今年の3月2日と3日に日本教育工学会2024年春季全国大会に参加しました。
今回、自主企画シンポジウム「粒度が細かい学習データ分析で見えることとは?学習プロセスの分析を如何に行うかを考える」で講演しました。私は、学習者の学習プロセスを理解するには、学習行動の時系列特徴をどのように捉え、分析するべきかについてお話ししました。ラグシーケンシャル分析を分析手法の一つとして紹介し、活用した学習プロセスの事例についても報告いたしました。ともに講演者に立ちました谷口雄太先生の「プログラミング学習環境“WEVL”の開発と細かい粒度のLAへの展開」というご講演はとても面白かったです。私自身も“WEVL”を使用してプログラミング学習を体験してみたいと思います。さらに分析結果を教員や学生にどのようにフィードバックすべきか、またシステム単体で学習の全体像をどの程度把握できるかなど、細かいデータの活用における課題について山田政寛先生、谷口雄太先生と深い議論を交わしました。特に、会場の先生方と細かいデータの活用がどのように役立つかについて議論が盛り上がりました。私自身は、ラグシーケンシャル分析と隠れマルコフモデルとの違いなど、質問を受け、シーケンスを一口に分析するとしても、様々な方法があるということを認識しました。学習者向けの支援システムの開発や、ラーニングアナリティクスを用いた学習者の行動分析に携わっていますが、ラーニングアナリティクスがどう教員に役立てるかについて自分の考えを深め、これからの研究の発展性が見えそうな感じがしております。
私の講演以外にも、主に教育及び学習支援システム、ならびにVRに関する研究発表を聞きました。2つのVR関連の発表が特に印象深かったです。一つは災害シミュレーションのためのVR環境の開発、もう一つは企業内研修用のVR環境に関する評価でした。これらの研究を通じて、VR技術が学習環境にもたらすイノベーションの可能性について、深く考えさせられました。VRは、単にリスクの高い授業内容(例えば、解剖学の授業や危険な化学実験のシミュレーションなど)に使われるだけではなく、フォーマル学習の文脈を超えて、実践する場とする学習環境などのインフォーマル学習にも用いられることを意識しました。このセッション後の、東京理科大学 渡辺雄貴先生と発表者たちとのディスカッションも非常に興味深かったです。VR学習環境と伝統的な学習環境との違い、VRの特徴である没入感をどのように活用するか、さらにVR学習環境下の学習効果として行動の変化をどのように捉えるかついてのディスカッションからは、多くの示唆を得ることができました。これは、現在進めているラーニングアナリティクス研究と密接に関連しています新しい技術を取り入れた学習環境における学習行動をラーニングアナリティクスでどのように分析すべきか、また、それらの行動と伝統的な学習環境の行動の違いをどのように理解すべきかが重要な課題だと考えています。
過去にはコロナ禍中、オンラインで春季全国大会に参加した経験がありますが、今回は初めての対面参加となりました。そのため、緊張しながらも、様々な研究発表を直接聞いたり、質問をしたりすることができ、大変充実した2日間を過ごしました。
(文責:耿学旺 (DX推進本部 特任助教))