九州大学 山田研究室

高校のSTEM授業におけるラーニングアナリティクス研究論文が採録になりました

2019年11月26日

いやー、長かった・・・うちの博士学生がやってくれました。共同研究を行っている東明館高校におけるLearning analytics in practice論文、採録になりました。査読者の先生方、担当の先生、東明館高校の先生方・関係者様、また研究チームのみなさんに感謝致します。ありがとうございました。

Chen,L., Yoshimatsu, N., Goda, Y., Okubo, F., Taniguchi, Y., Oi, M., Konomi, S., Shimada, A., Ogata, H., Yamada, M. (in printing), Direction of collaborative problem solving based STEM learning by learning analytics approach, Research and Practice in Technology Enhanced Learning, Springer

内容は、高校における協調的問題解決意識やSTEM学習方略利用意識を高めるSTEM型授業デザインをラーニングアナリティクスのアプローチから検討するというものです。システムとしてはMoodle、BookRollを活用し、それらに蓄積されたログとSTEMにおける学習方略意識、協調的問題解決意識との関係性分析、ならびにグループディスカッションと協調的問題解決意識との関係について分析した結果について示しています。

議論を中心としたアクティブラーニングで、さらに近年、注目されているSTEM教育においてラーニングアナリティクスのアプローチから授業デザインを検討するという、まさに挑戦的な研究でありますが、ラーニングアナリティクス研究をこれまで精一杯やってきたLEDSチームの大きな力があってこそだと思います。

結果としてはマーカーの利用ログと成績、協調的問題解決意識については正の相関が見られたのですが、STEM学習方略利用意識や事前学習のログと協調的問題解決意識との間には負の相関が見られるといった結果が示されました。1クラスの生徒さんが少ないという、少人数クラスで授業をされていることもあって、言えることは限定的な部分もあるのですが、高校という、国際的にもラーニングアナリティクスがしっかりと定着していないフィールド(特に日本では初等中等教育においてはまだまだ・・・)で、STEM型授業のデザインをラーニングアナリティクスのアプローチで検討するという、Learning analytics in practiceについて一歩を踏み出せたのは非常に大きいと思っています。しかも国際誌で。

このデータを取り始めたときは、まだ緒方先生@京都大学が九州大学から転出されて間もないころで、大学でやってきたラーニングアナリティクスの研究知見を初等中等教育へ展開しようとしていました。MoodleやBookRollの利用が進まず、もがき苦しんでいた頃でした。その中でも東明館高校では理解して下さる先生方が少なからずいて、その教育への熱意とこちらへのご協力に強く感銘を受けたことを覚えています。その頃のことを思うと、この1本は苦労が報われた大きなものになります。

うちの学生にとっては記念すべき1本目が国際誌で、ICCEを運営しているAPSCEによって管理され、国際的な出版社の1つであるSpringerのジャーナルに採択されたというのは非常に意義があることで、これからの研究につながります。現在もLEDSでは大学を中心にラーニングアナリティクス研究を進めていますが、そこで蓄積された成果をさまざまなフィールドに展開しています。高校においては授業デザインへの展開はニーズとして強いものがあります。教育現場へフィードバックし、先生たちの経験と掛け合わせたLearning analytics in practice研究をますます進めていきたいと思います。

PAGE TOP