九州大学 山田研究室

電子書籍の作成:授業・学生の観点から

2012年12月12日

私はここ2年間、「電子書籍をつくる」プロジェクト型授業をしてきました。備忘も兼ねて、使用したツールと授業・学生の観点から反応やコストについて整理したいと思います。

まず、私のこの授業は講義型+プロジェクト型授業であること、共通教育科目であることが前提になっています。たとえばメディア系、芸術系などの学部における専門科目、また授業デザインの方法によっても変わるため、あくまで私が感じたこととしてご理解ください。

 年度 2011 2012
使用したツール Adobe InDesign CS5, Sigil  iBooks Author
 時間的コスト(学ぶ時間)  × (ID), △(Sigil)  △
金銭的コスト × (ID), ○(Sigil)  ○
 学生の反応  × (ID), △(Sigil)  △

でしょうか。Adobe In Designは専門性が高いツールで、様々なツールボックスに慣れる必要があります。Adobeのツール(Reader以外)を触ったことがない学生はちょっと大変です。SigilはHTMLエディターのような感覚で使えるので良いと思いますが、HTMLやCSSの文法について基本的な知識が必要になりますので、その点の支援をどうするのか検討する必要があります。お金ですが、InDesignはもちろんお金がかかります。学生さんに持たせるにも学校側からの金銭的サポートが必要になると思います。私はセンターのコンピューターに入れ、そこで学生は作業をしていました。Sigilは無料なので、学生が所有しているコンピューターにインストールさせて使わせていました。学生の反応ですが、InDesignはかなり苦戦していました。というのは、InDesign上ではレイアウトは思った通りに表示されているのに、iPad上ではレイアウトが崩れるという問題がありました。この調整には非常に時間がかかりました。Sigilを使っていたグループは可もなく不可もなくという感じでした。理系の学生だったので、エディタ慣れがあったように思います。

2012年度ではiBooks Authorを使いました。本学は学生向け必携コンピューターに載っているOSがWindowsなので、センターでMac miniを2機購入し、それぞれにiBooks Authorをインストールしておきました。Macがあるコンピューター室をお持ちの大学であれば、ここの初期投資は不要でしょう。時間的コストですが、Keynoteのように使えるので、一見いい感じですが、クセがあるツールです。チャプター、セクションの理解、ページの入れ替えができない(セクション内ではできたっけな)など、よくわからないクセがあり、ちょっと困ります。直感的ではありません。コストはもちろん無料なので、大丈夫ですね。学生の反応ですが、ibooks形式であるため、iPad用のiBooksでしか動作しないこと、ページめくりがスライドになること、縦にすると画像が表示されず、文字のみになることなど、ここにもよくわからない文化がありますね。「こういうもんだ」と割り切れるといいのですが、思ったものとは違うという反応もあります。

次はPagesでしてみようかと思っています。自分でもやってみましたが、iBooks Authorよりもはるかに直感的で、WindowsユーザーでもWordに慣れている学生は多いので、使用方法の理解において、そこまで苦労することは少ないのではないかと思います。画像、動画の挿入もしやすいですね。epubで吐くことができるというのが良いですね。

授業形態については企画、コンテンツ作成、書籍の作成、プレゼンテーションというのはよかったと思います。普通のWebページを作成するよりも、「電子書籍」という新しい形態のコンテンツを作成することにモチベーションをあげる学生もいました。今後はどうなるのかわかりませんが。

学生も主体的に動き、がんばってやっていました。コンテンツや電子書籍の作成方法も学んで欲しいのですが、それ以上にコラボレーション力、情報収集力、企画する力、プレゼンテーション能力の育成にもつながり、これらの能力の養成にも効果があるように思いました。1人で好きなテーマを決めて行うのも良いですが、グループで分業して行うのも、相互に企画内容、作成内容の修正なども行い、互いに協力することで学ぶことも多いですよね。

今後もこのような授業を考えていきたいと思います。

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