元気に負けないように、いい研究、していきたいと思います。

研究成果を出して、効果的な授業にできるように展開するような研究にしていきたいと思います。これからもどうぞよろしくお願い致します。

とうとうサバティカルが始まります

このキャリアを初めて、非常勤時代を含めていいのであれば、18年、正規の大学教員になってから14年経ちましたでしょうか、とうとうサバティカルを取得することができました。海外で滞在して研究をするのは初めてです。やっとこの時が来ました。長かった・・・NTTコムウェア時代では、研究ではなかったですが、2,3か月間だったでしょうか、イギリスのバーミンガムに行く権利があったのですが、911で延長になり、その後は部署異動があり、異動した部署では上司にその権利を取り消されました。金沢大学では在外研究に出してみてはどうか?と副学長だったかな、お薦めを受け、出そうとしたのですが、「研究センターではない(英語名ではResearch Center for Higher Educationだったのですが、研究センターではないらしいです(笑))」ことを理由だったか、センターの教員に申請を阻止され、若手研究者としての最後のチャンスを失いしました。それでやっと九州大学に来て、このチャンスを得ました。

しかし、またもや新型コロナウィルス感染症拡大のため、受け入れ先の大学といいますか、国が海外からの渡航を受け付けなくなり、ビザが出せなくなったため、どうなるかわかりませんが、1年、延長をさせて頂き、そして、今年、実現しました。いろいろ悩みましたが、年齢から考えると今しかないかなと思い、踏み切りました。

本来は事前に渡航し、受け入れて下さった先生や研究室メンバーへご挨拶をし、生活環境をある程度作りたかったのですが、授業期間中で、自己隔離が最長で2週間ある可能性を考えるとそれもできず、院長の谷口先生にご承認を頂きまして、8月の中頃から渡航しています。

渡航先は・・・アメリカのミシガン州です。ラーニングアナリティクス研究で世界的に有名で、ラーニングアナリティクス関係システムも学内運用している、ミシガン大学アナーバー校(University of Michigan, Ann Arbor)、School of Informationに客員研究員として所属することになりました。受け入れて下さった先生は、こちらもラーニングアナリティクス研究で大きな成果を出されているStephanie Teasley先生で、LED Lab (Learning, Education and Design) にてお世話になることになりました。ミシガン大学はMyLAなど、ラーニングアナリティクス研究とその成果の展開、またデータサイエンスの研究センターがバーチャルですが、大きな組織として存在しています。ラーニングアナリティクス研究を発展させるよい機会になると思います。Stephanie先生に、ご自宅にご招待下さりまして、お話をしたのですが、そんなに堅くならずに、いい在外研究の経験にして下さいとおっしゃってくださりました。事前に提出していた研究計画をもとに、共同研究を進めていきたいと思います。ご主人でありますThomas Finholt先生(Dean, School of Information)からはU-M School of Informationのキャップを頂きました。

Stephanie先生はもともと認知心理学のご研究もされている先生で、今の協調学習において、お互いの学習行動や意識を社会的に調整する「社会共有型調整学習(Social-Shared Regulagated Learning)にも通じるSocial Shared Cognitionのご研究、CSCLにおける知識構築に関するご研究もされていて、私の研究との接点が多くあります。この1年、教育・学習環境の改善に寄与する研究を推進していけるようにがんばりたいと思います。

このコロナ禍でアメリカに行くことについては様々なところから心配はされたのですが、まだこれからどうなるのかわかりませんが、今だからこそ、アメリカへ渡航するというのはアリかなと思っています。日本と違って、結構、コロナに対する対応が緩いところも多々ありますが(デトロイトの空港のレストランでかなり密着状態で飲んでいるのは驚きました)、なぜ感染しているのか、PCR検査・ワクチン接触がスーパーの中にある薬局でも可能など、対応ができるところが至る所にあり、その結果を随時更新しているというのは、日本と大きく違うところです。緩いところは緩いですが、締めるところは締めていて、日本よりもコントロールはできているような感じはします。

アナーバーですが、とてもいいところです。自然豊かで、鳥の声、虫の声、川の流れがあって、静かですね。蛍もいました。星も綺麗に見えますね。夏は短く、冬が長いと聞いています。8月末になってきているので、寒くなっていくのかなと思いきや、日中は25度を越える日もありますね。暑いです。渡航前にはストームがあったらしいのですが。

生活環境も徐々に整いつつあります。この1年、大事に過ごして、いい研究をしたいと思います。

挑戦的研究(開拓)に採択されました

ちょっと自分でも驚きました。まさか通るとは・・・採択率は1桁と言われる、かなり狭き門。萌芽も10%前半と言われています。審査員のみなさま、ありがとうございました。大変感謝しております。4年間という申請なのですが(実は3年で出していたと思っていました・・・汗)、「教育学とその周辺領域」において様々な研究へ展開していける大きな種になる研究をしていきたいと思います。

きっかけは、ラーニングアナリティクス研究をしていて、疑問に思ったことがあって、それをやってみたいと思って、書いたのです。ラーニングアナリティクスって情報系×教育系・・・といっても教育工学や認知科学・認知心理学の研究分野とされているのですが、ラーニングアナリティクスで見えること、わかることって、結局、人がラーニングアナリティクスの結果、見えたものに対して、どう思うか、どう考えるかなんだろうと思ったんですよね。

これまでラーニングアナリティクスで、共同研究者の島田先生、谷口雄太先生、Lu Min先生とも研究してきましたし、知能情報学の研究者チームが開発した、かなり高度な情報技術を活用し、学習の改善につながることを期待して、ラーニングアナリティクス基盤を開発してきました。特に谷口雄太先生、Lu先生とはこちらが考えたデザインを踏まえて、実装を検討して下さり、開発をしていただいておりました。そういうツールが実際の授業で使われて、学生さんたちの授業の理解度があがるといいなとか、いろいろ期待しているわけですが、ふと、「学生さんたちは、自分たちの学習行動データを見て、どう思うんだろうか?どうするのだろうか?」と思ったんですよね。

それを考えるに当たって、1つのキーワードが「教育データリテラシー」というものです。データリテラシーという言葉はニュースでもいろいろ出てきますので、わかると思うのですが、教育データリテラシーというのは、ただデータを分析する能力とか、データを解釈する観点とか、分析をするためのプログラミングスキルといったことだけではなく、それらのデータを活用して、どう学習環境を改善するかということを考え、行動できるものまで含むものです。ということは、これまでのデータリテラシーを教育に適用するだけでは不十分と考えられます。教育データリテラシーについては2019年の10月にカナダのケベックでUNESCOのEduSummitにおける、ラーニングアナリティクスグループにおいて議論はしたのですが、あまり深く議論できなかったです。扱う話題が多岐にわたったので、1つのテーマを掘り下げるというのは難しかったです。その議論プラスアルファについてはETRD誌に論文が載ったので、ご覧ください。

このあたり、ラーニングアナリティクス研究は大きく寄与できると思いますが、この教育データリテラシーというものが育成され、その先にある教育、社会はどういう姿をしているのだろうか・・・と思うと、情報系、教育工学系だけで議論していてもいかんなと思ったのです。さらに研究レベルでも国内外ではあまりされていない状況で、研究自体進めることもほとんどなかったのではないかと推測しております。

今回は「教育学領域と情報学の融合による教育データリテラシー習得モデル構築への挑戦」というタイトルで研究を進めていきたいと思います。情報系では本学の島田敬士先生に入っていただきました。教育工学系は私の他、合田先生(熊本大学)、そして、教育社会学より、基幹教育院の元同僚でもあり、現在は本学大学院人間環境学府にいらっしゃる木村拓也先生、教育哲学から、同学府、藤田雄飛先生にご参画をお願い致しました。もし採択されてかったとしたも、教育社会学や教育哲学からデータ駆動型の教育・学習環境というものについてどう映るのか、興味あります。

今回は採択していただきまして、大変感謝しております。小学校、中学校ではGIGAスクールが進み、子ども1人に1台の端末時代になっていきます。学習支援システムに触れる機会も増えていきます。その際に必要になるのが教育データリテラシーだと思っております。研究の発展をますますしていきたいと思っております。

これからもよろしくお願い致します。

ラーニングアナリティクスセンターが新たに立ち上がりました

このタイトルを見て、「あれ?九州大学って前からラーニングアナリティクスセンター(LAC)なかったっけ?」と思われた方々もいらっしゃるかもしれません。2021年3月以前のLACは基幹教育院内のLACだったのですが、今回、新たに立ち上がったのは全学のLACです。本学大学院システム情報科学研究院 島田敬士先生がご尽力され、設立ができました。私も微力ながら、参加しております。

九州大学ラーニングアナリティクスセンターhttps://la.kyushu-u.ac.jp/

これまでは基幹教育科目を中心に、有志の教員がラーニングアナリティクスを行う機能を活用した授業を行い、学習環境や授業の改善、それに伴う研究を行ってきました。その有志の教員の授業はリアルタイム分析や学習者の学習行動改善を促す学習ダッシュボードなどラーニングアナリティクス基盤を使うからこそできる授業運営ができ、学生さんの内容理解を促すための様々な試みをどんどん行うことができるのですが、そうではなく、その知見を全学展開をしていきたいと考えています。今回立ち上がったLACでは、ラーニングアナリティクスに関するシステムやそれらを活用した実践の知見、研究成果の平行展開を進めていくことを考えています。

まだ立ち上がったばかりで、これから活動の具体的方針を立てていくことになりますが、学習環境や授業の改善に寄与できる研究の実施、知見の展開に関する活動を行っていきたいと思っています。

ラーニングアナリティクスは高等教育だけではなく、小学校、中学校で進んでいるGIGAスクールの取り組みも広がっていくにあたり、次の段階で求められていくことになると思います。そして、ラーニングアナリティクスは普通のこととして認識されていくのではないかと思います。しかし、高等教育も含め、ラーニングアナリティクスは単にテクノロジーの話ではなく、利用者である教員の認識変化が求められる話でもあるので、普及というところまではかなりの時間がかかるとは思いますが。学生さんは教員と比べて、テクノロジーに対して、ポジティブに考える方も多く、うまく使いこなせる方も多いように感じてます。「ラーニングアナリティクスが普通に行われること」になるように向けて、頑張っていきたいと思います。私は主な研究フィールドとして高等教育を扱っていますので、高等教育からその貢献に向けた研究を進めて、平行展開できるようにしたいと思います。

本学の学習環境や授業改善に貢献する研究をすることが大きな役割ではあるのですが、その知見が国内であれば、上記GIGAスクール後の世界など、国内外に広まっていけばいいなと思います。

今後ともよろしくお願い致します。