九州大学 山田研究室

私が金沢でやりたかったこと:長崎大学のアクティブラーニング教室を見て

2013年09月21日

8月頭なのですが、長崎大学でアクティブラーニングに関するFDで基調講演をさせて頂きました。学長、副学長が最初から最後まで参加されているという、大変すばらしいセミナーでした。金沢でもFDセミナーの運営をやっておりましたが、自学の学長、副学長が挨拶以外に参加するということは私が在籍した間では1度もありませんでした。長崎大学のFD推進に学長も強い想いで臨まれているという姿勢がはっきりをみることができました。すばらしいですね。

講演の内容としては、細かくはここでは書きませんが、アクティブラーニングといっても、プロジェクト型学習と捉えられがちですが、いろいろあること、学習者の能動性を引き出すための工夫を授業設計の時に考えること、ツール類(什器類だけではなく、デジタルやバーチャルなツールも含めて)の活用について、その理論的背景と意義、国内外の事例についてお話をしました。最後に課題についてお話をしました。

nagasaki_3セミナーの前に長崎大学の山地弘起先生に学内の見学をさせて頂きました。教養教育を行う棟には、なんと協調学習タイプのアクティブラーニングを支援する教室が8つもあります。国立大学ではまだ数少ないんじゃないでしょうか。アクティブラーニング教室というと、「お金がかかるもの」というイメージがあります。確かに、ちゃんと自学が考えるアクティブラーニングのコンセプト、学習目標などを整理した上で、そのコンセプトに合う新しい教室棟ができれば、それは1つの理想型と言えますが、現実、そこまでお金はありません。今ある教室のリノベーションを行うことが現実的です。私は金沢在籍時に安価で、既存の教室をアクティブラーニング教室に変えたいと思い、予算申請、企画、FDなどをやっていましたが、できませんでした。予算取りをする際も、審査をされる上層部のフィードバックからも、アクティブラーニングを定着させるための土台ができておらず、難しいことを実感しました。なかなかできるもんじゃないなと(私が政治的活動が苦手、嫌いということもあります)。しかし、長崎大学はまさに私がしたかったことを実現されていました。変に什器類のデザインにこだわる必要はないです。1人1つの机で、組み合わせにフレキシビリティーがあって、さまざまな学習形態に対応できるもの、また今後、のぞまれる学習形態がどうなるのかわからないこともあるので、柔軟に空間のリデザインが可能になるモノが望ましいですね。イギリスのJISCの報告書でも、「授業形態を試す実験場」のような教室空間が臨まれるという記述がありましたが、それはその通りだと思いました。

nagasaki_1アクティブラーニング教室の中には、床が絨毯になっており、土足禁止の教室もありました。これはダンス・表現系の授業を可能にするためとのことでした。事務の方でも教養科目の方にアクティブラーニング教室を割り当てるなど、利用の定着が進むようにされているとのことでした。

九州大学でも来年度から基幹教育がスタートしますが、協調学習を取り入れたものが主になっていきます。そうなっていくと、既存の教室だと授業がやりにくくなると思います。今年度は来年度実施に向けた試行授業がされていますが、学生さんも動きにくそうに、グループワークもしずらそうでした。グループ全体で発表する活動を入れるにしても、物理的空間でもっとうまくできるように支援してあげないといけないと思います。九大にも、もっと増えたらいいんですけどね。

nagasaki_3セミナー前の教室見学の前に、実は図書館を見学しました。2年前、長崎で教育工学会があったときに、まだ工事中で見ることができなかったので、今回は良いチャンスなので。まだスタートしたばかりということでした。1階がコモンズになっています。コモンズのエリアにコンピューターのエリア、全学教育で扱われる教科書展示エリア、長崎大学が持つ明治時代に関するものの展示がされていました。休み期間中でしたが、学生さんもいて、積極的に学習していました。2階には窓沿いにテーブル、椅子がならべられており、1人で学習するスタイルもサポートされています。

nagasaki_2こちらは図書館とつながっている放送大学のセンターにある学習エリアです。こちらでも協調的が学習が可能になっています。放送大学の教材・放送を使ったFlipped Classroomとかできないですかね。せっかく、放送大学のセンター側にあるので。

 

 

 

 

nagasaki_1学長の推薦図書の紹介もありました。こういうのも学長の教育に対する姿勢が見えるので、いい活動ですよね。

まだスタートしたばかりで、これから学習支援策を検討し、進められるとのことです。ラーニングコモンズにおける学習支援、その案を作っていくこと、実行していくこと、効果を見ること、そういうサイクルが回せる文化が定着するには2年くらいはかかると思っています。教養教育棟にもアクティブラーニング教室を複数つくられ、どうなっていくのか、これから楽しみんですね。良いものを見させて頂きました。

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