とうとう2023年度の授業が始まりました。大学院の授業に加え、学部向けの基幹教育「教育基礎学入門」と「現代教育学入門」を担当しています。受講者はこれまでの中で2番目の多さで、110名になっています。私の授業は課題負担が強くあるので、真剣に教育工学について学びたいという学生でないと辛いので、正直、この数字は驚いています。もちろん他の授業で抽選に漏れて、こちらに来たケースもありますが。
教育基礎学では、教育工学で扱われる基礎的な理論や研究の流れなどを説明し、特に理論と情報化の関係性、フォーマルラーニング、インフォーマルラーニングにおける情報化の動向や研究などを紹介しています。コロナ禍の中で高校等で教育を受けてきた世代でもあるため、教育の情報化というものについて、強く興味があるというのも特徴的なんだろうと思います。夏学期では春学期の教育基礎学入門の内容に基づいて、実際にシステムを触ってもらって、理論的接合について考えてもらうことをします。
基幹教育からデータ駆動イノベーション推進本部へ異動し、これから基幹教育に関わることはなくなると思うのですが、ChatGPT等生成型AIが流星のごとく登場し、様々なインパクトを与えている状況で、教育工学、特に教育の情報化について学ぶことは大変意義のあることだと思います。教育・学習というのは、単に教員になるために学ぶものでもなく、自分のキャリアを実現するためにも有用ですし、教育の情報化は特にそれへダイレクトに効いてきます。今、まさに時機を得たトピックであろうと思います。
生成系AIの話もしました。それをどう活用するのかというところも含めてです。本学はまだ全面的禁止という話は出ていません。これは我が師、赤堀先生の授業、ご指導にもあったのですが、情報通信技術の教育適用には光の部分と闇の部分があり、光を活かし、闇の部分を如何にして低減させて、対応するのかというのが求められるのだろうと思います。YouTubeもLINE、ゲームもそうです。うまくつかえば素晴らしい教育システムになりますし、下手に使えば闇の部分が顕著になり、制限するという動きになるでしょう。
情報通信技術の進展は我々の手では止められません。どんどん進んでいきます。如何にして、私たちが「かしこくなる」使い方をするか、私たちが成長するような使い方をするかという点が重要であることを授業でも説明しました。答えを求めるように使うのは楽かもしれませんが、それは自分が成長できる機会を失っているとも捉えることができるわけです。教育心理学の研究である自己調整学習、メタ認知といった研究知見が様々なところで活かされてきていますが、まさに自己調整学習やメタ認知と連動したリテラシーが必要になるでしょう。自己調整学習とも関係しますが、援助要請(Help-seeking)という研究分野があります。援助要請でも、その要請の仕方で学習者の能力の伸びは変わりますし、下手にすると依存的にもなると言われています。生成型AIという人工物相手に援助要請するとしても、学習方略として考えて、活用するのが求められます。
ということで、授業ではこういう話もしました。まさに教育工学だなと思いました。
今年の授業は楽しみになりそうです。