企業と組むインパクトと教育工学への熱い視線:教育ゲームブームをテーマに


世界的にゲームを教育利用するという動きが出てきています。日本でも数十年前にも教育ゲームブームはありました。ファミコンで算数ゲーム、国語ゲームカセットが出ていた。でも、周りで買った友達はいなかった。ちょうどその頃はドラゴンクエストとかファイナルファンタジーが流行っていて、教育ゲームブームが起こる予感すらなかったと思います。さらに、世界的に見ても日本の学力は低いこともなかったですし、学校外の学習は塾で十分だった(というよりも、学力(今も低下しているほどでもないと思いますが)についてそこまで意識することがなかった)こともあったと思います。

最近、ここまでゲームの教育利用についてトピックに上がるのは、情報機器、ネットワーク、ソフト面の技術発展もありますが、学力向上への意識が世界的に強くなってきていることや、学校外での学習機会をどう与えるか、また継続的に学習をさせる方法など、学力向上につながる周辺的なことに対して注目されるようになってきたことがあると思います。

教育工学の世界的な国際会議”ED-MEDIA”では、教育ゲームについて、ここ数年間で、アワードを受けるものが多いので、世界的にはゲームの教育利用についてポジティブに考えている人が多いと思います。数年前のED-MEDIA(オーランドでやったときだったと思います)では、南アフリカの先生がアワードを受けていましたが、バイオ・ハザードのような3Dゲームで、4人パーティーでそれぞれ、医者、探検家、生物学者とあと1人(忘れました)でジャングルを探検するゲームです。学習目標は医療の文脈において、緊急対処についての知識をつけるというものだったと思います。ゲームでは猛獣に出くわして、襲われて、怪我したり、蛇に噛まれることや、伝染病になったりするわけです。そのトラブルの度に対処を考えるというものです。

最近では教育にゲームを使うための授業設計や教育ゲームを作るにあたって参考にするべき理論をレビューするような研究発表が増えてきています。日本ではNintendo DSで出てくる学習ソフトが流行しています。日本では学習ゲームというと、ネットワークで介して集団で行うというよりも、1人で閉じて行うものが多いように思います。日本では学校でゲームを使うということが教育利用としても、タブー視されていることが多いですし、難しいですが、1つの有効な学習環境として捉え、研究を進めていくきっかけは欲しいものだと思います。

ゲームというエンターテインメント要素が強いものを大学だけで作るのはちょっと難しいと思いますが、ゲームベンダーが協力して行うことは大変インパクトが大きいことですし、学術界・産業界に与える影響は大きいと思います。

ブームを起こす、ブームに乗る、ブームに乗って、成果を活かすということにはそれなりのきっかけが必要で、投資が必要になります。ゲームにしろ、情報機器、ソフトを教育に利用するというのは近年より強く世間から熱いまなざしを受けるようになってきています。私たち教育工学の研究をしている者たちはあまり変わらない状況と思うかもしれませんが、今まで明らかに違うのは、世間の目が向いてきているということだと思います。私たち教育工学関係の研究者ができることは大変多くあると思います。あとはそのきっかけ作り。ここは難しい。でもこれからの研究者に求められることの1つだと思います。

金沢大学ラーニングコモンズでの対談がWebで公開されました


金沢大学ラーニングコモンズの設計にお力を賜りました、山内祐平先生(東京大学 大学院情報学環)と本学図書館長・人文学類長の柴田正良先生との対談が掲載されている本学図書館報「こだま」がWebで公開されました。対談タイトルは「学びの空間は図書館をどう変えるか?」です。

対談は図書館3階 オープンスタジオで行われました。私は司会をさせてもらいましたが、2人の盛り上がる話に興奮しました。楽しい時間を過ごしました。山内先生、ありがとうございました。私個人としては私の元上司ということで、設計にご協力して頂いた山内先生にこのラーニングコモンズの姿をお見せすることができて感動しております。うれしかったです。

本学ラーニングコモンズは公開されてまだ1年ほどですが、もっともっと良いものにしていくためにがんばっていきたいと思います。

金沢大学附属図書館報「こだま」第175号
巻頭対談 山内祐平先生×柴田正良先生:学びの空間は図書館をどう変えるか?
http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/handle/2297/28573

電子書籍作成入門、終わる


最近、ブログの更新が滞ってました。TwitterやFacebookを使っていると、まとめて文章を書く時間を作ることがなくなってしまいますね。

さて、前期、電子書籍作成入門という授業をやってきました。iBookをリーダーとしたものです。好奇心が強い学生さん4人が受講してくれました。

この授業では電子書籍の内容について企画し、デザインをし、作成をするところまで行いました。写真は最終発表の模様です。私の別の授業を受けている学生さんも発表会を見に来てくれました。1つの班は兼六園のガイドブックで、紙媒体では掲載が難しいパノラマ写真を入れたり、紙ではできない動画を取り込んでいました。

もう1つの班は音楽関係の部活に所属しているためか、トランペット初心者向けの教科書を作っていました。これも大変面白かったです。トランペットの音が取り込んであるだけではなく、作成者の2人のキャラクターが出てきて、某大手通信教育会社のDMに描かれているマンガ風のストーリー仕立てでした。

技術としてはHTML5とCSSの知識で良いのですが、epubの形式理解、電子書籍開発ツールの特徴、その中でのHTMLの処理のされ方なども理解しないといけないので、このあたりは難しかったと思います。InDesignが意外に難しいというのも想定外でした。オーサーリングツールとして良いものと思っているのですが、InDesign上の配置とiBook上の配置が大きくずれるなど、問題も大きかったです。ツールも高いですね。AdobeのPublishing Suiteとか使いたいのですが、お金がかかるみたいなので。こっちは授業で使って、学生さんが開発する書籍は商用利用は考えていないんですよね。多少はお金だしても良いので、もっと使い勝手の良いツールは来年度に向けて探索しないといけません。
電子書籍開発関係の情報はお金になる情報でもあるため、公開されているものは少なかったのは大変だった要因の1つですが、その中でも情報源を探すなど、受講者は積極的でした。

Twitterは私と受講者をつなぐメディアでもありましたが、情報源としても活躍しました。私へのアポ取り、リクエストはTwitterで行われることが多かったですが、情報を探すのにもTwitterは有効でした。

単にHTMLとCSSでWebページを作るのではなく、iPadという新しい媒体上で動くコンテンツの開発を経験すること、iPad上で動くツールも駆使することなど、大きなメリットが本授業にはあるように実感しています。そして、なによりも、電子書籍作成というチームによる協調作業によって、チームで行動すること、学ぶこと、計画をたて、実行し、完了させるために必要なことを多く学んで欲しかったです。電子書籍作成入門という、この授業のゴールはここにあります。

最終発表会のあと、その話をしました。「電子書籍という最終生産物がたとえ失敗作だったとしても、チームでその電子書籍を作ったプロセスを忘れないで欲しい。そのプロセスで学んだことを振り返って、今後の学生生活や将来に役に立てて欲しい」と、チームで学ぶこと、チームで行動することで大切なことを説明し、この授業を締めくくりました。彼らはこの授業を通じて、変化したと実感しています。

あと、今までなかったことなのですが、私が担当した授業「オンラインコミュニケーション」と「電子書籍作成入門」の受講生はかぶっていないのですが、お互いにTwitter上で交流があったり、お互いを認識していたところです。もちろんTwitterはここ最近、流行始めたものなので、非常勤時代を通じて、別の授業を受講している受講者を結ぶことはなかったのですが、Twitterは使い方によっては私が担当している受講者をつなぎ、授業内容だけではなく、お互いの興味を認識させ、新しい人的ネットワークを広げていく、新しい学びの場へ導く潜在力があることを実感しました。実際に、電子書籍作成入門受講者の1人はTwitter上で「オンラインコミュニケーション」の授業内容をモニタリングしていて、アルバイトがない日は参加したいと言い、参加してましたし、「オンラインコミュニケーション」受講者の1人は前述したように電子書籍作成入門の最終発表会に参加してくれました。これは共通教育の授業を実施していく上では驚くべきことです。最後には受講者から、「先生の2つの授業の受講者で、食事会をしませんか?」という提案も・・・これ、ゼミじゃないんですよ。学生からは単位取得目的にされる共通科目なのに。うれしかったですね。

来年度もこのような授業をしたいと思います。今年度の反省を活かして、良い授業にしたいですね。来年はFacebook上で授業補完をしてもよいですね。そうしようかな。後期もこのようなプロジェクト型・学生主導型の授業を行います。そのうち1つは議論の力、プレゼンテーションの力、論理的思考能力を徹底的に学ぶものです。共通科目の割に毎週課題も出ますし、負荷が高いです。なので、本気の学生しか受け入れません。何十人の受講生を期待してません。本気の学生、自分の将来を真剣に考え、がんばっていきたい、強い気持ちがある学生数人でやりたいと思います。本学の学生の悪いところをなんとかしたいと思って、行おうと思った授業なのですが、意図せず、就業力GP絡みの授業?になりそうな感じみたいです(副学長にも耳に入っている???のかな?)

就業力と言われても、よくわかりませんが(そんなでっちあげられたネーミングなんて笑ってしまうのですが)、私が今の金沢大学の学生に一番不足している力をつけさせてあげたいと思っているので、やるだけです。本気で自分を変えたい人だけ来て欲しいですね。

後期も楽しみです。

Social Softwareにはプラスαが必要


ブログやSNSなどでは、そこで話し合われているテーマについて関心がある人が集まり、活発な意見交換や情報交換がなされます(ROMな人も多いのも事実ではありますが)。その場でのインタラクションに注目して、教育利用を考える人も少なくないと思います。

このブログでもソーシャルソフトウェアをテーマにあげて書いていることですが、ソーシャルソフトウェアを教育利用する場合は目的を考えなくてはいけません。この話はICTを教育利用する場合はまず考えなければならないことなのですが、流行りものについてはついこの点を見失いがちだと思います。

ブログやSNSというのはインフォーマルな場で使用されることが多いものです。インフォーマルな場故のコミュニケーションがあり、情報があります。このようなツールを教育利用する場合、学習と思わせないように活発的に使用してもらう工夫が当然ながら必要になりますが、それを乗り越えた後も1つ壁があります。それはブログやSNS上の学びにおける学習目標にもよるのですが、その場で交わされるコミュニケーションの価値や気づきを与える仕組みが必要になってきます。

携帯電話でも同じですが、学生に携帯電話向けソフトウェアを与えても、最初はちょっとやってみるかもしれませんが、継続的に学習することはほとんどないでしょう。前にも書きましたが、ツールだけ与えても、ダメなのです。SNSやブログもそうだと思います。先日の教育工学会でのシンポジウムであった話ですが、SNSを基にしてSNSを活発的に使用するためのモジュールが重要になります。

企業内で使用する場合は、情報共有だけではなく、企業の組織について問題を出させるためにブログやSNSを使用することもあるんだそうです。企業内で使用する場合、ただコミュニケーションを社員同士でさせるだけでは不十分で、社員同士で行われるコミュニケーションから重要な情報を抜き出すためのプロセスが重要になるということです。ソーシャルソフトウェアだけでは不十分ということでした。このことは大学等の教育現場でも同じことを言えるのだと思います。

感動!ラーニングコモンズの使われ方


今日はラーニングコモンズですばらしい使い方をみました。

今回は青年心理学の研究者であります岡田努先生のゼミで、3・4年生ポスター発表会で使われていました。50名と書いてあったので、どんなことになっているのだろう?と思っていましたが・・・

いい!!この使い方はいいですねー。50名だとぎゅーぎゅーになるかな?と思ってましたが、そうでもなかったです。机の上にパワーポイントのスライドを印刷したものをならべて、学生さんたちが活発に議論をしていました。ポスターというと壁に貼るというのが普通なのですが、机の上に置くというのがいいじゃありませんか?しかも、スライド毎にバラバラにさせているというのがいいですね。スライドをいろいろ手で移動させながら、話ができますね。机の上だといろいろ書きやすいというのもいいですよね。メモとか。
いやー、ほんと、この空間を作って良かったです。感動しました!!岡田先生、ありがとうございました!!他の先生方も是非使って下さい。まさにこのような利用のされ方も1つの理想型として思っていたのです。
これを見て、各テーブルにホワイトボードとか、机の上にペンで書けるシートとか用意した方がいいと思いました。たぶん机の上にペンと紙があって、このような学びと合わせるといいでしょうね。議論も盛り上がりますよね。私もやってみたい!!あと、それぞれの研究に関連する文献や論文を検索できるような端末と、文献そのものを置いておくとか。まさに図書館だからできることじゃないですか?学習空間としての図書館、まさにラーニングコモンズを感じました。
なんか、ラーニングコモンズにおける協調学習の環境デザインについてヒントが得られたと思います。後期に向けて、より良いものを作っていきたいと思います。なんかいろいろアイデアが涌いてきましたよー。
図書館の方々と相談して、イーゼルパッドとか購入を考えます。これ、絶対いいですよね。買おっと。

デザイン思考


棚橋 弘季 著「ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術」を読んでみました。

別に仕事に困っているとか、悩んでいるわけじゃないですよ(笑)「デザイン思考」ってなんだろう?と思って、読んでみたということです。最近、私の周りではデザイン、デザインと言葉が飛び交っていますし、実際、そんなことを発している私でもあるのですが、デザインってなんだ?とふと思って。もちろん、領域にも考え方が違うので、多少の違いはあると思いますが。

本の内容としてはKJ法やペルソナを中心とした、計画、調査、プロトタイプ作成、評価、改善、プランの実行という、人間中心設計を踏まえた実際の仕事術のような話が後半は中心になっていますが、「デザイン思考」の歴史、デザイン思考というのはどういうことかという点が触れられている点です。デザイン思考の説明で、アメリカのシリコンバレーにあるIDEOというデザインコンサルティングファームを例に、そこでの仕事方法を挙げて説明されています。本書によるとデザイン思考とは・・・

「デザイナーの感性と手法を用いて、人々のニーズと技術の力を取り持つこと」

または

「現実的な事業戦略にデザイナーの感性と手法を取り入れ、人々のニーズに合った顧客価値と市場機会を創り出すこと」

と記述されています。しかし、「デザイン思考」はアウトプットまで定義としてるんですね。その中で使われる「デザイン」というのは「生活文化をつくること」であり、デザイン思考の仕事は「人間中心の仕事」であると説明されています。私たちがいる教育工学の研究分野も相手は人間であり、学習は生活と結びついているので、「デザイン思考」の仕事ですね。仕事術で出てくる作業フローも教育工学における研究手法と共通点が多いです。こういったものは勘が利くところもあって、難しいのではと思いがちなのですが、本書によると、デザイン思考というものはある程度体系化されていて、アメリカの大学ではこの手法を学習する授業や授業内でも取り入れられているんだそうです。
仕事方法、心得も書いてあります。仕事方法はSEのシステム開発手法と似ている部分が多いです。ただ、私たちが無意識に思っていること、忘れてしまうことが書かれています。その中でも大切なことだと思ったキーワードは「視覚化」です。これはWebデザインでも学習システムでも、授業でも大切なことなのですが、作業、思考、アイデアの創出、それぞれにおいて、その仕事に関わっている人が「デザイン思考」ができるよう支援するのは「視覚化」というこだと思います。会議でもそうですよね。発想法でもKJ法の説明をする前に「発想は何もないところから出てこない」ということを前提に、「パースのアダプションと記号学」を用いて説明されています。

#私の学部の時の友人が認知科学分野で「ひらめき」と「創造性」について研究してい
#ますが、それも何もないところで、「パッ」と光が見えるように発想が生まれるとい
#うことはあり得ないということなんでしょう。
「デザイン思考」の仕事、教育工学の研究ミーティングでもそうなのですが、グループワーク(会議)というのはよく行います。ただ、「これは忘れがちだ」と思うのは、グループワークというのは、お互いが持ち寄ったアイデアをすり合わせるのではなく、「それぞれが持ち寄ったアイデアをもとに多様な視点を合わせて、包括的な視点からより『大きな森』が見える状態を作ること」と本書は指摘しています。
「デザイン思考」の仕事の7原則というのも大切なことが書かれていました。どれも常々、心にとどめておかなければならないと思っているのですが、その中でも、

「他人が作ったものを否定しない。厭ならよりよい代替案を具体的に示す」
「『わかる』ことは重要じゃない。『わからない』ことにこだわる」

というのは、7つの中でも私が大切だと思うことです。特に後者は研究者である私は研究者であるが所以であることだと思っています。私たちは教育工学の分野で、みんなの学習をよくするという目標を達成するに当たり、「わからない」ことを明らかにすることですから。
また、調査の段階で、エスノグラフィーを導入する点もビジネス書ではめずらしいですね。これも人間中心設計というデザイン思考の中心概念があるからだと思います。人間中心設計はどの製品でも言われることなのですが、なかなか実施が難しいです。エスノグラフィーはただ実験室で被験者を観察して・・・とかそんな軽い話じゃないですし、普通にやるととてつもなく時間がかかりますので、実際のビジネスに使用する場合は何かしらの、工夫が必要になると思います。あと、あくまで主観的であるというところも注意が必要です。でも、調査として、その空間内で起こる様々な事象を見ることができる有効なツールであることは私も同意です。あとは現場にどう落とすかですね。
仕事に困った時に読むとか、そういう目的ではなく、日頃の自分の仕事のやり方、会議のやり方など振り返るという目的で読むのが良いと思います。無意識に思っていること、忘れていることを思い出させてくれます。

Twitterでの議論は難しい


最近、Twitterでいろんな方と縁ができ、大変楽しませてもらっています。あまり気の利いたことはつぶやいていませんが、一度も会ったことがない方と意見交換ができるのはうれしいことですね。
しかし、ちょっと同時に困ったこともあるというのが正直なところです。それは議論です。私は議論は好きな方なのですが、Twitterではそれが難しいなと思うこの頃なのです。議論にはそれなりの主張があり、それを支える理由などが含まれます。情報ソースもあるでしょう。それはやはり140字という枠の中には収まり切れないというのがあります。また、突発的に議論を振られることになると、忙しいときには参加することができず、非同期的に使うにも、既にその議論が終わっているということが多々あり、なかなか難しいと実感するところです。
あと、もう1つ気になるのが、フレーミングです。いわゆる「誹謗・中傷」が連続することですが、Twitterに限らないのですが、テキストベースのコミュニケーションでは起こりうることです。社会心理学・社会情報学の方ではTwitterのようなComputer-Mediated Communicationの研究は結構進んでいます。大変興味深いことに、社会心理学の教科書的な本、グラフィック社会心理学で掲載されていたことで、Castella et al(2000)の調査によると対面、ビデオカンファレンス、電子メールでフレーミングに差があるのかどうか見たところ、電子メールが一番多く(全発言の4.72%)で、対面、ビデオカンファレンスでは1%未満ということだったそうです。また「くだけた」話し方の率は対面、ビデオカンファレンスでは4.66%、4.98%で、電子メールでは8.89%だったんだそうです。この原典に当たっていないので、実験デザインや背景などちょっと正確な要点が漏れているかもしれませんが、このようなデータが載っていました。興味深いですね。ちょっとまた原典に当たりたいと思います。
社会的存在感の観点から言うと、引用がしにくいというのは辛いところです。人の名前を明示した上で発言を引用するのはメンバーの社会的存在感を高めるので、Garrisonに言わせると良いこととされています。引用は議論の展開では重要で、社会的存在感がまさに学習に結びつける要点だと私は考えていますが、それが引き金でフレーミングに結びつく危険性も同時にあると思っています。フレーミングは一種、感情的発言が出てくるので、それも社会的存在感の定義内のことと言われれば、そうなのかもしれません。Garrisonはフレーミングと社会的存在感の関係については触れていなかったと記憶しているので、ちょっとこのあたりも調べてみたいところです。
しかし、Twitterでも時折、このような状況を見ることができるので、なかなか冷静な、しっかりとした議論というのは難しいのかもしれません。なにより感じたのは、話の文脈が140字では欠落し、議論参加者相互の誤解が生じてしまうことが痛いと思いました。
Twitterでは、対面での議論の土台として、お互いの考えの方向性の確認や事実関係の確認程度の質問と回答程度で抑えるのがベターなような気もします。あとはブレインストーミングのような、お互いのアイデアを基本的には批判をしないようなアイデア出しなど、いろんな方のアイデアを聞くことができるので向いていると思います。
そういう、柔らかな使い方がいいのかもしれません。熱血議論屋さんはちょっと時折、熱冷ましをしておかないと、フレーミングをしてしまい、よいことにはならないので、注意しないとです。私も議論屋の時があるので、注意しないと・・・

自己制御学習の必要性


私の授業はICTを使った学習環境に関して学ぶものなのですが、その背景の諸理論についても簡単に説明をします。1年生が主な受講者で、いきなりICTと学習のからみを説明してもわからないので、受講者の過去の学習経験を振り返ってもらいながら、諸理論のさわりを理解してもらうことにしています。

特に私の講義はメタ認知、自己制御学習の重要性について気づいてもらうことを主眼にしています。ICTを利用した学習環境においても大変重要な設計ポイントになるので、それと合わせて説明しています。

メタ認知、自己調整学習に関する諸理論、学習においてソーシャルソフトウェアを利用するメリットとデメリット、危険性について話をしてきましたが、前期最後の講義で受講者が「夏休みは暇なので、振り返りをしたいと思います。特にこの授業でやったことを振り返りたいと思います」と言ってくれました。これは本当にうれしい言葉ですね。

会社時代の同期と飲んで、いろいろお話をしましたが、少なくとも私の授業を受けた受講者は数年後、自分で成長するきっかけを自分でつくり、考えて、自分の道を築いていける人になって欲しいと思っていますが、少なくともそのポテンシャルを他の人に感じさせるような人になって欲しいと思っています。教育工学へ興味を持ってくれるとそれは最高ですが、そうでなくとも良いです。数年後、私の授業でやったことを覚えていてくれたら、周りよりも少しハッピーになっていることを願っています。私はそうなるようなことを教えていますので。

Twitter上でもありがたいことに、私の授業についてご興味をもって頂いたり、励ましの言葉を頂いたりしました。うれしく思っています。一教養科目なので、受講生も少ないですが、ゼミのような形でやっています。数年後、楽しみです。

さて、本学はそろそろゴーストタウン化する時期に入ります。学生はほとんどいなくなりますね。

メタ認知や自己制御学習について
メタ認知はなかなか難しいお話ではありますが、下記の2冊は少し専門的な言葉も出てきますが、調べながら読むと、学部生でもわかると思います。やさしく書いてありますので。自分の学習にも役に立つのではないでしょうか。
 

もうちょっと専門的に知りたい、卒論などで参考にされたい場合は、下記3冊は良いと思います。シャンクやジマーマンの本はできれば原典にも当たって欲しいと思います。翻訳はやはり訳者の解釈や意訳もありますので、原典にも当たって理解するのが良いです。

  

学生だけではなく、企業に勤めてられる方で、若手・後輩の育成などを担当されている方にもメタ認知や自己調整学習のお話は役に立つと思います。自分で無意識にやっていることも多いですが、このような理論ではっきり言われると納得するものがありますし、これからも続けていこうという気にもなりますね。

CALICO Outstanding Article Award 受賞!


CALICO (The Computer-Assisted Language Instruction Consortium)に2009年に採録された論文がOutstanding Article Awardを受賞しました。私の師匠であります、赤堀侃司先生(現 白鴎大学 教授・教育学部長)との共著です。

その賞状が届きました。

「おお!!」という感じですね。しかもなんと、小切手が!!「少ないけど・・・」というコメントがついてましたが、ありがたいことです。小切手をもらったのは初めてです。マジマジ見てしまいました。

 

小切手をもらうのは初めてですが、日本で変えるにはかなり手数料を取られるそうで、少額の場合、額面割れをするそうです。この額だと額面割れしそうなので、記念に取っておきますか。

でもお金とかそういうの目的じゃないので。私の論文をそのように評価して頂いて、世界中の研究者や学生に読んでもらっていることがうれしいです。

この論文を書くのにヒントを下さった、北村先生(東京経済大学)に感謝致します。また赤堀先生にご指導頂き、感謝致します。ありがとうございました。また、この論文は博士のときの研究で、放送大学の加藤浩先生がコーディネートされていますCSCLゼミでもご指導頂きました。加藤先生をはじめ、当時、CSCLゼミに参加されてた皆様にも感謝致します。

しかし、いい研究するにはゼミだけではなく、お茶でも飲んで、笑い話でもしながら、椅子まわして、気軽に話せる場って大事ですよ。北村さんとはそういう場でいろいろ研究の話とかしてました。JSET 33(3)に掲載された資料論文もそうですし、今、進めている研究もそうです。ありがたいことです。

さて、研究、がんばりますか!!

最後になりましたが、CALICOのスタッフの皆様、Editorial Board Membersの方々に感謝致します(日本語ですが。後でメールしておきます)。

受賞論文
Yamada,M., Akahori,K. (2009) Awareness and performance through self-and partner’s image in videoconferencing, CALICO Journal, 27, 1-25

CALICO
https://calico.org/

ソーシャルメディアに関する授業、はじめました


今学期からソーシャルメディアの利用を中心としたCMC(Computer-Mediated Communication)に関する授業を始めました。

場所は本学に出来たラーニングコモンズのオープンスタジオです。受講者はとても少ないのですが、やる気のある学生が受講してくれました。1教養の授業なので、学生からは単位を楽に取ることが目的とされてしまいますので、仕方ないことだとは思っています。裏番組に強烈なのがあると、やはり負けちゃいますね(笑)

授業スタイルは楽しい中にも考えること、将来に結びつくように、対話式の授業をしています。ほんとに少ないので、ゼミのような感じです。コンピューターはもちろんのこと、ホワイトボード(プレゼン用)、机の上にマットのようにひくことができるホワイトボード(メモや自分で考えを整理するため)、プロジェクター(知識伝達のため)に使っています。授業資料はポータルにアップして、受講者がいつでも参照できるようにしています。プロジェクターも無線で接続でき、4つのコンピューターまで同時に画面表示できるものを導入しているので、今後、必要に応じて使って行きたいですね。
本学は地方大学であるだけではなく、山にある大学で、地理的に不利なことが多いと私は本学に来て実感しています。そのような環境下で、世界の人たちと様々な思い、気持ち、考えを共有し、成長していくことができる機会をソーシャルメディアは作ることができるように私は思います。ですが、それも使い方次第。CMCツールの特徴、使う人数だけではなく、本人がどう使いたいのかというところが重要だと思います。その中には心理的な要因も強く関わってきます。私の授業はCMCツールの紹介や使用事例を紹介するだけではなく、心理的な要因なども学習し、受講者の将来にプラスになることがあればと思います。
受講者のうち1名は4年生で今年度で卒業をします。4年生で私の授業を受けてくれるとはうれしいですね。卒業後に役に立てばと思います。2年生の子もいます。これから将来のこと、やりたいことを考えていく大切な年に入っていきます。その中でソーシャルメディアなどのCMCのメリット・デメリット、心理的要因を理解して、有効利用してもらえればうれしいです。
しかし、この写真のように対にしてホワイトボードを設置すると、興味深かったのは、書いている途中にお互いに書いていることを参照するんですよね。これはクイズ番組で何か競争させるときにボードをチーム間で対にして設置して、お互いの進捗を把握させますよね。学習においては「あれ?こういうことじゃないのか?」とか、「あのように書けばいいのか」とか、お互いに学ぶ機会になると思いました。学習内容だけではなく、いろんなことを無意識に学ぶことができるのもツールの設置で大きく変わるなーと思いました。
協調学習環境のデザインでは「可視化」というのが重要な要素となります。その可視化でも、何を意図とした可視化なのかというところも重要ですよね。私自身、勉強になりました。
今後、Twitterも使ってやっていきます。他の皆さんも、もし内容をご覧になって、お時間がありましたら、Twitter上のトークにもお気軽にご参加頂けると幸いです。

協調学習環境、特にコンピューターベースの協調学習環境(CSCL)のデザインについてはこの論文が詳しいです。

中原淳・前迫考憲・永岡慶三 (2002) CSCLのシステムデザイン課題に関する一検討 : 認知科学におけるデザイン実験アプローチに向けて, 日本教育工学雑誌, 25(4), 259-267
http://ci.nii.ac.jp/naid/110003026435