九州大学 山田研究室

国際会議LAKでの得た学び、感じたこと

2024年04月08日

みなさん、こんにちは。

今回、学習分析の分野で影響力が大きいLAK(Learning Analytics and Knowledge Conference)に初めて参加し、多くを学びました。

この学会では2つのワークショップと主要な会議に参加しました。ワークショップでは、現在のラーニングアナリティクスの手法が教育現場でどのように具体的に応用されているかを学びました。特に、VRとラーニングアナリティクスの組み合わせに関心がある方が多いと思いました。実際に発表があった事例では教育資源が限られている南アフリカでは、教育水準を理想的なレベルに引き上げることが難しいため、VRの活用が不可欠であり、地理的な制約を超えてアフリカの子どもたちに優れた教育を提供し、地元の教師の研修を強化する重要な手段となっているお話を聞き、VR技術の可能性を実感しました。また、現段階の研究で、ダッシュボードがVRにどのように活用されているかについて学びました。このワークショップを通じて、VR設備を通じて収集される多くのデータ(視線データ、操作データ、生理信号データなど)をラーニングアナリティクスとどのように組み合わせるかについては、まだ多くの研究が求められると思いました。

プレカンファレンスの後はメインカンファレンスに参加しました。2つの興味深い研究について紹介します。最初の研究では、異なるタイプの背景音楽(例えばポップ音楽やクラシック音楽など)が読解理解に及ぼす影響を、マルチモーダルデータを用いて分析しています。この研究では、学習者が読解理解を行う際の生理的シグナル(視線データ、脳波データ、皮膚電データなど)を記録し、valance(価値)とarousal(覚醒度)の2つの次元で自己の全体的な気分を報告する方法を通じて、異なる背景音楽下での学習者の状態を探り、どの背景音楽が読解理解に有効であるかを検証しました。研究結果からは、異なるタイプの音楽が気分の異なる次元に影響を及ぼす可能性が示唆されています。例えば、クラシック音楽は学習者のネガティブな感情を減少させ、リズムのある音楽は学習者の興奮度を高めることが報告されました。この短い論文はまだ完善の余地がありますが、気分が学習に与える影響という観点が強調されており、非常に興味深いと感じました。この研究では、単純な「楽しいか不快か」という次元を超え、喜びと興奮というより具体的な感情指標を用いて読解理解の重要性を評価しています。どの気分が読解理解に最も役立ち、どのような音楽がその理想的な気分を引き起こすかについて、今後の研究がどうなるのか、楽しみです。

2つ目は、ポスターでの発表です。VR技術を活用して文化遺産に関する知識学習を支援するもので、参加者はまず特定の文化遺産についての知識を収集し理解します。その後、非没入型のVRアプリを用いて、その文化遺産の再現作業を行います。このVRアプリの使用は、自己調整学習のプロセスと見做され、自己調整学習の各段階に基づいてアプリ内の行動を定義し、このアプリを通じて文化遺産に関する知識をどのように学ぶかを分析し、ダッシュボードで可視化します。VRアプリ使用後、学習者はこの文化遺産に関する問題集を完成させ、その知識理解度を評価します。この研究は、比較的特別な分野である文化遺産の学習に着目し、その知識を伝承する意義深い方法を提示していると考えられます。しかし、文化遺産に関連する知識を具体的な問題に量化するのは容易ではなく、真の理解とは、単に事実を知るだけでなく、その背後にある歴史や物語を学ぶことも含まれると感じています。そのため、問題集だけでは知識の理解を完全には測定できないと考えます。ポスター発表で研究者と議論し、VR技術を使用した文化遺産学習が一般的な方法であることを知りましたが、知識評価方法についてはさらなる検討が必要だと感じました。研究者との直接的に交流することは素晴らしい学びの機会であり、多くの知見を得ることができました。

この経験を通じて、教育の質を向上させることができるかについて、いろいろアイデアが出てきました。学会での議論や発表を通して、技術と教育がどのように統合され、具体的な教育課題にどう応用されるかを理解することができ、私の研究視野を広げる貴重な機会となりました。今後もこのような国際的なプラットフォームでの学びと交流を楽しみにしています。

(文責:李瑭(修士2年生))

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