九州大学 山田研究室

山田研究室初の博士号取得者が出ました

2022年01月18日

いや、ほんと感激です。昨年12月31日をもって、山田研究室初の博士号取得者が出ました!!このキャリアを始めて、もう13年くらいですかね。前任では院所属はできませんでしたし、九大にきて、8年くらいでしょうか。赤堀先生のような研究室を作って、教育工学研究の発展に貢献したいなと思って、がんばってきました。やっとこの日を迎えることができました。

もちろん、私の力だけでは何もできませんでした。教育工学研究がメジャーとなっていない研究科で、社会科学系に分類される専攻で、教育工学のような、理系色がある研究分野の理解をして頂くことも大きな課題でしたし、今もそれは課題として存在すると思っています。教員や学生それぞれに何か考えるものはあるとは思いますが、教育学というものがそもそも多様性があり、様々な領域との連動性を受け入れている学際的な特徴があるという点もあり、その多様性を受け入れる度量はある研究分野だと思っています。

副査になって頂きました本学大学院人間環境学研究科の久米弘先生、田上哲先生、また木村拓也専攻長、岡幸江 前専攻長、専攻の先生方、外部審査員に入って下さった京都大学 緒方広明先生には大変なご助力を賜りました。大変感謝しております。特に久米先生におかれましては、普段のゼミもうちの学生が参加しているのですが、その場で様々なフィードバックを頂き、よりよい博士論文になったと思います。木村専攻長、岡 前専攻長には、本専攻における教育工学研究の業績評価ルールの策定と議論において、大変な舵取りをして下さいました。本専攻では、教育工学研究で学位を出すのは初めてのことのようでしたし、理系色が結構ある分野ですので、どう現状の評価軸と折り合わせていくか、課題もありましたが、両先生、専攻の先生方のご協力を持ちまして、前に進むことができました。他にもラーニングアナリティクス基盤の提供・準備にご協力くださった島田敬士先生、谷口雄太先生、Lu Min先生にも大変感謝しております。

さて、実際に博士号を取得した学生、いや、もう今は学生じゃないか・・・博士号授受者は下記の方です。

陳 莉(博士(教育学)) 博士論文タイトル「Collaborative Problem Solving-based STEM Instructional Design based on Learning Analytics (ラーニングアナリティクスに基づく協調的問題解決型STEM授業のデザイン)」

陳さんは現在、AIP加速研究の学術研究員をしてもらっています。ラーニングアナリティクス研究に従事してもらっています。2020年に開催された国際会議CELDAではBest paper awardを受賞しています。元々中学校の化学の先生をし、その現場の管見をもちつつ、新しい技術、特にラーニングアナリティクスを活用して、協調的問題解決学習を取り入れたSTEM教育のデザインを模索するという大きなテーマに取り組みました。今でこそ、GIGAスクール構想とかあり、学校現場にICT導入が積極的に進んでいますが、この研究を始めた頃は、まだまだその先駆けで、協力を得るのになかなか苦労しました。その苦労が実ったと思います。現場還元性が高い、大変意義のある教育工学研究ですので、これからの1人1台端末時代、さらに教科教育としても、STEM/STEAMが広がっていく様相がある中、有用な知見になっていると思います。授業デザインは非常に経験値が利くものとされていますが、教育工学はそれを経験値のみに依存しない、教育の質保証をどうするのかを、様々な学習関係の理論に基づいて模索している研究分野です。これにICTを活用することで、実際の学習行動データを収集し、心的なデータだけに依存せず、客観的にその授業デザインの有効性を見ることができますし、授業デザインの要点を見ることができるわけです。特に協調学習を取り入れた教科横断型のSTEMだとなおのこと困難が伴います。そこに大きな一石を投じた、意義深い研究になります。

これからの陳さんのキャリアがどうなっていくのか、楽しみです。私の研究室は最初に説明したように、私の指導教員でした赤堀侃司先生の研究室の姿を目指しています。厳しくも、研究に専念し、研究者、社会人として成長の実感が感じられる研究室を目指していきたいと思います。まだまだその道半ばですが、教育・学習の質改善に寄与できる教育工学研究を進め、国内外に発信できればと思っています。それを担う人材を育成していきたいと思います。

陳さんに続いて、これからも教育工学研究を世界的に担っていける研究者人材の育成を精一杯やっていきたいと思います。

今後ともどうぞよろしくお願い致します。

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