九州大学 山田研究室

外国語学習におけるオーセンティック・アクティビティの効果

2023年07月31日

皆さん、こんにちは、学術協力研究員のカク コウです。

この記事では、今回の英語文献ゼミで読んだ論文の内容と感想について紹介します。

 

論文タイトル:Investigating the Effects of Authentic Activities on Foreign Language Learning: A Design-based Research Approach

論文誌:Educational Technology & Society

ページ:261–274

出版年:2017

著者名:Ildeniz Ozverir, Ulker Vanci Osam and Jan Herrington

 

下記に概要をまとめました。

構成主義的な考えを持つ教育者は、「知識は人から人へ単純に伝達できるものではない」と提唱しています。近年、タスクの問題解決を目標とする指導法が数多く登場しています。タスクベース、問題ベース、プロジェクトベースのアクティビティによる意味に焦点を当てたアプローチでは、文法や語彙の正しさなどの「形」から「タスクを」へと焦点を移し、意味が第一となります。しかし、これまでの研究は、学校で採用した学習タスクが、実世界のタスクではなく、「原文に適したタイトルを探す」、「絵を並べる」といった学校内に閉じたタスクがほとんどであることから、批判されています

オーセンティック・ラーニングとは、「言語教室で学習者が行う作業と外の世界との間に密接なつながりがあるべき」という考えに基づいた学習活動で、学習内容を深く理解するために役立ちます。

そこで本研究では、オーセンティック・アクティビティが外国語学習に与える影響を調査することで、教室と実世界のギャップを埋めるために、演習を超えたタスクを設計するための指導原則を教師に提供しようとしています。

 

方法

デザイン・ベースド・リサーチ(DBR)研究が実施され、4つのフェーズ(Reeves, 2006)が一つのサイクルになります。サイクルには、問題調査、学習環境の開発、改善、データの分析を振り返り、洗練されたデザイン原則をまとめることが含まれます。このサイクルは2回行われます。1サイクルは6週間続きました。

 

参加者

参加者は北キプロスの英語教育大学の予備校で、自分の選んだ科目に進むために英語を学んでいる学生です(10名)。CEFRのB1-Thresholdレベルの言語能力を目指しています。

 

学習環境について

学習者は個人またはペアでリサーチを行い、社会的意義のある問題についてデータを収集し、ニュースレターに掲載するための記事を書き、口頭で発表することが求められました。

ポスター、ビデオ、記事の構造を分析させ、Moodle(非同期のチャット、プラットフォーム)などのサポートツールを使用しました。

 

結果

ライティングや会話のスキルを向上させることが可能としています。

オンライン・ディスカッションの学習アプローチは、学生には様々な言語構成を使用する機会を与えられました。オンラインディスカッションを通して、学生は学習内容をより深く理解することができました。オンライン・ディスカッション中に教師から与えられるフィードバックは、学生の注意を集中させるのに役立ちました。しかし、教師のフィードバックを無視することもしばしば起こりました。参加学生の文章を分析したところ、学習環境が学習者の文章作成能力(内容、語彙、文法)を要求されるレベルであるB1まで伸ばすのに役立ったことを示しています。

学生たちは、自分で作成したパワーポイントを使ってプレゼンテーションを行いました。 発表の際には、パワーポイントに書かれた内容をターゲット言語を使って、迷うことなく発表することができたと報告されています。

本研究で得られた知見と文献調査に基づき、EFLにおけるオーセンティック・アクティビティの最初の設計原則から11の設計原則が導き出されています。

– 実世界との関連性があること

– 学生が持続的に活動を完了するために必要なタスクとサブタスクを定義する必要があります

– 様々なリソースを用いて、異なる視点からタスクを検討する機会を提供します

– 共同作業の機会を提供します

– 振り返りの機会を提供します

– 領域やスキルに特化した成果を超えていくこと

– 評価とシームレスに統合されます

– 他の何かの準備としてではなく、それ自体で価値のある洗練された作品を生み出すこと

– オープンエンドで、競合する解決策や結果の多様性を可能にします

– 学習とコミュニケーションの双方を促進します

– モチベーションを高める要素を提供します

 

以下、私からの感想となります。

最近、オーセンティック理論と言語教育に関する論文の文献レビューを行いました。私もインストラクショナルデザイン(ID)という実践系の研究を行っているために、この実践型の論文を選びました。この研究について、著者ら自身が限界点で書いているように、実践の規模が小さいこと、設計がB1レベルのみであることから、この記事で導き出された11の特徴の一般性については、さらなる議論が必要だと思います。さらに、この研究の目的は、「オーセンティック・アクティビティが外国語学習に与える影響を調査することで、教室と実世界のギャップを埋めるために、演習を超えたタスクを設計するための指導原則を教師に提供しよう」となっています。では、どのような授業タスクが適切なのですか?これらのタスクはどのように選ばれるべきなのですか?これらの疑問は、この論文を読んでもなお解けないままです。疑問がありましたが、自分の論文を書く上での新たな視点も与えてくれました。例えば、IDの理論は、授業で使用するタスクを設計するために使用することができ、その結果、タスクの質を保証することができるなど学ぶ点も数多くあり、今後の博士論文執筆に向けて活用しようと思います。

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