九州大学 山田研究室

高等教育におけるオンライン学習評価のためのフレームワークとチェックリストに関する論文を読みました

2023年08月21日

皆さん、こんにちは、学術協力研究員のカクです。

この記事では、今回の英語文献ゼミで読んだ論文について紹介します。

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論文タイトル:A framework and checklists for evaluating online learning in higher education

論文誌:Assessment & Evaluation in Higher Education

ページ:Vol. 30, No. 5, October, pp. 539–553

出版年:2005

著者名:Peter Hosiea and Renato Schibecib with Ann Backhausc

下記、論文中で書かれている内容の概要になります。

 

本稿では、高等教育におけるオンライン学習教材のチェックリストと文脈に応じた評価の活用について述べています。

現在、高等教育の教員はチェックリストで提供できる以上の評価データを必要としており、これは文脈に基づいた評価によって提供される必要性があります。高等教育におけるオンライン学習教材のチェックリストと文脈に基づいた評価を併用することで、オンライン学習体験の設計者や開発者に有益な情報を提供することができると本稿では指摘しています。

テクノロジーの発達に伴い、教育をサポートするためのテクノロジーは、今後より安価に、より広く使われるようになれると指摘されています。規模の経済(例えば、印刷費などの変動費が減少する)だけでなく、柔軟な配信ももたらすことが可能だと本稿では指摘しています。

どのような高等教育コースにおいても、メディアに関係なく、評価は質の中核をなす活動であるべきだが、評価には何が含まれ、どのように実施されるべきかについては、教育関係者の間であまり合意が得られていないのは現状だと著者らは指摘しています。

本研究でデザインされたチェックリストは、Cheung(1994)が提案したOECD/CERIに基づいているカテゴリーを参照しています。多くの研究は、コースウェアのレビュー(OECD/CERIの用語を使用)を行うためのチェックリストを提供しています(Sharp ,1996;Roblyer et al. ,1997;Levine,1996;Roblyer et al.,1997;Cheung,1994)。

 

また、オンライン授業を評価する際には、教員はコースウェアの評価において非常に重要であり、コースウェアを想定する学生を対象にした文脈に沿った評価も含むべきだと指摘しています。

そこで本研究では、OECD/CERIに基づいて作成したチェックリストに、文脈に基づく評価を加えて、実施されました。

チェックリストに含まれる内容は本稿では大きく3つに分類されています。

教育法:単元を支える学習活動(現実の課題、共同作業の機会、学習者中心の環境、学習意欲を高める、意味のある評価)。

リソース:学習者に提供されるコンテンツと情報(アクセシビリティ、年代性、豊かさ、メディアの強力な活用、包括性)。

配信ストラテジー:コースが学習者に配信される方法に関連する問題(信頼性の高いインターフェース、明確な目標、方向性、学習計画、長時間の遅延なくダウンロードできること、公平性とアクセシビリティ、適切なスタイル)。

 

このチェックリストは、ECUの教職員がオンライン・ユニットの質を評価するために使用するだけでなく、学内の同僚を含む相互評価者によって、オンライン・ユニットの質保証レビューの一部として、また学習リザレクションのインストラクショナル・デザイナーへのガイダンスとして使用されています。

そして、文脈に沿った評価を行います。文脈に沿った評価とは、オンライン学習教材の利用者を想定した評価です。チェックリストの使用と、文脈に沿った評価方法と合わせて、有用なデータを収集・分析するために使用することができると指摘されています。コースウェアの必須要素(関連性、コストなど)のチェックリストが合意されると、文脈に沿った評価はコースウェアを選択する希望者が求める直感的な経験を提供することを意図しているとしています。

学生のフィードバックによると、作成された教材の質は通常よりも高く、学習者中心の環境、魅力的、豊かさ、包括性、意味のある評価などが高く評価されています。しかし、体系的なオンライン・ディスカッションや「Blackboard」機能の利用拡大など、改善すべき点も指摘しています。

 

今後の具体的な改善の方向性は、以下のようにまとめています。

マルチメディアを含む学習環境では、個人の学習スタイルに対応するように設計される必要がある。

マルチメディアの設計やその後の評価において、学習者個人の好みが重要な要素となることは明らかになる必要がある。

マルチメディアのデザインにおける今後の課題は、利用者が積極的に参加できるプログラムを開発することであり、学習者の反応を厳格に構造化しない新しいコースウェアのデザインを、この教育メディアを補完するために探求する必要がある。

 

以下、私からの感想となります。最近、博士論文を作成するために、チェックリストの活用に関する関連論文を読んでいます。この論文の中で、自分の論文に使えそうな部分は、チェックリストは教育現場で広く使われている書式であり、授業の質の確認や評価に使えるという部分だと思います。しかし、自分はこの論文で最も見たいのは、チェックリストの各項目がどのように引き出されているかということです。また、学生からのコメントによってチェックリストが改善されたことは述べられていますが、どのような評価があり、どのように改善されたのかが詳しく説明されていないです。データ結果とエクスポートしたチェックリスト項目との相関関係や、チェックリストをどのように評価したかについて、より具体的に説明することが必要だと思います。これから、自分は論文を書く際には、この部分に注意を払いたいと思います。

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