九州大学 山田研究室

ブレンド型学習のノートテイキングの行動パターンは?

2024年01月22日

皆さん、こんにちは、耿学旺です。
この記事では、今回の英語文献ゼミで取り上げた論文の内容と感想について紹介します。

論文タイトル: Lag Sequential Analysis for Identifying Blended Learners’ Sequential Patterns of e-Book Note-taking for Self-Regulated Learning
論文誌:Educational Technology & Society
巻数とページ:26 (2), 63-75
出版年:2023
著者名: Christopher C.Y. Yang and Hiroaki Ogata
https://www.jstor.org/stable/48720996

以下は、論文の内容の概要となります。

近年、教育の分野では情報通信技術の進化に伴い、ブレンド型学習が注目されています。ブレンド型学習環境において、E-bookシステムの使用が普及してきています。E-bookシステムを活用することにより、多様な学習リソースを対面の教室活動に組み合わせ、学習者は教材に対して直接的にインタラクションを行い、クイズを受けたり、ノートテイキングしたりすることなどの学習活動が可能になります。そのため、ブレンド型学習環境では、自己調整学習が非常に重要で、学習者に目標設定、計画、ストラテジーの実施、モニタリング、リフレクションなどが求められています。ノートテイキングは、E-bookシステムにおいて重要な活動です。ノートを取ることで、学習者は教材の重要な点をまとめ、自分の言葉で理解を深めることができます。また、ノートを見直すことによって、学習内容を反復し、記憶に定着させることもできます。さらに、ブレンド型学習は、従来の対面学習における学習行動や学習ストラテジーが異なる可能性が高いと指摘されています。そこで、この研究は、ブレンド型学習においてE-bookシステムを用いたノートテイキングの行動パターンに焦点を当て、そして学習成果が異なる学生にノートテイキングの行動パターンの違いがあるかを明らかにすることを目的とします。

研究の方法として、経営情報システム専攻の88名の学部生を対象に、6週間にわたる調査を実施しました。使用されたE-bookシステムは、ページめくり、マーカー、メモ、ページジャンプなどの機能を持つBookRollシステムです。参加者は、授業中の対面学習セッションと授業外の自習セッションの両方で、BookRollシステムを利用して学習教材を学習しました。6週間後、学習成果を測定するために、最終試験が実施されました。そして、最終試験の得点のパーセンタイルランクによって、学習者全員を高群と低群に分類しました。学習行動を分析するため、データベースからBookRoll使用時の学習行動データを抽出して、前処理を行いました。さらに、収集した参加者の学習行動データをコード化して、ラグシーケンシャル解析を実施して、参加者全員と学習成果の高低群についてノートテイキングの行動パターンを特定しました。

学習行動データの分析結果は、学生のノートテイキングに関する行動頻度と行動パターンを明らかにしました。ページめくり、メモの追加、マーカーの追加といった行動が最も頻繁に行われることが判明しました。さらに、先のページに進んだり前のページに戻ったりするめぐりの学習行動パターン以外、「メモを追加した後にメモを変更する」こと、「マーカーを削除した後にメモを追加する」こと、「マーカーを追加した後にメモを削除する」ことなどのノートテイキングとノートのレビューのストラテジーの使用が確認されました。学習成果の高群と低群の間で、ノートテイキングの行動パターンに顕著な違いがみられました。高群では、「メモの追加」や「マーカーの追加」などの認知的方略がより頻繁に使用されていることが確認されました。これは、深い処理アプローチが高い学習成果に結びついていることを示唆しています。一方、低群では、「ページめくり」行動の割合が高く、ノートテイキング関連の行動が少ないことが示されました。この結果は、ノートテイキングやノートのレビューが学習成果に影響することを示しており、ブレンド型学習においてノートテイキングの重要性が強調されます。また、学生がノートテイキングを通じてE-bookシステムとどのように関わるかが、その学習成果に影響を及ぼす可能性があることを示しています。そのため、この研究は、E-bookシステムを使用する学習者のノートテイキング行動に関する重要な洞察を提供しており、得られた知見を基により効果的なブレンド型学習環境の設計が期待されます。

以下は私がこの論文を選択した理由と感想となります。ブレンド型学習が進むなか、E-bookシステムの活用が自己調整学習の学習行動に与える影響に興味を持ち、そして私が過去に行ったBookRollシステムに関する研究(Geng et al., 2024)との類似性もあり、この論文を選択して拝読しました。この研究は、特にE-bookシステムのノートテイキング行動に焦点を当てていて、新しい知見がたくさんありました。学習データが全部ではなく、ノートテイキングの行動に絞る研究アプローチは、非常に参考になるものでした。今まで収集してきたE-bookシステムの学習データが多岐にわたり、それらのデータをどう分析するかについて視点が増えました。一方で、研究結果の解釈に関する考察が少し足りないと感じました。例えば、メモ追加の行動と次のページへ移行する行動の頻度が大概同じ高い頻度のことが示されていますが、授業デザインには何があるのかが特に明確になっていません。ブレンド型学習の対面授業の部分がE―bookシステムのートテイキングの行動に及ぼす影響をもっと掘り下げたら、より興味深い知見が得られるかもしれなません。また、学習成果の高群はおける効果的なノートテイキング行動パターンが議論されましたが、低群のノートテイキング行動の具体的な特徴についてもう少し詳細な考察があればと思います。今後の研究において重要なフォーカスポイントになると考えます。

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