九州大学 山田研究室

BEATセミナー「外国語学習のソーシャルイノベーション」で話してきた

2010年09月29日

先日、BEAT Seminar「外国語教育のソーシャルイノベーション」にて、パネルディスカッションの指定討論者としてお話してきました。

最初にレアジョブの加藤さん、Lang-8の喜さんのご講演がありました。レアジョブの加藤さんからはなぜレアジョブというサービスを始められたのか、なぜ講師がフィリピン人の方々なのか、サービスの概要などお話がありました。フィリピンでもフィリピン大学という日本でいう東大ランクの大学の現役学生さん、卒業生を実際に採用活動を通じて講師として雇用されているそうです。レアジョブのWebページから講師を選択し、時間を予約し、Skypeで受講するという形になっています。価格も大変安く、25分で129円からで、50分コースもあるということでした。月謝は1ヶ月分まとめて支払うという形になっています。加藤さんのフィリピン初の世界的企業にしたいという思いが伝わるご講演でした。ただ、フィリピン人を雇用して事業を展開されるだけではなく、フィリピンと日本と文化的交流もお考えになられているところが、単なる事業を進めるという意味を越えた、深さを感じました。
私は修士の頃から外国語教育におけるビデオカンファレンス、テキストチャットといった同期型CMCの利用に関して研究をし、学位を頂きましたので、興味深く聞かせて頂きました。実際にどのような学習効果があるのか、知りたいですね。またフィリピン人という同じアジアの人から教えてもらうという効果も興味があるところです。英語は本当にキレいでした。私もちょっとやってみたいと思います。最近、全く英語を話していないので。私は特にリスニングがだめなんですよね。
Lang-8の喜さんのご講演も興味深かったです。テンダムラーニングですね。学びたい言語を母語とする人たちとコミュニケーションを通じて、修正してコミュニケーションを続けるというものでした。自分のソーシャルネットワークを通じて、修正するということです。対応言語数は参加者に依存するので、参加者の出身国分対応できるということになります。事業開始の時は日本ではあまり広報を行わず、アメリカを中心に外国で広報をされていたそうです。興味があるテーマを中心にテキストによりコミュニケーションで学習できるので、いいですよね。実際のコミュニケーションというオーセンティシティーもありますし、非同期テキストコミュニケーションなので、ゆっくり文章を作成することができます。また修正されることで学習になり、さらに社会的存在感も強くなると思います。コミュニケーションにテーマや相手への親近感によっては、50分間もずっと修正をして下さるユーザーもいらっしゃるということでした。Lang-8を気に入って、CMを作って下さる方もいるとか。
文法的な意識が高められ、時間をゆっくりとることができるコミュニケーション媒体だからこそ、うまくまわっていると思いますね。自分の国の言葉を学びたいという思う外国人に対しては本当にうれしい気持ちになりますし、お互いに教え合えば、社会的存在感も強くなり、社会支援を行いたいという気持ちになりますよね。良いサービスだと思います。また、テストとか、そういうガチガチの学習観に縛られないという、ソーシャルメディアがうまくハマる使い方をされていると思います。外国語教育におけるソーシャルメディアに関する研究をしてきた私は「うまい」と思いました。ただ、ビジネス的にはちょっと苦しいんだそうです。ほんと、がんばって欲しいです。
パネルディスカッションでは私が最初に外国語学習におけるソーシャルメディア利用において、重要になる理論を紹介し、課題についてお話しました。私は外国語学習に限らず、学習にソーシャルメディアを利用するにあたって、気を付けるべきはガチガチな学習環境にしないことだと思っています。あくまで対面などメインになる媒体における学習との接続点として利用するのが良いと思っています。ソーシャルメディアは人間関係の充実を主に、モチベーションを高め、ゆるい学びを目指す方がハマりますよね。
印象に残った質問というか議論は、ソーシャルメディアは対面の学びと比べて何が違うかということです。うーん・・・デザインをどうするか、学ぶ内容、縛りにもよりますが、私は比較するものじゃないように思うんですよね。上記で述べたように。違いはいくらでもあると思いますが、利用する主義がそもそも違うと思いますね。対面はがっつり学ぶという形でも良いと思いますし。ソーシャルメディアは緩くし、学習のポイントを外さないようにする。ここが要点で、難しいと思います。総じて学習時間を延ばす、質を向上させるといった間接的に関わる有効性を狙う方がうまいと思いますね。

みなさんはいかがですか?

今回は参加者がビジネス関係者が多かったので、学術的な話、教育のお話には興味ないだろうと思っていましたが、お持ちの方もいらっしゃいましたね。ビジネスのセミナーではなく、教育のセミナーなので、山内先生、北村先生が私をお選びになられたと思ったのですが、大丈夫かとちょっと心配してました。でも、私のお話もご興味を持って頂いた方もいて、終了後に私の発表資料を欲しいという方が何人かいらっしゃいました。なので、公開しますね。リファレンスもつけておきました。ご研究されている方がいらっしゃればご参考にして頂ければと思います。

外国語学習におけるCMC、いやソーシャルメディアの利用に関するものは実践は多いのですが、研究としてはは日本ではまだまだで、まだ数少ない状態です。私が修士の頃、始めた頃は日本で研究の論文として載っているモノが本当に少なく、海外誌をよく読んでました。海外では結構盛んで、EuroCALLではCMCのSIGがあります。日本ではないですよね。これからどんどん増えていってくれることを願っています。そして、その理論的背景にもっと心理学の観点を踏まえたモノをしていって欲しいと思います。
ご質問がありましたら、ご遠慮なく、お気軽にして下さい。

BEATセミナー Togetter
http://togetter.com/li/47376

山田の資料
BEATSeminar20100904

マイコミジャーナルさんで記事になりました。本田義則さん、ありがとうございました。
http://journal.mycom.co.jp/column/bizenglish/043/index.html

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