九州大学 山田研究室

日本教育工学会2024春季全国大会に参加しました

2024年03月11日

みなさん、こんにちは。

3月2日と3月3日の2日間、熊本大学で開催された日本教育工学会2024年春季全国大会(第44回大会)に参加しました。これが私にとって初めての熊本にいき、日本教育工学会への参加でもありました。全体を通して、非常に良い経験を得ることができました。

これまで日本の学会への参加は情報処理学会CLE研究会のみでしたが、今回は異なる雰囲気を感じました。同時に多くのセッションが行われ、自分の興味や好みに合わせて聞きたい発表を選ぶことができました。特に、生成系AIに関する研究が多く見られ、いくつかの興味深い研究に出会いました。

その中でも2つの研究が特に印象的であり、1つ目は、学生セッション(1)で発表された「AN LLM Chatbot in Minecraft with Educational Applications」というタイトルの研究です。この研究は、創造的モードを使用したMinecraft内での建築や創造活動に焦点を当てています。Minecraftの創造的モードは、建築設計や創造的な表現を好む人々向けに、無限の想像力と創造性を実現する自由な環境を提供します。この研究では、従来の建築方法と比較して、Large Language Models(LLM)を活用し、Chatbotと連携することで、ユーザーがチャットボットを通じて命令を入力し建物を作成します。技術的な観点から見ると、Minecraftとチャットボットの組み合わせは非常に興味深いと思います。私もMinecraftを少し体験したことがありますが、建物を作る際にはアイデアがすぐには浮かばないため、このようなアプローチはゲームの魅力をさらに引き出すと考えています。ただし、教育の立場から見て、従来の方法と比較して、想像力と創造性の育成にどちらがより効果的か、またはこれからの仕事はどのようになるのかについて、興味を持っています。

2つ目は、教育学習支援システム・AI(8)セッションで発表された、「マルチモーダル生成AIを活用した写真による学習振り返り支援手法の提案」という題の研究です。マルチモーダル生成AIとは、テキストだけでなく画像など複数のデータタイプを処理できるAIのことで、特定のオブジェクトを含む画像の分類が可能とのことです。この研究では、GPT4 with visionという生成AIを用いて、学習者がどの写真を選択し、学習の振り返りを行おうとしているかを理解するアプローチを採用しています。学習者の学習活動を複数の写真に記録し、活動完了後に学習者が写真を選択し、その理由を説明するプロセスが含まれています。選択された写真は生成AIによって分析され、分析結果は「よく取り組めたこと」、「できるようになったこと」、「よく取り組めたこととできるようになったことの両方」という3つの視点からテキスト形式で出力されます。出力されたテキストに基づいて、分類された画像は3つの視点ごとに異なる色のマークで示されます。この手法は、教育者が学習者の振り返りを理解するのに役立つと考えられますが、今後の課題として、生成AIによって得られた結果をどのように活用するかが期待されています。

これらの研究を通じて、AIが教育の分野でどのように活用され、学習プロセスを豊かにするかの多面性を見ることができました。特にマルチモーダル生成AIに関する研究は、AIがテキストだけでなく、画像を含むより幅広いコンテキストでどのように活用され得るかを示し、私自身の研究やデータ分析へのアプローチに多大な影響を与え、新たな研究方向を模索するための刺激を与えてくれました。

全体として、この学会への参加は、AIを教育に応用する最新の研究成果に触れることができ、非常に有意義な経験となりました。AIが今後、教育や学習プロセスにどのように貢献できるかを引き続き注目していきたいと思います。

一方、私の発表は、学生セッション(4)に属し、VR技術を用いた日本語学習者の擬情語学習を支援するシステムについての研究を発表しました。「イライラ」を例に、開発したVRシステムが学習者にどのように感情を体験させ、理解させるかを示しました。

質疑応答では、2人の質問者から重要な質問を受けました。最初、なぜ感情体験にVR技術を使用する必要があるのか、実際の対人関係でも同様の効果が得られるのではないか?との質問でした。私は、現実の方法も感情を引き起こす可能性があるものの、一時的で再現性に欠けると回答しました。しかし、VRシステムではいつでも再現可能なシーンが提供され、学習者が自分のニーズに応じて自主的に学習できると説明しました。この回答を振り返ってみると、VR技術が提供する高い没入感が学習者に強い感情体験を促す重要な要素であり、擬情語学習には不可欠であることをさらに強調すべきだったと感じています。

2番目は、学習者が実際に感情を体験したかどうかをどのように判断するか、および日本語初学者にとって多くの日本語テキストを含むVRシステムの使用が難しいのではないかという質問でした。これらの問題は、私の研究の核心部分ではあり、その場ではうまく回答できなかったのですが、現在、ちょっと前に行った実験で、この点を評価していて、多角的な方法で、シナリオ体験後に学習者の具体的な感情を尋ねることで、学習者の感情体験を明確に表現できると考えています。

ディスカッションセッションでは、動画を見るだけでは感情を理解できない理由や、外国人日本語学習者が擬情語を直感的に理解できない理由についても興味深い質問がありました。日本語の母語話者であれば、初めて見た擬情語も声のトーンから感情のニュアンスを把握できますが、日本語学習者にはそのような直感がなく、擬情語の感情的なニュアンスを理解するのが難しいです。これが、私がこのVRシステムを開発した理由の一つです。私自身が日本語学習者として、抽象的な語義の理解に苦労しているため、このシステムを通じてそのような難しさを支援したいと考えています。

発表時間は限られていましたが、将来、より大きなステージで研究成果を発表したいと思いました。

(筆者:修士2年生 李瑭)

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