九州大学 山田研究室

質疑応答スキル

2012年02月01日

この時期、修士も博士も発表シーズンです。いろんな発表を見ますが、「この人、全く練習してないな」と明らかにわかるものから、しっかりを用意をして、質疑応答まで含めて、いい発表をされる学生さんもいます。

「いい発表、聞いたなぁ」と思える発表というのは、発表スライドや発言する内容よりも質疑応答の良さもかなりのウェイトを占めると思います。私自身、学会や国際会議、学内の発表を見ても、「いい発表を聞いたな」と思うのは質疑応答の内容がいい時だと思っています。

発表自体はスライドの作成や口頭でいう言葉、1人の練習で対応できる部分もあるのですが、質疑応答はそうはいきません。

私が思うに、質疑応答は発表練習、ゼミ発表や学会発表を繰り返しやる方法が一番いいと思っています。発表練習では同学年や後輩を集めてやるだけではダメです。なぜならば想定質問がされない可能性が高いからです。先輩やお時間を頂けそうな先生にもご参加頂き、練習を重ねるのがいいです。

大学によって、教員や審査会のカラーが違うので、なんとも言えないこともあるのですが、私は質疑応答には1つの型(流れ?)があると思います。

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1:お礼を言う(「ご質問頂きまして、ありがとうございます。」や「大変参考になるご意見を頂きましてありがとうございます」など。プレゼンテーション技法でもよく書かれていますが)

2:できれば、質問者がされた質問内容が自分の研究においてどういう点に関わるか、どういう意義があるかを簡単に言う(「先生のご質問は○○に関する方法についてかと思いますが」、「先生のご質問は私の研究領域では○○という分野に関係していますので、大変重要なご指摘です」など)

3:質問に端的に答える。長いのは絶対にダメ。ダラダラ話されても何が言いたいのかわからない。Yes・Noの質問なら、Yes・Noでまず回答する(お友達や後輩がダラダラ長い回答をした時は「やっちまったな!」と言ってあげてください)。Yes・No、どっちか判別がつかない時は、最初に「それはケースによって変わります」など、最初に答えを言う。続いて、簡単に理由を説明するといい。

4:再度、質問者の質問の意義深さなどを簡単に言う(「先生のご質問は○○の観点では大変重要でして、今後、本研究を発展させていく上で必ず検討しなければなりませんので、今後の方向性を見極めるのに、ヒントになりました。」など)

5:お礼をいう
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これが基本的な型だと思います。ただ、審査会の場合はたいてい自分の研究範囲を超える質問も出てきます。その場合は、自分の研究の範囲・制限を答えて、その範囲内で行った研究成果の価値について説明を簡単にします。続いて、上記の型の4と5を行うのがいいと思います。

質問は3にも書きましたが、簡単に答えることが重要です。まず最初に回答は何なのか、はい・いいえ、賛成・反対などはっきりと言いましょう。多くの方に質問をして頂くことは大変重要で、そのためにはタイムマネージメントをしなくてはいけません。質問できなかった先生はストレスを溜め、結果的に審査が厳しくなることもあります。発表者の回答時間と質問者の質問の時間が質疑応答のタイムマネージメントに一番影響します。質問者に対しては司会者が対応してくださいますが、発表者の方は自分でやらなければいけません。回答に時間がかかりすぎると司会者に怒られることもあります。司会者だけではなく、審査会後に指導教官にも怒られることでしょう。回答時間が長い、さらに何が言いたいのかわからないというのは最悪な状況です。「なにが言いたいのかわからないのでいいです」と質問者の先生に言われてしまったら・・・

わからないこと、途中まで理解できたことは正直に確認しましょう。不明なままで回答しても、よくわからないことになり、混沌とした世界が待っているだけです。「すみません。○○についてお聞きでしょうか?」、「先生の○○とおっしゃっられたところまでは理解できたのですが、その先について、もう一度お願いできますでしょうか」など、答えるのがいいと思います。

あと「修正します」というのは最後の手段です。明らかにミスだった場合や抜けていた場合は素直に「ごめんなさい」と謝って修正するのがいいと思いますが、そうではない場合は、やはり多少、「柔らかめ」に戦っておかないといけないと思います。自分の考え(データに基づいたものですが)もご理解いただかなくてはいけないのですから。

ただ、この型が活きるのは、自分の研究について自分がよく理解をし、下準備をしっかりしておかなければいけません。「結局、あなたがやっていることって何なんですか?」と最終審査などで言われるほど、むなしいことはないです。質問に対しても、データを示すべきところはデータを示して、回答しなければなりません。そのための予備スライドは必ず用意しなければいけません。例えば、プレゼンテーションで実験・実践の手続きについて長々と説明するわけにはいかないのです。そのため、細かな話はあとに残しておきます。あと考察について、ここが一番の議論になるところですが、ここについても先行研究について記述した予備スライドは用意するべきです。修士論文、博士論文で実際に掲載しているデータをできれば視覚的にわかりやすい形でスライドを作成した方がいいです。私は博士審査では、35分のプレゼンテーションでスライドは58枚、予備スライドは60枚から70枚くらい用意しました(合計120~130枚程度)。

これらのことを「教えてください」と言われて、教えてもできるわけでもないです。練習に練習を重ね、ゼミや学会の発表を積極的に続けるしかないと思います。ゼミは自分が所属している研究室のゼミだけでは足りないと思います。外部の大学や勉強会で発表をして、修行するのがいいと思います。それを繰り返し、質疑応答の型を身につけて、知識と自信をつけなければいけません。

先生も先輩も誰も「練習しましょう」なんて言ってもらえることはないです(言ってもらえる研究室は優しい先生で幸せな研究室です)。自分から「練習したいので、お願いします」と言わない限り、誰も助けてくれません。

審査会を迎える学生さんは年末年始、休みがないと思いますが、発表練習、特に質疑応答についてはしっかりと対応できるようにがんばってください。

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