九州大学 山田研究室

企業と組むインパクトと教育工学への熱い視線:教育ゲームブームをテーマに

2011年08月23日

世界的にゲームを教育利用するという動きが出てきています。日本でも数十年前にも教育ゲームブームはありました。ファミコンで算数ゲーム、国語ゲームカセットが出ていた。でも、周りで買った友達はいなかった。ちょうどその頃はドラゴンクエストとかファイナルファンタジーが流行っていて、教育ゲームブームが起こる予感すらなかったと思います。さらに、世界的に見ても日本の学力は低いこともなかったですし、学校外の学習は塾で十分だった(というよりも、学力(今も低下しているほどでもないと思いますが)についてそこまで意識することがなかった)こともあったと思います。

最近、ここまでゲームの教育利用についてトピックに上がるのは、情報機器、ネットワーク、ソフト面の技術発展もありますが、学力向上への意識が世界的に強くなってきていることや、学校外での学習機会をどう与えるか、また継続的に学習をさせる方法など、学力向上につながる周辺的なことに対して注目されるようになってきたことがあると思います。

教育工学の世界的な国際会議”ED-MEDIA”では、教育ゲームについて、ここ数年間で、アワードを受けるものが多いので、世界的にはゲームの教育利用についてポジティブに考えている人が多いと思います。数年前のED-MEDIA(オーランドでやったときだったと思います)では、南アフリカの先生がアワードを受けていましたが、バイオ・ハザードのような3Dゲームで、4人パーティーでそれぞれ、医者、探検家、生物学者とあと1人(忘れました)でジャングルを探検するゲームです。学習目標は医療の文脈において、緊急対処についての知識をつけるというものだったと思います。ゲームでは猛獣に出くわして、襲われて、怪我したり、蛇に噛まれることや、伝染病になったりするわけです。そのトラブルの度に対処を考えるというものです。

最近では教育にゲームを使うための授業設計や教育ゲームを作るにあたって参考にするべき理論をレビューするような研究発表が増えてきています。日本ではNintendo DSで出てくる学習ソフトが流行しています。日本では学習ゲームというと、ネットワークで介して集団で行うというよりも、1人で閉じて行うものが多いように思います。日本では学校でゲームを使うということが教育利用としても、タブー視されていることが多いですし、難しいですが、1つの有効な学習環境として捉え、研究を進めていくきっかけは欲しいものだと思います。

ゲームというエンターテインメント要素が強いものを大学だけで作るのはちょっと難しいと思いますが、ゲームベンダーが協力して行うことは大変インパクトが大きいことですし、学術界・産業界に与える影響は大きいと思います。

ブームを起こす、ブームに乗る、ブームに乗って、成果を活かすということにはそれなりのきっかけが必要で、投資が必要になります。ゲームにしろ、情報機器、ソフトを教育に利用するというのは近年より強く世間から熱いまなざしを受けるようになってきています。私たち教育工学の研究をしている者たちはあまり変わらない状況と思うかもしれませんが、今まで明らかに違うのは、世間の目が向いてきているということだと思います。私たち教育工学関係の研究者ができることは大変多くあると思います。あとはそのきっかけ作り。ここは難しい。でもこれからの研究者に求められることの1つだと思います。

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