九州大学 山田研究室

新年度を迎え

2019年05月15日

更新が滞っていますが、前回の更新から、新年度、新年号を迎えました。授業も始まりました。主に1年次向けの教育基礎学入門は昨年よりも2倍近く受講者が増えました。私の授業は課題が重いので、敬遠されるのですが、近年の教育の情報化に強い興味がある学生が多く受講してくれています。また教員になりたい学生や教育産業に就職したい学生、人の心理面を踏まえたシステム開発研究をしたい学生にとっては得るものが大きい授業なので、そういうことに関心がある学生が多いのかもしれません。うれしいですね。学部高年次向けの「教育情報工学」は10名の受講で、いつもより若干少なめ。ですが、1年次から私の授業を受けている学生で、教育学部ではない学生が受けていて、うれしいですね。私の課題協学も受講していたので。教育工学研究に他学部でありながらも強い関心を持ってくれるというのは大変ありがたいことです。多くの学生の将来に活きるような授業にしていきたいと思います。

さてさて、いろいろ前回のポストからいろいろありました。研究室メンバーも更新しました。https://mark-lab.net/?page_id=1564

1.研究業績

3月末にSITE、4月にmobile learningという国際会議が行われ、計5件の発表が行われました。あとBook Chapterが2つ採択されています。

  • Goda, Y. and Yamada, M. (2019). Visualization of Social and Cognitive Presences for Collaborative Learning Facilitation, Proceedings of SITE 2019, 1020-1024.

この研究はオンラインコミュニケーション上で、人間関係の形成に関係する社会的存在感と、ディスカッションといった問題解決などを目的としたコミュニケーション中に現れる認知的存在感という発言を自動的に可視化するシステムを活用し、協調学習支援にどのように活用できるか検討した発表になっています。可視化の結果に基づいて、協調学習をどのようにファシリテーションできるかなど検討しています。

  • Onoue, A., Yamada, M., Shimada, A. and Taniguchi, R. (2019). The Integrated Knowledge Map for Surveying Students’ Learning, Proceedings of SITE 2019, 1092-1100.

この研究は島田先生との共同研究で、私が昨年発表しました、eBook viewer “BookRoll”のログを活用したコンセプトマップ作成ツール”BR-Map”のログを活用して、コンセプトマップの作成プロセスやパターンを可視化するシステムに関する発表です。

  • Nakayama, K., Yamada, M., Shimada, A., Minematsu, T., and Taniguchi, R. (2019). Learning Support System for Providing Page-wise Recommendation in e-Textbooks, Proceedings of SITE 2019, 1078-1085.

この研究も島田先生との共同研究で、BookRollの各スライド内に含まれる特徴語をキーワードに、そのスライドの内容に関連する情報をレコメンデーションするシステムに関する内容です。BookRollの各スライドにレコメンデーションボタンがあり、それを押すと、そのスライドの内容に関連するインターネット上の情報リンクが表示されます。

  • Taniguchi, Y., Shimada, A., Yamada, M. & Konomi, S. (2019). Recommending Highlights on Students’ E-Textbooks. Proceedings of SITE 2019, 1128-1134.

これは、BookRoll上で、自分では引いていないが、他の学生が多く引いている箇所を推薦するシステムに関する研究発表です。この機能によって、スライドだけではなく、文言レベルでその授業内容を理解するに当たって重要な箇所を捉え、さまざまな学習支援に適用することが期待されます。

  • Geng, X., and Yamada, M. (2019). Development and design of a compound verb AR learning system employing image schemas, Proceedings of the 15th international conference of mobile learning 2019, 73-80.

この研究はARを活用した日本語学習支援システムに関するものです。留学生にとってわかりにくい日本語である複合動詞(例えば、「取り替える」「飛び込む」)を学習するために、1つ1つの動詞が書かれた紙のカードを組み合わせることで、その複合動詞に関するARを表示させ、イメージからその複合動詞を理解することを目指したシステムです。

  • Yamada, M., Goda, Y., Kaneko, K., Handa, J., and Ishige, Y. (2019).Discourse Analysis Visualization Based on Community of Inquiry Framework, In K.Myint (ed.) Emerging Trends in Learning Analytics: Concepts and Applications in Education (pp.200-222), Brill publisher, Leiden, The Netherlands. https://brill.com/view/title/54675

これはSITE 2019で発表した内容の関係もありますが、社会的存在感に加え、認知的存在感の可視化を行ったシステムの評価に関する研究です。可視化の手法、システムデザイン、評価を中心に書いています。

  • Okubo, F., Yamada, M., Oi, M., Shimada, A., Taniguchi, Y., Konomi, S.(2019). Learning support systems based on cohesive learning analytics, In K.Myint (ed.) Emerging Trends in Learning Analytics: Concepts and Applications in Education (pp.223-248), Brill publisher, Leiden, The Netherlands.

こちらはこれまで九州大学で行ってきたラーニングアナリティクス研究の総論的な内容になっています。今、本学のラーニングアナリティクスセンターにはラーニングアナリティクス研究として行っている内容紹介が動画で流れていますが、あれからいろいろ新しいことも行っています。あれから発展させて行ってきた内容、たとえばテキストマイニングを活用したポートフォリオ分析、アクティブラーナーダッシュボード、授業のリアルタイム分析研究の知見が掲載されています。

2. 新たな研究

幸いに科研費 基盤研究B(一般)を新規に獲得することができました。審査員の先生方、ありがとうございました。今回は4年間というプランで、合田先生(熊本大学)、島田先生、谷口先生(ともに九州大学)のチームで研究を進めていきます。タイトルは「個別・協調学習の往還を支援するインタラクション高度化基盤の開発と評価」で、個人の学習と協調学習の連動性を高めるプラットフォームを教育・学習関係の理論×ラーニングアナリティクスからデザインし、開発・評価するものとなります。これまでラーニングアナリティクス研究をしてきましたが、協調学習に関するラーニングアナリティクス研究を強化したく、いい研究にしていきたいと思います。

他にも農業人材育成研究(谷口倫一郎先生代表 基盤研究A)、自己調整学習と学習行動との関係分析研究(挑戦的研究(萌芽))、高校でのラーニングアナリティクス研究(SIP)も本格化してきました。緒方先生(京都大学)の基盤研究Sもいよいよ終盤に入っていきます。研究プロジェクトがどんどん進んできていますので、共同研究者とともに教育の発展に寄与できるよい研究にしていきたいと思います。

学会関係でも、日本教育工学会(JSET)が全国大会を2回化することとなり、その春大会担当をしております。学会としても新しい試みを行い、会員に研究・実践をより良いものにしてもらうための企画を立てて、チャレンジしていきたいというのもありつつ、近年、学会運営のマネージメント負荷をどう低減させていくのかという課題もあり、そのバランスを考えていかなければなりません。春大会はもともとJSETの研究会で、3月研究会は参加者数、発表件数もプチ全国大会規模があることから発展的に全国大会に規模を引き上げたということも経緯の1つとしてあります。なにぶん、新しいチャレンジで、どうなるのかも読めない部分もありますが、いい大会になるようにがんばりたいと思います。2020年2月29日〜3月1日が初の春大会で、信州大学で開催となります。春大会担当の委員、現場をマネージメントしてくださっている森下先生、島田先生と連携していいものにしたいですね。

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