企業と組むインパクトと教育工学への熱い視線:教育ゲームブームをテーマに


世界的にゲームを教育利用するという動きが出てきています。日本でも数十年前にも教育ゲームブームはありました。ファミコンで算数ゲーム、国語ゲームカセットが出ていた。でも、周りで買った友達はいなかった。ちょうどその頃はドラゴンクエストとかファイナルファンタジーが流行っていて、教育ゲームブームが起こる予感すらなかったと思います。さらに、世界的に見ても日本の学力は低いこともなかったですし、学校外の学習は塾で十分だった(というよりも、学力(今も低下しているほどでもないと思いますが)についてそこまで意識することがなかった)こともあったと思います。

最近、ここまでゲームの教育利用についてトピックに上がるのは、情報機器、ネットワーク、ソフト面の技術発展もありますが、学力向上への意識が世界的に強くなってきていることや、学校外での学習機会をどう与えるか、また継続的に学習をさせる方法など、学力向上につながる周辺的なことに対して注目されるようになってきたことがあると思います。

教育工学の世界的な国際会議”ED-MEDIA”では、教育ゲームについて、ここ数年間で、アワードを受けるものが多いので、世界的にはゲームの教育利用についてポジティブに考えている人が多いと思います。数年前のED-MEDIA(オーランドでやったときだったと思います)では、南アフリカの先生がアワードを受けていましたが、バイオ・ハザードのような3Dゲームで、4人パーティーでそれぞれ、医者、探検家、生物学者とあと1人(忘れました)でジャングルを探検するゲームです。学習目標は医療の文脈において、緊急対処についての知識をつけるというものだったと思います。ゲームでは猛獣に出くわして、襲われて、怪我したり、蛇に噛まれることや、伝染病になったりするわけです。そのトラブルの度に対処を考えるというものです。

最近では教育にゲームを使うための授業設計や教育ゲームを作るにあたって参考にするべき理論をレビューするような研究発表が増えてきています。日本ではNintendo DSで出てくる学習ソフトが流行しています。日本では学習ゲームというと、ネットワークで介して集団で行うというよりも、1人で閉じて行うものが多いように思います。日本では学校でゲームを使うということが教育利用としても、タブー視されていることが多いですし、難しいですが、1つの有効な学習環境として捉え、研究を進めていくきっかけは欲しいものだと思います。

ゲームというエンターテインメント要素が強いものを大学だけで作るのはちょっと難しいと思いますが、ゲームベンダーが協力して行うことは大変インパクトが大きいことですし、学術界・産業界に与える影響は大きいと思います。

ブームを起こす、ブームに乗る、ブームに乗って、成果を活かすということにはそれなりのきっかけが必要で、投資が必要になります。ゲームにしろ、情報機器、ソフトを教育に利用するというのは近年より強く世間から熱いまなざしを受けるようになってきています。私たち教育工学の研究をしている者たちはあまり変わらない状況と思うかもしれませんが、今まで明らかに違うのは、世間の目が向いてきているということだと思います。私たち教育工学関係の研究者ができることは大変多くあると思います。あとはそのきっかけ作り。ここは難しい。でもこれからの研究者に求められることの1つだと思います。

金沢大学ラーニングコモンズでの対談がWebで公開されました


金沢大学ラーニングコモンズの設計にお力を賜りました、山内祐平先生(東京大学 大学院情報学環)と本学図書館長・人文学類長の柴田正良先生との対談が掲載されている本学図書館報「こだま」がWebで公開されました。対談タイトルは「学びの空間は図書館をどう変えるか?」です。

対談は図書館3階 オープンスタジオで行われました。私は司会をさせてもらいましたが、2人の盛り上がる話に興奮しました。楽しい時間を過ごしました。山内先生、ありがとうございました。私個人としては私の元上司ということで、設計にご協力して頂いた山内先生にこのラーニングコモンズの姿をお見せすることができて感動しております。うれしかったです。

本学ラーニングコモンズは公開されてまだ1年ほどですが、もっともっと良いものにしていくためにがんばっていきたいと思います。

金沢大学附属図書館報「こだま」第175号
巻頭対談 山内祐平先生×柴田正良先生:学びの空間は図書館をどう変えるか?
http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/handle/2297/28573

電子書籍作成入門、終わる


最近、ブログの更新が滞ってました。TwitterやFacebookを使っていると、まとめて文章を書く時間を作ることがなくなってしまいますね。

さて、前期、電子書籍作成入門という授業をやってきました。iBookをリーダーとしたものです。好奇心が強い学生さん4人が受講してくれました。

この授業では電子書籍の内容について企画し、デザインをし、作成をするところまで行いました。写真は最終発表の模様です。私の別の授業を受けている学生さんも発表会を見に来てくれました。1つの班は兼六園のガイドブックで、紙媒体では掲載が難しいパノラマ写真を入れたり、紙ではできない動画を取り込んでいました。

もう1つの班は音楽関係の部活に所属しているためか、トランペット初心者向けの教科書を作っていました。これも大変面白かったです。トランペットの音が取り込んであるだけではなく、作成者の2人のキャラクターが出てきて、某大手通信教育会社のDMに描かれているマンガ風のストーリー仕立てでした。

技術としてはHTML5とCSSの知識で良いのですが、epubの形式理解、電子書籍開発ツールの特徴、その中でのHTMLの処理のされ方なども理解しないといけないので、このあたりは難しかったと思います。InDesignが意外に難しいというのも想定外でした。オーサーリングツールとして良いものと思っているのですが、InDesign上の配置とiBook上の配置が大きくずれるなど、問題も大きかったです。ツールも高いですね。AdobeのPublishing Suiteとか使いたいのですが、お金がかかるみたいなので。こっちは授業で使って、学生さんが開発する書籍は商用利用は考えていないんですよね。多少はお金だしても良いので、もっと使い勝手の良いツールは来年度に向けて探索しないといけません。
電子書籍開発関係の情報はお金になる情報でもあるため、公開されているものは少なかったのは大変だった要因の1つですが、その中でも情報源を探すなど、受講者は積極的でした。

Twitterは私と受講者をつなぐメディアでもありましたが、情報源としても活躍しました。私へのアポ取り、リクエストはTwitterで行われることが多かったですが、情報を探すのにもTwitterは有効でした。

単にHTMLとCSSでWebページを作るのではなく、iPadという新しい媒体上で動くコンテンツの開発を経験すること、iPad上で動くツールも駆使することなど、大きなメリットが本授業にはあるように実感しています。そして、なによりも、電子書籍作成というチームによる協調作業によって、チームで行動すること、学ぶこと、計画をたて、実行し、完了させるために必要なことを多く学んで欲しかったです。電子書籍作成入門という、この授業のゴールはここにあります。

最終発表会のあと、その話をしました。「電子書籍という最終生産物がたとえ失敗作だったとしても、チームでその電子書籍を作ったプロセスを忘れないで欲しい。そのプロセスで学んだことを振り返って、今後の学生生活や将来に役に立てて欲しい」と、チームで学ぶこと、チームで行動することで大切なことを説明し、この授業を締めくくりました。彼らはこの授業を通じて、変化したと実感しています。

あと、今までなかったことなのですが、私が担当した授業「オンラインコミュニケーション」と「電子書籍作成入門」の受講生はかぶっていないのですが、お互いにTwitter上で交流があったり、お互いを認識していたところです。もちろんTwitterはここ最近、流行始めたものなので、非常勤時代を通じて、別の授業を受講している受講者を結ぶことはなかったのですが、Twitterは使い方によっては私が担当している受講者をつなぎ、授業内容だけではなく、お互いの興味を認識させ、新しい人的ネットワークを広げていく、新しい学びの場へ導く潜在力があることを実感しました。実際に、電子書籍作成入門受講者の1人はTwitter上で「オンラインコミュニケーション」の授業内容をモニタリングしていて、アルバイトがない日は参加したいと言い、参加してましたし、「オンラインコミュニケーション」受講者の1人は前述したように電子書籍作成入門の最終発表会に参加してくれました。これは共通教育の授業を実施していく上では驚くべきことです。最後には受講者から、「先生の2つの授業の受講者で、食事会をしませんか?」という提案も・・・これ、ゼミじゃないんですよ。学生からは単位取得目的にされる共通科目なのに。うれしかったですね。

来年度もこのような授業をしたいと思います。今年度の反省を活かして、良い授業にしたいですね。来年はFacebook上で授業補完をしてもよいですね。そうしようかな。後期もこのようなプロジェクト型・学生主導型の授業を行います。そのうち1つは議論の力、プレゼンテーションの力、論理的思考能力を徹底的に学ぶものです。共通科目の割に毎週課題も出ますし、負荷が高いです。なので、本気の学生しか受け入れません。何十人の受講生を期待してません。本気の学生、自分の将来を真剣に考え、がんばっていきたい、強い気持ちがある学生数人でやりたいと思います。本学の学生の悪いところをなんとかしたいと思って、行おうと思った授業なのですが、意図せず、就業力GP絡みの授業?になりそうな感じみたいです(副学長にも耳に入っている???のかな?)

就業力と言われても、よくわかりませんが(そんなでっちあげられたネーミングなんて笑ってしまうのですが)、私が今の金沢大学の学生に一番不足している力をつけさせてあげたいと思っているので、やるだけです。本気で自分を変えたい人だけ来て欲しいですね。

後期も楽しみです。

Social Softwareにはプラスαが必要


ブログやSNSなどでは、そこで話し合われているテーマについて関心がある人が集まり、活発な意見交換や情報交換がなされます(ROMな人も多いのも事実ではありますが)。その場でのインタラクションに注目して、教育利用を考える人も少なくないと思います。

このブログでもソーシャルソフトウェアをテーマにあげて書いていることですが、ソーシャルソフトウェアを教育利用する場合は目的を考えなくてはいけません。この話はICTを教育利用する場合はまず考えなければならないことなのですが、流行りものについてはついこの点を見失いがちだと思います。

ブログやSNSというのはインフォーマルな場で使用されることが多いものです。インフォーマルな場故のコミュニケーションがあり、情報があります。このようなツールを教育利用する場合、学習と思わせないように活発的に使用してもらう工夫が当然ながら必要になりますが、それを乗り越えた後も1つ壁があります。それはブログやSNS上の学びにおける学習目標にもよるのですが、その場で交わされるコミュニケーションの価値や気づきを与える仕組みが必要になってきます。

携帯電話でも同じですが、学生に携帯電話向けソフトウェアを与えても、最初はちょっとやってみるかもしれませんが、継続的に学習することはほとんどないでしょう。前にも書きましたが、ツールだけ与えても、ダメなのです。SNSやブログもそうだと思います。先日の教育工学会でのシンポジウムであった話ですが、SNSを基にしてSNSを活発的に使用するためのモジュールが重要になります。

企業内で使用する場合は、情報共有だけではなく、企業の組織について問題を出させるためにブログやSNSを使用することもあるんだそうです。企業内で使用する場合、ただコミュニケーションを社員同士でさせるだけでは不十分で、社員同士で行われるコミュニケーションから重要な情報を抜き出すためのプロセスが重要になるということです。ソーシャルソフトウェアだけでは不十分ということでした。このことは大学等の教育現場でも同じことを言えるのだと思います。