九州大学 山田研究室

Moodleを使うのみで日本語教育の改善ができるかというと・・・どうなんでしょうか?

2022年11月08日

皆さん、はじめまして。

郝皓(カクコウ)といいます。今、学術協力研究員をしています。中国からの留学生です。かつて中国の大学で日本語を学習していた私は、日本語の授業を受けているとき、授業が退屈に感じることがよくありました。毎日、先生の単語や文法の説明を聞くだけで、授業が終わると教科書の文章を暗唱するのが日課でした。でも、いざ日本人に会うとなると、どう話せばいいのかわかりませんでした。そこで、授業で習ったことを使う機会を増やすために、授業のやり方を変えられないかと考えていました。現在、私は日本語教育の授業改善に重点を置いて研究しています。特にContent and Language Integrated Learning(CLIL)という授業形態に着目した研究をしています。CLILとは簡単に言うと、外国語で専門知識を学ぶ授業形式です。日本でも大学では授業を英語で行うといった形式がありますね。例えば、私が実践した授業では、中国の大学にて中国人学習者に異文化、特に日本の文化について日本語で教えることで、内容だけではなく、その内容を活かした日本語自体も学ぶことができます。しかし、CLIL用の授業デザイン論がない、CLILでのICT活用が進んでいない、などの課題があり、その課題から学習者の学びの質が授業者の経験値に依存するという問題が起こります。そこで、私はCLILで行う授業の質を担保するために、インストラクショナルデザイン(Instructional Design)を用いてCLIL授業をデザインし、その有効性を検証し、CLILにおいて、デザインに重点的に入れ込むべき要素を抽出しようとしています。もちろん課題に即して、ICTの要素も取り入れています。CLILの有効性を担保する要素を見直すことができればと思います。

今週の英語ゼミ、私は下記の論文を読みました。

論文名:“Design and Implementation of College Japanese Teaching Interactive System Based on Moodle Platform”
著者: Jing Yang
発行年: 2022年
論文誌名: Wireless Communications and Mobile Computing

論文を選んだ理由は、中国の大学における日本語教育の現状について補足する上で、ICTを利用する際の注意点を把握したいと思ったからです。

ここでは、この論文の内容を簡単に紹介します。国際交流の活発化に伴い、大学における日本語教育も、学生のコミュニケーション能力や応用力、創造力の向上を重視し、日本語能力の育成に重点を置いたものに変わってきているのが現状です。しかし、現在の大学の日本語教育は、まだ理論的な知識ばかりが重視され、実践的な応用力の育成が不足しています。この論文はMoodleをベースにした大学日本語教育インタラクティブシステムを構築し、大学日本語教育と教育の現状を分析しました。Moodleを活用し、オンライン教育を行うことで、教師と学生あるいは学生と学生、学生の自主的な交流、他者との討論をより積極的に促進し、学生の自主学習に対する意欲を大幅に向上させ、学生がより質の高い指導を受けることができることが示されています。その理由として、著者は以下のように説明しています。学生の視点からは、Moodleを利用して授業前に教材を読み、授業後にオンラインで議論することで、自主的な学習と他者とのコミュニケーションを強化することができ、教師の視点からは、Moodleを利用して教育プロセスをよりよく管理し、授業の改善を促進することができるとしています。

本論文では、Moodleを利用する際の教師のニーズ、学生のニーズ、さらにMoodleのアンケート機能、外部リソースの利用機能、教材の閲覧機能についての分析が行われています。しかし、この論文には、データをどのように収集したのか、具体的な分析方法やアンケートの具体的な設問についての情報がないのは、むしろ残念なことだと思います。また、Moodleの活用については自律性が影響すると思いますが、その点の言及はあまりなく、結構、学生の自律性に関する特性が効いてしまうのではないかとも考えています。またIDというのも重要なのではないかということも強く認識もしました。

Moodleは世界的に広く活用されているLearning Management Systemのプラットフォームの1つで、様々な機能がありますが、使用したMoodleの機能が学習に与える影響や、使用したMoodleの機能に対する学生や教師の意見について、より具体的に議論しているともっと有用な知見になったのではないかと感じました。

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