九州大学 山田研究室

日本教育工学会2024春季全国大会参加報告

2024年03月05日

みなさま、こんにちは。
山田研究室の修士2年、平田沙希です。

3月2日と3日の2日間、教育工学会に参加してきました!今回はその参加報告をしたいと思います。

博多駅から新幹線に乗り、約1時間先の熊本駅で降車。さらにバスで熊本大学キャンパスへ。初めての熊本県上陸で、内心ワクワクしておりました。

私の発表はお昼休憩が終わった後の「教育学習支援システム・AI」のセッションでした。参加者は研究者の方だけでなく、企業の方や学校の現場の先生も参加されていて、お昼ご飯の眠気も吹き飛ぶくらい緊張しました。
今回、私が発表した内容は、「音声認識を用いた英単語学習システムの開発と評価」です。
私は修士研究で音声認識技術を使った英単語学習支援システムを開発し、形成的評価と2回の評価実験を行いました。今回の発表では、1回目の評価実験の時に収集したシステム内の音声認識ログの分析結果と質問紙調査の結果に基づいて、英語学習における音声認識の活用の課題と提案を報告しました。音声認識に関する学習行動分析は、先行研究でそれほど報告されていないので、評価実験の結果だけでなく、実験で収集した学習ログの分析結果も交えることで興味深い議論を展開できるのではないかと思い、このテーマにしました。

発表の後に、5分間の質疑応答があり、中学校の英語の先生から「現代における英語の多様化を受けて発音の正確さをどこまで重視すべきか」という質問をいただきました。発音学習のあり方に対する非常にクリティカルな質問をいただき、自分の研究の意義を再考する機会になりました。

自分の発表以外の時間は、他の発表を聞きに行きました。私は今年の4月から就職する予定ですが、就職先では研修講師として授業を設計する業務があります。そのため、研修のデザイン方法や評価方法に関する知見を深めたいと思い、特にインストラクショナルデザイン(ID)のセッションに積極的に参加しました。

特に興味深かったのは、生成AIを用いた授業設計システムに関する研究でした。この研究では、授業計画の草案を提案するChat GPTの機能を利用し、授業草案と評価案、テスト問題などを同時に出力するプロンプトが開発されました。利用者は用意されたプロンプトに情報を入力するだけで、効率的に授業計画を構築することができます。この発表で魅力的だったのは、Chat GPTへのプロンプトがあらかじめ用意されていて、目的の情報を引き出すための煩雑さを軽減するのに加えて、授業設計に必要な情報(評価方法、テスト問題、発問例など)を総合的に出力してくれる点です。質の高いプロンプトと生成AIを利用することで、研修プログラム案を作成し、それを教師の知見に基づいてカスタマイズすることで短時間で良質な研修プラグラムを作ることができると感じました。他の発表では、オンライン研修において、オンラインホワイトボードやLMSを活用した授業も提案されていました。これらの研究は、研修デザインにおけるテクノロジーの有効活用を示唆しており、自身の研修設計にも積極的に取り入れたいと感じました。全体を通して、ID原則や評価方法に関する知識の向上につながりました。

教育工学会は、研究者、企業関係者、学校教員、NPO関係者など、教育に携わる様々なアクターの方が参加し、各自の知見を交換しています。自分の普段やっていない研究分野の話を聞くことで、視野が広がったり、興味関心が似ている関係者と直に交流し、人脈を広げることができる良い機会だと感じました。

私はこれから大学院を出て、社会人になりますが、今後も学会には教育のトレンドや人脈形成のために参加したいと思っております。

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