高等教育論入門が第2版決定しました


昨日、東京から帰ってきたのですが、うれしい知らせがありました。昨年、出版された高等教育論入門(ミネルヴァ書房)の第2版が決定したとのことでした。大変うれしく思います。ありがとうございました。ミネルヴァ書房の梶谷さんを始め、編者の早田先生、諸星先生、青野先生、執筆者の先生方(研究でもお世話になっている松河先生@大阪大学も担当されています)、そしてご購入してくださった皆様のおかげです。この場ではありますが、感謝致します。

私はeラーニングの国際化という部分で、留学生対応のお話(東京外国語大学の事例と国際交流基金の事例)とOCW(MITの事例と東京大学の事例)について簡単ではありますが、紹介させて頂いております。

eラーニングの国際化については、もうちょっと書きたいこともあるのですが、もし次に機会があれば、いろいろ書きたいと思っています。これから大きく状況が変わってきそうなので。

図書館内の協調学習空間に関する評価の論文が掲載されました


この度、金沢大学ラーニングコモンズにあります、協調学習空間の評価に関する論文が日本教育工学会論文誌、35巻のショートレター特集号に掲載されました。ご指導頂きました査読者の先生方には感謝致します。

山田政寛・橋洋平・香川文恵・岡部幸祐 (2011). 図書館における協調学習空間と学習の情意面の関係に関する調査, 日本教育工学会論文誌, 35(suppl.), 53-56

近年、ラーニングコモンズが大学図書館内に構築されることが増えてきました。その中でも協調学習空間を備える大学図書館も多いかと思います。その協調学習空間について、そこの利用者の学習に対する主観的有効性について質問紙調査を行った結果を整理したものです。具体的には図書館内に配置される協調学習空間の中に備え付けられた移動式簡易ホワイトボードや、組み合わせが多様な机などの主観的有効性と、利用者の学習に対する主観的有効性との関係を相関分析で見ています。手法としては荒いのですが、こういった評価は内部説明という意味でも続けていかなければいけないと思っていますし、より発展的な評価、ユーザーベース評価も行っていく予定です。

本論文をサーバーへアップロードしましたので、もしよろしければ、参考程度にご利用頂ければと思っております(評価方法はちょっと粗いです)。何かご質問などございましたら、お気軽にお尋ねください。

論文はこちらです(論文タイトルに敢えてラーニングコモンズとは言っていません)

外国語教育におけるCMC利用について


私が修士の頃から博士を中心に、そして今はソーシャルメディアという枠を広げて研究していますが、外国語学習環境におけるComputer-Mediated Communicationの効果について研究をしています。

ちょっと論文にしようかなーと思っているネタがありましてね。ちょっと備忘として掲載しますね。むかーし読んだ論文です。もしみなさんもご興味ありましたら、読んでみてくださいね。

#ひどい日本語だ・・・(笑)まあ、修士の頃に読んだものということで、ご了承くださいませ

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Towards an effective use of audio conferencing in distance language courses
Language Learning & Technology January 2004, Vol.8, No.1
Regine Hampel Mirjam Hauck
The Open University, United Kingdom

Abstract
The Open Universityでは2002年2月からドイツ語講座にてイギリス国内各地方にいる受講者を対象に、Lyceum―インターネットを介した音声とグラフィックによる会議システムを利用し、オンラインで教授を行う試みを行ってきた。この研究ではオンライン指導を行うにあたっての試みについて考察したい。
最初に、仮想空間における学習(Virtual Learning)と教育環境の論拠について述べ、続いて、我々はオンライン指導における活動デザイン、チューターへの指導と受講者へのサポートいう観点からオンライン指導の開発と実行について述べる。またそれらの評価について簡単に述べることとする。

Introduction
The Open Universityでは1997年から伝統的な遠隔教育(紙ベースの教材を送付し、利用すること、ビデオテープ、カセットテープの利用など)からインターネットを介した、音声とグラフィックを利用したオンラインシステムへ変換するために、そのシステム利用のメリットを調査していた。現在、同期型でインタラクティブ性と取り込んだ音声とグラフィックカンファレンスシステムを利用するに至り、主力教材として紹介され、口頭によるコミュニケーションを可能にしている。
しかし、音声とグラフィックによる会議ツールは言語教育、言語学習シーンに広くは普及していないため、これまであまりこの分野における研究はされていない。そこで、我々はオンライン指導運営(the delivery of tutorials)経験の評価だけではなく、その示唆を研究者で共有する。

我々が行う評価は3つにある。
1:コース用のウェブサイトと会議ツール、その活動内容が試験的に行われたが、その評価は受講者のウェブサイトの閲覧模様や活動を行っている模様を観察することと、受講者からのアンケートによって行った。
2:チュータートレーニングの評価を観察とアンケートによって行った。
3:一年間のコースにて、グループ活動は観察され、ボランティアで参加してくれた受講者とチューターは日誌(logbook)をつけ、アンケートにてフィードバックした(詳細な評価はHampel, 2003)。

Pedagogical Rationale for Audio-Graphic Conferencing
ここでは言語教育、言語学習シーンにて会議ツールの設計や利用をサポートする概念的フレームワークを述べる。

まず1つ目としては第二言語習得における理論である。
・言語習得が発生するシーンは、生徒に理解できるインプットが発生した時である(Krashen,1981,1985)
・意味を交渉するために相互作用できなければならない (Gass & Varonis, 1994; Varonis & Gass, 1985)
・生徒は理解できるアウトプットを創出しなければならない(Swain, 1985)

続いてはCMCに関係する示唆である。
・文書によるCMC(チャットなど)では、生徒は実際のクラスルームよりも多くの発話をする(Kern, 1995; Ortega, 1997)
・CMCは生徒間で平等参加を促し得るツールである(Warschauer, 1996)
・文書によるチャットでは音声によるコミュニケーションと同様の文法的能力を成長させる潜在性が存在する(Pellettieri, 2000)
・CMCは生徒に会話の統制を行うのに重要な役割をする(Chun, 1994)

しかし、ここで疑問なのは、コミュニケーション能力が文書コミュニケーション環境で習得されるかどうかは口頭によるコミュニケーションへうまく変換され得るのかどうかに依存するのではないかということである。多くの研究はこの点においては保留にしており、文書によるインタラクション能力は徐々に口頭による能力へ変換され得るだろうと言うに留まっている(Chun, 1994)

我々は同時に社会文化的な学習にも学習の”鍵”として目を向ける。これはZPDのことを言及している。ZPDをベースにして、構成主義、つまり問題解決や協調学習のような新しい学習アプローチが現われ、知識やスキル習得のための静的な(固定的な:static)伝達モデルから離脱することを象徴したものと言える(Felix, 2002)。そこで学習とは・・・・

・知識構築における活動的で、協調的なプロセスであると考え、
・学習者の期待、目標、既存知識、意図によって制御され得る自主的プロセスであり、
・既存知識や経験がベースになったプロセスであり、
・社会的な意味交渉を経るプロセス、つまりオーセンティックな環境、現実世界に基づいたリッチな学習環境によってサポートされなければならない
(Rouschoff & Ritter, 2001)

これらの新しいアプローチはオーセンティックな教材と状況の重要性を強調している(Chapelle, 1999; Felix, 1999; Rouschoff & Ritter, 2001).

CMCはチューターと個々人の両方との社会的インタラクションを通じての協調学習向けに大変理想的な媒介と言える。これは受講者が知識を習得することを促進させ得るという報告もある(Furstenberg, 1997; Levy, 1997; Felix, 1998)。LEVERAGEプロジェクトは、音声と映像を介した会議システムを利用し、作業ベースアプローチを採用しているが、協調作業をサポートするのに大変効果的であると報告している(Zahner, Fauverge, & Wong, 2000)。

受講者は、各自が将来目標に焦点を当てた、個人的趣向を反映した有意義な問題を解決するといった活動を積極的に行おうとするであろう。The Open Universityでも、受講者によりコントロールを与えることや、チューターの役割を変えることでプロジェクトが成功し得ることを示唆する。

しかし、テキストチャットから複雑なアプリケーションへ移り変わることで、考慮しなければならない別の様相として新しい環境の多様な特徴である(Kress, 2000a, 2000b; Kress & van Leeuwen, 2001)。仮想的な学習環境(以後、VLE)は様々なメディアを組み合わせて、受講者へ提供する。そのことで有意味な言語的潜在性を顕わにするかもしれない(Halliday, 1986)。この視点はネットワークで結ばれたハイパーメディア環境の実現が反映されている(Chun & Plass, 2000)。

Towards An Evaluation of Audio Graphic CMC
Johnston(1999)はオンラインコースによる柔軟性が発揮され得るシーンは非同期であることで、自分のペースで学習を進行していくことができるのみであるとしている。しかし、いくつかの研究ではCMCを利用することで他にもメリットが存在することを報告している。Kelm(1998)は、具体的に指示しながら、自然な言語で表現できること、個々人のコミュニケーションを促進させること、フィードバックがあること、コミュニケーションによって自己の誤りに気づくことができるなどを挙げている。
我々は過去のパイロットにより得られた示唆や先行研究を基に文書と音声によるCMCに関する研究について記述することができた。文書によるCMCは数々の問題を提起した。まず、CMCは教室におけるインタラクションや生徒の出席を促進させ得るが、限定的に、または不定期に参加することはリスクとして認識され得るものとなる(Perkins, 1999)。また文書によるCMCでは支配的な参加者はコミュニケーションの流れを制御し、グループから幾人かのメンバーを排除し得るとの見識もある(Warschauer & Lepeintre, 1997)。
また、オーセンティックな教材を使ったコミュニケーションタスクへの要求も日に日に増していったこともあった。これは受講者とスタッフ間のコミュニケーションがただ単なる人工的な目的よりも発展し得るものでなければならないことの示唆とも考えられる(Selinger & Pearson, 1999)。しかし、オーセンティックな教材を使うことで、受講者に負荷を増大させる可能性も指摘されている(Chun & Plass, 2000)。
The Open Universityにおいてのパイロットによって得られた示唆ではVLEにおける指導ではチューターに大きな負荷(本書ではChallenging)を与えることとなる。それはVLEにて教えることへの自信をつけることや、ピリピリした親のような役目になることや、トラブルシューター、受講者的な立場であり、人間味ある人物であることを求められる(Hauck & Haezewindt, 1999)。
他の問題としてはボディーラングレッジをどう補完するかということであった。VLEでは対面環境よりも強い匿名性が現われ、自発性は弱まり、またコミュニケーションプロセスが非人間的な特徴を帯び得る(Lecourt, 1999)。
こういう言った問題の上で、音声とグラフィックのCMCを実現するために、受講者へのサポート、チュータートレーニング、タスクデザインを考慮した実装をしなければならない。これらのことについては下記の視点で評価する。
・フィードバックセッションとアンケートを通じて、VLEの発達テストの評価(被験者13人)
・フィードバックセッションとアンケートを通じて、チュータートレーニングの評価(被験者19人)
・受講者とチューターのVLEにおける経験をアンケートと日誌、観察によって評価する(被験者は自主的に組まれた12人の受講者のみのグループと6人のチューター)

The Learning And Teaching Environment
・Lyceum
Lyceum-音声とグラフィックを取り合わせた会議ツールーでは受講者とチューターがヘッドセットとマイクを利用し、リアルタイムで協同作業を行い、同時に会話を可能とするが、お互いの姿を見ることはできない。これ以外にも伝統的(traditional)なホワイトボード(ブレインストーミング用コンセプトマップ)、語彙習得のための言語連想ゲーム、協調作業用の共有ドキュメントを準備した。また小グループでのコミュニケーションを可能にするために、自主的にグループを作成することが可能である。
・ウェブサイト
コース用のウェブサイトも用意している。これはコース概要やコース自体のデリバリーに利用される。またコースに関連した情報の提供窓口、また他大学への関連リンク集を提供している。
Design of Learning Activities
今回、我々が利用するデザインのベースはHolliday’s(1999)の示唆である。これは質的なCALLシステムにおいて作られたものであり、文書や音声におけるCMCにて適用し得るものである。Holliday(1999)によると、学習の媒体として、学習者には
・インタラクションによって意味交渉が可能となる機会
・最適化された、理解しうるインプットを読み聞きができる機会
・ターゲットとなる、第二言語の特徴に焦点化されたインプット
・第二言語が理解されうるインプットを助長させうるような、豊富な文脈
を提供しなければならないとしている。

おのおのの活動では、受講者は教科書と選ばれたウェブサイトから教材を提供される。各教材では他の受講者から情報取得をするようガイドされており、それにより、意味交渉とインタラクションが促進される。これにより、受講者は理解され得るアウトプットを会話や記述を通じて生成することが可能となる。
先のZPDは個々人による問題解決よりも多くの個人との協調作業の方が成長を促進させるとあり、Shneiderman(1994)は情報にアクセスすることや、ドリルと実践、事実の習得といった目標ではモチベーションが高められず、創造、コミュニケーション、立案、調査、構築、発見、参加、表現、協調などに高められるとしている。これに基づいて今回のタスクは意見交換、問題解決のための話し合い、共同プレゼンテーションのための準備といった用途を想定し、講義外でのオンラインミーティングの必要性を生み出すよう設計された。
また、我々はワームアップ活動も開発した。これはそこまで多くの作業量を要求するものではなく、VLEに関する知識の共有化やお互いを知り合うこと、距離感を乗り越えるためであったり、協調作業の促進を狙ったものである。これにより、VLEによる匿名性や抽象化を弱めることを狙った。

Developmental Testing
・Methodology
以前に様々なパイロットで試験を行ったが、新たな活動や音声とグラフィックの会議ツール、ウェブサイトに関して開発テストの必要性を感じ、行うこととなった。
管理者レベルとしてはインストールがうまくいくか、受講生がVLEの負荷に苦しむかどうかを確認する必要性があった。学術的な視点では、活動がLyceumに合うものであるかを確認するためであった。
実際、テストは4回の75分のオンライン授業で行われ、被験者はボランティアで募った15人であった。1回はツールの紹介、2,3回目は授業、4回目はフィードバックの時間であった。著者はチューターとオンラインオブザーバーとして役割り、受講者は各自の家で自分自身のパソコンを利用した。また幾人かは学校へ来、活動を行った。その受講者に関しては直接、観察を行った。

Findings

Lyceumについてのアンケートでは、15人中13人からソフトウェアのインストール、使用、ヘルプデスクのサポートについてのフィードバックを得た。その結果は技術的な問題に代表されるものであった。これらには音質の問題や音声欠落の問題も含んでいた。他にもユーザ自身が使用する環境の問題であったり、ISPの問題であるなど、コース開始以前の問題であった。
タスクに関しては、概ねの受講者が「大変興味深い、楽しい、よく活動することができた」などの好評価なものであった。積極的にウェブを活用し、ドイツ語の教材を読む受講者もいたが、彼らが予想した以上に予習が多いことを指摘した受講者もいた。また授業外で会議システムを使い、次回の資料作成のためのディスカッションをした受講者グループもあり、そういったグループは大変活発的であったが、すべての受講者が時間と取ったわけはなく、時間を作ることができなかった受講者は議論に貢献することは難しかった。
ワームアップ活動についても大変役に立つといった感想があった。この活動は言語的に強いるものではなく、会議ツールを使いこなしてもらう目的で作られたものであったが、この活動はコース活動に向けて、大変有意義な活動であった。

TUTOR TRAINING

チューターにVLEに慣れてもらうためにコース開始に先立った2ヶ月前からトレーニングを開始した。トレーニングではLyceumの機能紹介とネチケットについての講義が行われた。このような教育はチューターにオンラインツールの使用に慣れてもらうことや、オンライン講義についての理論を実践してもらうこと、講義を実践するための戦略考案へのサポートとして利用された。
またチューターには受講者の視点で活動に参加してもらうことが重要なので、彼らは活動がどのように進むのかを見据え、ソフトウェアの使用練習を行っていった。
この講義後にアディッショナルセッションということで、オンラインで教育するという経験をシェアするためのセッションへ参加してもらった。
この講義についてもチューターから評価をしてもらった。被験者は19人中15人であった。

Findings: Technical Problems

1/3のチューターが会議ツールのダウンロードに問題があったと報告したが、それについてはCD-ROMで配布することで対応することができた。ほとんどのチューターがオンラインガイドは大変有効であると報告した。しかし、ガイドに項目が足りない、ないといった問題もあった。またガイドを読むよりもヘルプデスクへ直接電話したいというチューターもいた。
ほとんど半分のチューターが最初のセッション開始前にヘルプデスクへ問い合わせをしており、ヘルプデスクはトレーニングセッション中でも連絡を受けることがあった。問い合わせ内容としてはハードのスペックがツールを利用するのに足りない問題であることや、ISP側の問題であるものであった。いつもチューターが満足する内容で対応することができなったのは否めない。
大変多かった問い合わせは音質についてであった。コース開始前にソフトウェアをアップグレードしたが、その問題は解決に至らなかった。この問題はヘッドホンにも依存しているとも考えられる。

次に多かった質問としてはISPについてである。7人のチューターが「セッションが頻繁に切られる」との問い合わせを行った。この問題はチュートリアルがあるときや、夕方あたりに頻繁に発生した。

Findings: The Training Sessions

多くのチューターは最初の導入部分についてはツールの概要をつかむことや、慣れるのに大変良いと評価した。ただ、これにより、受講者がツールの複雑さを感じるのではないかとか、自分自身がVLE上で教えるという役目を強く認識したようである。
ワームアップ活動については大変よい反応であった。これらの活動はどうやって授業で利用するか考えたり、またはコンピューターに対する苦手意識が薄くなったこと、自信の構築に大変貢献したものであった。しかし、一人のチューターはこの活動に割く時間が長すぎると報告した。またもう一人はこの活動のいくつかにはいらいらするといった報告もあった。チューターは時には「いらいらしている両親」のような役割もある。つまり、CMCの誤用なども意識しなければならないのである。
メイン活動については明確に大変有効であると報告があった。活動の構成が学習者各人が考え、学習プロセスに入り込んでしまうように設計されているからである。

しかし、チューターが懸念していることもいくつかある。
・受講者はタスク実行のために多くを予習しなければならない。
・学習になれた受講者でも難しいかもしれない
・もし受講者が乗り気にならないなら、このセッションは期待している効果を生まない
・音質が起因となる問題が発生すると、議論は滞ってしまう
・落ちこぼれをサポートする方法を考えなければならない

STUDENT SUPPORT
受講者へのサポートはオンライン講義を進める上で大変重要である。我々はオンラインでVLEの情報やヘルプデスクを準備し、チューターはチュートリアルでサポートを行った。多くのチューターはメールで受講者と交流したが、個々人となった場合や講義外ではLyceumを利用した。

Induction into Lyceum
永続的な受講者サポートが必要であることが明確となった。多くの受講者はコンピューターに慣れておらず、文書作成のためのコンピューター利用がほとんどであった。そのため受講者には最初の導入セッションには参加するよう要請した。その導入なしでは最初のセッションはうまくいかなかっただろうし、チューターへの負担は増大したことは明らかであった。またコース開始の数週間前からICT補習が行われていた。それでも欠席した受講者はいた。多くのチューターは導入セッションは受講者に学んだことを定着させることに注力した。彼らはワームアップ課題を行い、それに対処した。

Helpdesk Support
技術的な問題についてはヘルプデスクで対応した。ヘルプデスクでしか詳細な情報を収集できないため、電話やメールでの対応は満足のいく対処ができないことがたびたびであった。発生した問題については2ページのリーフレットに記入し、保存しておく。オンラインヘルプは維持や更新に大きな手間がかかるデメリットがある。
EVALUATION OF FIRST YEAR OF PRESENTATION

初年度の活動評価として、我々のうちの1人は1つのチューターグループを観察し、12人の受講者と6人のチューターはアンケートと日誌をつけてくれることを了承した。アンケートは授業日程終了日に記述してもらい、その内容はツール、ウェブサイトの利用について、活動の参加、会話練習の技術的、サポートの両方についてであった。この内容の詳細はHampel,(2003)に記述されている。

Activities
受講者のフィードバックによると、同じ状況にあるメンバーと協調作業に集中的に参加する活動は大変有意義であることを意味していた。これはShneiderman(1994)を支持する。

ワームアップ活動についても同じく大変役に立つとの評価があった。これはドイツ語会話に役に立つだけではなく、知らない人と会話するといったオーセンティックな点も評価されているかである。また大変リラックスできる環境であったという評価もあった。

メインの活動においては意見が様々であった。多くの受講者は楽しい、役に立つなどの評価を行ったが、予習が多いことや、講義が進むにつれて、出席しない受講者も増えてきていて、活動自体も講義の進行で変えていかなければならないのではないかという意見もあった。グループワークについては支配的な受講者は小さいグループを作りたがる危険性を指摘し、またVLE環境だと、ボディーラングレッジもなく、お互いを見ることができないため、実際に何を行っているのかお互いに理解できないといった懸念を指摘した受講者もいた

チューターに関しては、概ね良い評価をしてくれた。活動については議論を助長させるような構成となっていることや、受講者中心で講義が進むことに満足している。しかし、その裏腹として、チューターが授業の進行について主導権を持つことができない懸念を示したチューターもいた。それは悪いことではないと解釈をしたが、懸念事項であると考えられる。しかし、予習、準備をして来ない受講者に対して、個別に対応しなければならないといった負担を強いられたことがあった。講義は進むにつれ、チューターは受講者のニーズを捉えられる様になり、事前にテキスト資料を準備するといったことを行うようになった

Student Support
導入の講義によって、多くの受講者はLyceumをうまく扱えると感じるようになった。しかし、修繕への提案として、1回以上の導入講義とオフラインで利用できるバージョンを希望するといった意見があった。
技術的問題としては音質の問題とセッションがたびたび切られるという問題であった。こういった問題は大変技術的に解決が困難であるため、ヘルプデスクは講義の初めから混雑する状況であった。ヘルプデスクは大いに役に立ったが、受講者の中には満足のいく対応をしてもらえなかったというアンケート結果があった。
コース中にツールのアップデートは行い、音質の問題は低減した。しかし、この技術的問題はチューターや受講者に学習や教授経験にネガティブな効果があると2/3のチューターと受講者は答えている。
Lyceumは全員の受講者に使われたわけではないが、その効果に意味があると認識した受講者は講義の準備やメンバー間と定期的にミーティングを行う活動をしていた。
メールは個人間で連絡をとると行った際に効果を発揮した。例えば講義の準備、プロジェクトのドラフトを送ること、ミーティング日程の調整などである。

CONCLUSION

以上で音声とグラフィックを利用した会議ツールを利用した、パイロット授業を、タスクデザイン、チュータートレーニング、受講者サポートの視点で評価してきた。評価が高い点もあったが、技術的な問題点など課題は多くある。技術を効果的に使うために上げられた示唆を挙げる。
・音質の向上
・推奨スペック変更
・追加デバイスの推薦
・技術的な導入講義におけるチューターの採用
・窓口の統一化
・一週間に一度ほどのツールのアップデート
・Lyceumからサポートへのダイレクトリンク
・自己学習用の講義が収録されたCD-ROMの配布
・セットアップの自動化、講義の自動ブッキング機能

タスクに関してはオフラインの自習時間を設け、講義の準備をしてもらえるようにする。また新しい講義も加える。新しい講義も同じように協調作業的要素を踏まえた、受講者主体のタイプにすることを検討する。

我々の、音声とグラフィックを利用した会議ツールを利用した経験で得られた示唆を下記に示す。
・講義の最初、途中でもコミュニケーションを受講者と取ること
・教授方法のトレーニング、スタッフの育成
・早期に総合的な開発試験を行う
・十分なICTサポート
・受講者が利用するウェブサイトのデザイン
・進行中の問題に対する、十分なサポート体制を構築すること
・タスクデザインの評価を継続していくこと

以上が決定的に重要なポイントであると考える

質疑応答スキル


この時期、修士も博士も発表シーズンです。いろんな発表を見ますが、「この人、全く練習してないな」と明らかにわかるものから、しっかりを用意をして、質疑応答まで含めて、いい発表をされる学生さんもいます。

「いい発表、聞いたなぁ」と思える発表というのは、発表スライドや発言する内容よりも質疑応答の良さもかなりのウェイトを占めると思います。私自身、学会や国際会議、学内の発表を見ても、「いい発表を聞いたな」と思うのは質疑応答の内容がいい時だと思っています。

発表自体はスライドの作成や口頭でいう言葉、1人の練習で対応できる部分もあるのですが、質疑応答はそうはいきません。

私が思うに、質疑応答は発表練習、ゼミ発表や学会発表を繰り返しやる方法が一番いいと思っています。発表練習では同学年や後輩を集めてやるだけではダメです。なぜならば想定質問がされない可能性が高いからです。先輩やお時間を頂けそうな先生にもご参加頂き、練習を重ねるのがいいです。

大学によって、教員や審査会のカラーが違うので、なんとも言えないこともあるのですが、私は質疑応答には1つの型(流れ?)があると思います。

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1:お礼を言う(「ご質問頂きまして、ありがとうございます。」や「大変参考になるご意見を頂きましてありがとうございます」など。プレゼンテーション技法でもよく書かれていますが)

2:できれば、質問者がされた質問内容が自分の研究においてどういう点に関わるか、どういう意義があるかを簡単に言う(「先生のご質問は○○に関する方法についてかと思いますが」、「先生のご質問は私の研究領域では○○という分野に関係していますので、大変重要なご指摘です」など)

3:質問に端的に答える。長いのは絶対にダメ。ダラダラ話されても何が言いたいのかわからない。Yes・Noの質問なら、Yes・Noでまず回答する(お友達や後輩がダラダラ長い回答をした時は「やっちまったな!」と言ってあげてください)。Yes・No、どっちか判別がつかない時は、最初に「それはケースによって変わります」など、最初に答えを言う。続いて、簡単に理由を説明するといい。

4:再度、質問者の質問の意義深さなどを簡単に言う(「先生のご質問は○○の観点では大変重要でして、今後、本研究を発展させていく上で必ず検討しなければなりませんので、今後の方向性を見極めるのに、ヒントになりました。」など)

5:お礼をいう
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これが基本的な型だと思います。ただ、審査会の場合はたいてい自分の研究範囲を超える質問も出てきます。その場合は、自分の研究の範囲・制限を答えて、その範囲内で行った研究成果の価値について説明を簡単にします。続いて、上記の型の4と5を行うのがいいと思います。

質問は3にも書きましたが、簡単に答えることが重要です。まず最初に回答は何なのか、はい・いいえ、賛成・反対などはっきりと言いましょう。多くの方に質問をして頂くことは大変重要で、そのためにはタイムマネージメントをしなくてはいけません。質問できなかった先生はストレスを溜め、結果的に審査が厳しくなることもあります。発表者の回答時間と質問者の質問の時間が質疑応答のタイムマネージメントに一番影響します。質問者に対しては司会者が対応してくださいますが、発表者の方は自分でやらなければいけません。回答に時間がかかりすぎると司会者に怒られることもあります。司会者だけではなく、審査会後に指導教官にも怒られることでしょう。回答時間が長い、さらに何が言いたいのかわからないというのは最悪な状況です。「なにが言いたいのかわからないのでいいです」と質問者の先生に言われてしまったら・・・

わからないこと、途中まで理解できたことは正直に確認しましょう。不明なままで回答しても、よくわからないことになり、混沌とした世界が待っているだけです。「すみません。○○についてお聞きでしょうか?」、「先生の○○とおっしゃっられたところまでは理解できたのですが、その先について、もう一度お願いできますでしょうか」など、答えるのがいいと思います。

あと「修正します」というのは最後の手段です。明らかにミスだった場合や抜けていた場合は素直に「ごめんなさい」と謝って修正するのがいいと思いますが、そうではない場合は、やはり多少、「柔らかめ」に戦っておかないといけないと思います。自分の考え(データに基づいたものですが)もご理解いただかなくてはいけないのですから。

ただ、この型が活きるのは、自分の研究について自分がよく理解をし、下準備をしっかりしておかなければいけません。「結局、あなたがやっていることって何なんですか?」と最終審査などで言われるほど、むなしいことはないです。質問に対しても、データを示すべきところはデータを示して、回答しなければなりません。そのための予備スライドは必ず用意しなければいけません。例えば、プレゼンテーションで実験・実践の手続きについて長々と説明するわけにはいかないのです。そのため、細かな話はあとに残しておきます。あと考察について、ここが一番の議論になるところですが、ここについても先行研究について記述した予備スライドは用意するべきです。修士論文、博士論文で実際に掲載しているデータをできれば視覚的にわかりやすい形でスライドを作成した方がいいです。私は博士審査では、35分のプレゼンテーションでスライドは58枚、予備スライドは60枚から70枚くらい用意しました(合計120~130枚程度)。

これらのことを「教えてください」と言われて、教えてもできるわけでもないです。練習に練習を重ね、ゼミや学会の発表を積極的に続けるしかないと思います。ゼミは自分が所属している研究室のゼミだけでは足りないと思います。外部の大学や勉強会で発表をして、修行するのがいいと思います。それを繰り返し、質疑応答の型を身につけて、知識と自信をつけなければいけません。

先生も先輩も誰も「練習しましょう」なんて言ってもらえることはないです(言ってもらえる研究室は優しい先生で幸せな研究室です)。自分から「練習したいので、お願いします」と言わない限り、誰も助けてくれません。

審査会を迎える学生さんは年末年始、休みがないと思いますが、発表練習、特に質疑応答についてはしっかりと対応できるようにがんばってください。