日本教育工学会第24回全国大会が終わる

上越教育大学で開催されていた日本教育工学会全国大会が終了しました。今回も大変勉強になりました。このシーズン、東京は少し涼しくなっている感じなのですが、新潟はさすがに寒かったです。夜になると冷え込みは強いですね。冬はもっと厳しい寒さなんだろうと思います。


実際の発表ですが、いきなり初日から私は発表でした。運がいいです。語学教育セッションは教育工学会ではあまり盛り上がらないのですが、今回は多かったですね。いつも10名~15名程度なのですが、2,30人はいたような気がします。実践発表が多い語学教育セッションで私だけ毛色が違う、実験的な内容の発表でした。


ビデオカンファレスと対面における学習の情意面と学習意識の差について検討を行ったというものです。最近、さまざまなコミュニケーションメディアが教育の場で使用されてきていますが、人の姿が見えることや声が聞こえることで当然自分の意図が伝わりやすいので、コミュニケーションがしやすくなりますし、それは外国語によるコミュニケーションでも同様に言えることです。しかし、学習のためのコミュニケーションツールとして考えた場合、なぜ自分の意図(非言語によるコミュニケーションも含めて)が伝えやすくなるのか、それが外国語習得にはどういう効果があるのかという点は世界的に見ても多く研究されていません。今回は、対面環境とビデカンファレンスを比較することで、それぞれの特徴やビデオカンファレンスの特徴について発表しました。ありがたいことに多くの方に聞いて頂きました。私の発表をここ数年、ずっと聞いて頂いている先生よりご質問も頂きました。教育工学ではマイナー・・・というより、あまり注目されていない影のセッションですが、このような方がいらっしゃって、ご質問して頂けるということだけでも十分に研究のモチベーションがあがります。大変ありがたいことです。村上先生@京都外大、水野先生@福岡県立大学、湯山さん@青山学院大学、西原先生@東工大(赤堀先生の隣の研究室。渡辺君@東工大等の指導教官)にもきて頂きました。


午後からはシンポジウムでSNSのシンポジウムを聞きました。「実践研究をどう論文にするのか」というもう1つのセッションと大変迷ったのですが、指定討論者が加藤先生@NIME(私の先輩で、博士論文の審査教官としてお世話になりました)ということで、「ガッツリ」と議論をして下さるかもしれないという思いと、私はSNSの学習者向けの利用についてネガティブな考えを持っているので、講演者の先生方のご意見と議論したいと思っていたこともあり、SNSの方にしました。風間先生@NTT、庄司先生@国際大学、虎岩先生@Trywarp、安武先生@広島大学のご講演でした。大変、興味深い発表でした。風間先生がご講演された「つながり」の視覚化というところでは、見せ方というのは情報技術である程度カバーができると思いますが、何をパラメーターにして見せるかというところは工夫ができますし、ソーシャルソフトウェアではいろんな変数を取ってくることができますので、この点は面白いところだと思いました。安武先生は期待通りでした。最初から「私は『実践をどう論文にするか』のシンポジウムに行きたいんですが」と、いきなりつかまれました(笑)。安武先生のご講演では閉じた社会と開けた社会でどうソーシャル・ソフトウェアを使うかというところは議論の観点になると思いますが、SNSなり、Wikiなり、何をゴールとするのかをはっきりさせないといけないと思います。別の考え方としては、SNSの特徴を定義づけ、それに合うタイプの講義を設計するという話もありだと思います。


村上先生@京都外大のご発表も聞いてきました。ムービーの特徴値を基に分割されたシーンに対して、いろいろアノテーションをしていくツールですが、動画間の関連性を加味して、サポートできるツールになれば、いろいろな教材に使用できるかな?と思いました。昔、会社にいたときに、メタデータの関連についてメタデータを付与し、それを検索させるなどのシステム開発をしていましたが、村上先生のこのシステムにもそのような機能を学習利用できる形になると発展していくように思いました。


ポスターもいいですね。おもしろい研究がありました。やはり歌代さん@東工大の研究はいい研究だと思います。あいづちという日本語のコミュニケーションで重要な部分に着目して、あいづちを教えることで、どうなるのか?という評価は大変興味深かったです。歌代さんはコミュニケーション不安という観点で評価をされてましたが、これを学習という観点で切ると「あいづち」を教えることによる効果がより明確になるのではないかと思いました。学習の観点ではコミュニケーション不安がある程度ある方がいいと思います。あと、日本語能力が高い外国人にあいづちに関する調査を行って、学習歴が短い学習者と比較することや、学習教材へどう活かすかなども検討するとおもしろいと思います。


私の先輩の研究も面白かったです。柳沢先生@東洋英和女学院大学の発表では、黒板、白板、PowerPointで学習の主観的な評価や学習項目の記憶定着(2択テスト)を実際の授業で評価されていました。実際には見やすさなどでPowerPointが有意に高いなど項目がありましたが、記憶定着では黒板が一番高く、やはり板書量から検討しても、黒板が効果がありそうな結果でしたが、柳沢先生はこれらの結果は今までの学習習慣が強い影響を与えるのではないか?と仮説を立ててらっしゃいまして、今後、黒板を使った授業が少なくなってきている状況を考えると、PowerPointを見て理解するというような認知的処理、または学習方略があるのではないかとおっしゃってました。


森田先生@早稲田大学は学習者特性を性格検査の分類がどういう学習者タイプかという関係しているかを調査した結果を発表されてました。内向的-外向的、思考型か直感型かなど分類でみると直感型などが将来的なニーズを見合わせて学習をしているといったことが示唆されたということでした。大変おもしろい発表でした。森田先生とお話したのですが、たぶん、学習者特性によってはブレンドよりも完全オンライン型の方が合っているというお話になることや、コンテンツ自体の問題になることも予想されるので、どこまで学習者に合わせていくかというところが、今後のポイントになりそうです。


他にも面白い発表がありました。静岡大学の大島先生の学生さん(なのかな?)のキャリア教育も今後の発展が楽しみです。大学におけるキャリア教育、さらにどうやって現実に働いている社会人のキャリア意識を高めるのか?というところは難しいところです。たぶん、新人社員やベテラン社員が講義の前に立って話するだけではほとんど効果がないと思うのです(学年にもよりますが)。新人社員が経験するような問題を学生に体験させ、問題解決させるのか、インターンにもっと参加させるようにするのか、常々から目的、問題意識を高くするように工夫した講義を提供するのか(どうするんだ???相当、教員と学生間のコミュニケーションを密にするなど考えないと辛そうだけど)、いろいろ考える点がありそうです。


望月先生@専修大学、椿本さん@東大MEETの話も聞きたかったのですが、今、業界的に注目を浴びている2人ですから、人が多くて、聞くことができませんでした。残念。同じ大学ですし、会う機会はこれからいくらでもあるので、またお話を聞かせてもらおうと思っています。


2日目の夜は例年通り、自称ワカモノたちの大宴会を行いました。110名ほどの方にご参加頂きました。誠にありがとうございました。大変盛り上がりました。東工大メンバーが下見へ行き、会場は平澤先生@新潟大学教育学部付属長岡小学校にお世話になりました。飲み会準備でも上越教育大学の学生さんにご尽力頂きました。ありがとうございました。来年は重田さん@東大が幹事長で盛り上げていきたいと思います。来年も多くの方にご参加頂けると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。


そのほか、いろいろご紹介したい発表がありますが、ここまでにしたいと思います。今後の研究の指針を得るためにも大変重要な機会だと思いました。来年は東京大学で行います。2004年に東京工業大学で行いましたが、あれからもう5年経つのですね。あの頃は私はまだ修士2年でした。柳沢先生や加藤先生を始め、大浦くん@ワシントン大学、山本くん@ジャストシステム、御園さん@東工大が深夜、起きて、システム作りをしていたことを覚えています。あの日々が来るのですね・・・私もいろいろバタバタ動き回っていたと思います。発表もしたのですが、何を発表したのかも覚えていません。忙しくて、発表した後は座長の先生に事情を説明し、発表部屋から出て、仕事していたと思います。がんばっていきたいと思います。


さて、土曜日も学会発表だ・・・朝、フットサルしてから行こっと。

紹介文献

山田政寛、赤堀侃司、言語教育システムの利用中における社会的存在感と学習意識に関する検討:対面とビデオカンファレンスの比較において、日本教育工学会第24回全国大会講演論文集、pp.227-228

村上正行、丸谷宜史、正司哲朗、角所考、東正造、蔦田聡、美濃導彦、「授業映像シーンを用いた授業の要約による教育効果の検討」、日本教育工学会第24回全国大会講演論文集、pp.369-370

歌代崇史、柳沢昌義、赤堀侃司、「聞き手反応の学習による日本語不安と聞き手行動の変化」、日本教育工学会第24回全国大会講演論文集、pp.593-594

柳沢昌義、福田沙織、岸亜希子、「黒板とPowerPointによる授業と学生のノートテイキングの関係に関する研究」、日本教育工学会第24回全国大会講演論文集、pp.855-856

森田裕介、柳生大輔、平野順子、津村英幸、藤木卓、寺島浩介、「学習者特性を考慮した効果的なブレンディッド学習のための基礎調査」、日本教育工学会第24回全国大会講演論文集、pp.875-876
このサイトは金沢大学 大学教育開発・支援センター 准教授 山田政寛(やまだ まさのり)のブログです。教育工学の観点からICTを使った教育環境の構築と評価に関する研究を中心に行っています。