修士・博士課程を経て、大学教員・研究職する場合、今までの自分の専門が活かせないことが多々あります。大学教員・研究職の公募が出ているものの、1人の枠に対して100名とか200名もの人が応募します。その数百倍という競争を勝ち抜いて、やっと内定を頂けます。大変厳しい世界なので、修士・博士課程で勉強し、研究してきた蓄積が就職先では活かせないということもあります。自分の専門性が活かせる職に就くことができるのは、企業就職でも同じだと思うのですが、本当に幸せなことだと思います。
結構前なのですが、恩師である赤堀先生とお話をしていた時に、「(大学教員(大学や研究機関での研究職を含む)を目指す以上、)今までの専門とは違う仕事をするのはよくあることだ」というお話をされました。大学等で研究職に就くことが難しい現状から考えると自分の専門とは異なる分野への就職も覚悟して、就職活動をしなければならないことは1つの事実だと思います。
今まで自分がやってきた研究内容でも、領域依存の部分もあれば、そうではない部分もあります。いろんな分野で活かせる知識や技術があると思います。それを自分で理解できるか、これは1つの鍵だと思います。とはいえ研究職に就く人は自分が研究している領域をどんどん突きつめたいという思いがあると思います。でも、それは業務として自分の専門領域と異なることをやることになっても、個人の研究として今までの専門をしてはいけないということではないと思います。難しい分野もあるとは思いますが(例えば、生物学)、業務として行う研究、ライフワークとして行う研究は分けて考えるべきではないかと私は思います。
さらに赤堀先生は「それは自分にとって新しいチャレンジになる」ということもおっしゃられました。今まで行ってきた研究とは違う領域のことを業務として行わないといけない時、確かにモチベーションが下がる部分はあると思います。しかし、すべては考え方だと思いますが、自分の今までの専門とは異なる研究や業務に就くことは同時に自分の知識や専門性を広げるチャンスでもありますし、自分の専門へ活かすことができる要素もある(それを見出すことができるかは本人次第だと思いますが)と思います。
教育工学というのは学際領域なので、さまざまな専門性を持った方がいますが、いうても「教育」という冠がありますので、教育に関する知識、理論、周辺理論は知っておかなければいけません。それが面倒であると言って、教育に関する知識を持たず、理論を知らずに研究している人もいるように思います(勉強しながら研究するのはいいとして、勉強する必要がないと考えている人もいるようです)。それは私はいかがなものかと思います。
こういう考え方はどのように身に付けるか?難しいと思いますが、私は企業時代に身につけました。もちろん、企業というのはヒエラルキー組織ですので、会社を辞めない限り、上司の指示・命令には原則従わなければなりません。そういう構造内にいるので、「仕方がない」という気持ちもありました。ただ、私はいずれ大学院に行きたいという気持ちは新人の頃からありましたので(まさか辞めることになるとは思いませんでしたが。辞めなくても大学院に行ってもいいと書いてあったので、学部生の浅はかな想像で、辞めなくてもいいものだと思ってましたから)、自分がやりたくないことも、自分の専門とは違うことでも、役に立つ何かが身に付けることができると考えていました。自分にはあまり興味がない内容でも書籍にあたり勉強しました(当然のことですが)。学生であれば、先生からお願いされるお仕事や先輩と共同でプロジェクトをやるなどを通じて学習できますし、意識も変わると思います。それをしている学生とそうではない学生とは大きな差が出てきます。
自分の専門が必ずしも活かせない職に就く可能性が大きい、この世界。その可能性を踏まえて、努力して、チャレンジ精神を持ち、新しい勉強をし、研究を続けるという努力が強く求められるのだと思います。
#とある先生が「教育工学が盛り上がるのはいいことだと思うけど、教育に関する知識・理論を知
#らなくても、勉強しなくてもやっていけるという勘違いしている先生も増えてきていて、それは
#本当に困ったことだ」とおっしゃってました。たとえば、e-learningをすれば、教育工学研究になる
#と考えてしまうことです。これはダメですね・・・