現在、私たちの身の回り、使用する電子機器、生活環境が大きく変わりましたし、それに合わせて学校で教わるものも少し変わってきました。何か、大学で教育していたものが高等学校へ、中学校へ、小学校で少しずつ落ちてきているようにも思えることもあります。一番最後に影響を受ける小学校は小学校英語、情報科目、小学校によってはコミュニケーション能力の育成のための授業を行うなど、小学校が大きく変わりつつあります。
今後は小学校から将来の人材育成を考えて、必要であれば新しい科目を追加し、カリキュラムが検討され、授業が行われていくんだろうな・・・そんなことを考えていた時、シンガポールに昔行ったことを思い出します。赤堀先生とベネッセコーポレーションの方々と一緒に学校視察に行きました(この頃はまだ博士1年で、今のポジションにつくなんて考えてもなかったです)。
シンガポールの教育熱はまるで15年前くらいの日本を見ているようでした。基礎学力の育成に熱心で、教育熱心な親が大変多いです。たぶん日本より過激で、小学校から国家試験、この小学校6年くらいで受験する試験で大学にいくことができるかどうか、決まるんだそうです。シンガポールは小さな島国ですし、資源も何もなく、「人材こそが資源」と政府の明確な方向があり、人材育成はしっかりやっているということです。人材流出を避けるためにもパスポート更新は2年、留学に出るときはデポジットで100万円だから200万円だか、政府に納めないといけないということです。
シンガポールでは英語教育も盛んで、幼稚園の頃から始まります。小学校では主に中国語と英語が使用されます。タミール系の方もいるので、タミール語も使用されているところもありますが、中華系、タミール系の学校と外見上別れているようにも見えます(もちろん、中華系の学校にタミール系の生徒もいるのですが)。この幼児期からの2ヶ国語教育ですが、シンガポールの「落ちこぼれ」を生む大きな原因になっているんだそうです。日本人でシンガポールで生活している方とお話しすることができましたが、この2ヶ国語学習はかなり重いそうです。中華系の方にとっても、親が英語を話すことができないことや、中国語でも書き言葉を教えることができないこともあり、中華系のお子さんにとっても、厳しいところがあるそうです。
シンガポールでは小学校での授業にIT機器が積極的に使用されています。PRSで、授業中に数学の4択問題を出して、生徒に答えさせ、その回答が違う子でグループを組み、数学の勉強をするとか、自分で英語教材をFlash で作ってみるなどの授業があり、おもしろかったです。小学校で1つのeラーニングを提供し、自宅でも学習ができるような仕組みを作っているところもありました。その「落ちこぼれ」を救うために、レベル分け行い、英語能力の定着のため、eラーニングとのブレンドで学習をさせるようなところもありました。日本と同じような、教科の理解を深めるという道を歩まないで、社会で求められるような、ソーシャルスキルや問題解決能力の育成を教科教育で行っているのは面白いですし、日本ではこうはいかないと思いました。
日本の小学校でははシンガポールほど、コンピューターのソフトウェアが充実していませんし、指導できる内容もかなり限定されていて、シンガポールほどの積極的なIT使用は難しいと私は思いますが、ITを使わなくてもできることもありますし、教科教育の中でも、単に学習項目の学習をさせるのではなく、指導方法についてもいろいろな方法があると思います(それは日本でも研究されてきているので、ここで触れることではないと思います)。
それ以上に、私が覚えているのは、学校現場の教員であっても、数年の教務経験を持ったあとにNIEにいって、教育学修士のコースに入って勉強することや、企業の人たちと研究するなどして、実際の現場で活躍している人材がどういうものなのかということを意識し、勉強して、また教育現場に戻っていくというサイクルができていると思いました。もちろん、小学校から「企業ではこんな人が活躍しているから、そんな風になりなさい」とか「君たちは将来企業に行くのだから・・・」とか、そんなことを言うのではないですよ。大学や企業で行われている教育形態や能力を小学生の指導レベルに落として考えるということです。教育現場の教員であっても、単に授業ができる、学級運営ができるだけでは足りない。将来の人材育成を見据えるということが大切で、今後日本でも求められるのかなーと思いました。