2008年10月

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最近、英語学習コミュニティーサイト"I Know"をはじめ、様々な学習コミュニティーサイトが登場してきています。教育工学でもSNSの教育利用が1つのテーマになっていますが、ここにまた1つ、英語学習コミュニティーサイトがありました。

Q&A 英語学習コミュニティー「えそら」








このサイトの特徴は本格的な英語学習をするのではなく、「ちょっとした表現」を知ることができるという点だと思います。開発者のブログを読んでいても、本格的な学習を目指しているというものではないように思いました。この「緩さ」がいいじゃないですか。大学の講義でこの手のものを使おうとすると、教員は欲張りなもので、本格的な学習、たとえばドリルなんて提供してしまうわけですが、そんなことは一切なし。すばらしい「緩さ」じゃないですか。あくまできっかけ作りという感じがします。

サイトでは英語学習教材を提供するのではなく、メンバーがちょっと知りたい表現やその他さまざまな英語に関係するスレッドを上げ、知っている人がそれに回答していくという形です。「教えてGoo」の英語学習版+拡張機能という形ですね。

「教えてGoo」や「Hatena」に近いのは、回答やスレッドなどを評価できることです。メンバーは「ちょうど知りたいかったんだよ!」とか、「これはいい回答だ」とか、「この回答をした人はすばらしい!」など感じたことがあれば、星マークをクリックすることで評価を付けることができます。この星の色は黄色と赤の2段階に分けることでき、自分で意味合いを変えて、色を付けることができます。

また、YouTube上にある動画もスレッドにいれることができ、英語学習に役立ちそうな動画を紹介し、その動画をテーマに話をすることができます。

これはコミュニティーサイトなので、マイページを持つこと出来るのですが、このマイページには自分の紹介や今学習している言語と母国語を登録することができます。またマイページが見られた回数とつけられた星の数を表示することができます。星を付けたスレッドが更新されると更新通知が表示されます。これはMixiで自分が入っているコミュニティーに新しい書き込みがあるとマイページに表示されるという仕組みと似ていますね。

このサービス、企業が提供しているのではなく、個人が考えて、開発し、提供しているのです。これがまたすごい!個人ゆえに自由に考えたものを提供できるというのいいですね。こういうことをするには相当なインスピレーションと開発能力が求められますが、こういうことができる人は本当に強みがある人だと思いました。

コミュニティーといってもメンバー間でつながりを持たせるような機能がないので、一般世間的にいわれるSNSとは違います。こういうサイトを活発化させるには質問者と回答者の役割を果たす人を取り込まなくてはいけないのですが、この点についての工夫を知りたいです。自由に開放しても、そういう役割を担ってくれる人は少ないでしょう。ほとんどROMだと私は思うのです。そのため、こういったインフォーマルな学習コミュニティーサイトと謳っているものは単に人を集めてはいけません。重要なことはどうやって上級者、中級者、初級者の各レベルで書き込んでくれる人を集めてるに掛っていると思います。この工夫をぜひ知りたいです。

教育にSNSを利用するというテーマが最近、大きなテーマですが、もしSNSを学習者向けに提供するという強い思いがあるのであれば、SNSという環境を有効に活かすための「地道な力仕事(だと私は思う)」がどういうことなのか、どうすればいいのか、この土台になる点を教育工学や協調教育の研究分野だけではなく、心理学などの幅広い研究分野から検討する必要があると思います。

Q&A 英語学習コミュニティー「えそら」

280slidesはすごい!

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オンラインでパワーポイントのスライドを作ることができて、さらにシェアもできる・・・なんてすごいツールあります。これはびっくりですね。そのサイトは280slidesというサイトです。















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いろいろ機能があるのですが、ローカルにある資料をオンライン上の編集中のスライドに挿入することもできますし、作った資料をダウンロードすることもできます。

アニメーションはできないようですが、シェイプ、画像、動画を挿入することもできます。作ったものはShareSlideというサイトで共有することも可能です。








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実際作り始めるとこんな画面からスタートします。パワーポイントぽいインターフェースです。ただ、日本語は使えないようです。














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テストで作ってみました。動画は自分でアップロードした動画を使うことができるのはもちろん、YouTubeからキーワード検索で動画をひっぱってくることも可能です。それを挿入することもできます。

フォントもいろいろあります。これはローカルの環境を読みに行ってるんですかね?環境によってはインストールされていないフォントもありますので。



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当然ですが、オンラインでスライドショーも可能です。

動画も再生されますが、YouTubeの場合は再生タイミングは設定できないぽいです。










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ローカルでも動きますよ。形式はpptxです。YouTubeの動画も再生されました。

















いやー、これはすごいオンラインツールです。何で作っているんだろう・・・気になりますね。サーバーサイドではC++などでWindows APIをいじって、スライド作成プログラムが動いていそうです。

もし興味がある方は使ってみてください。ちょっと動作が重いので、その辺りはご注意ください。


280Slides
http://280slides.com/ 

誕生日

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とうとう31歳になってしまいました。40代への階段を上りはじめたという感じがします。30になると、フットサルをしていても、動きが鈍くなったなと感じることがありましたが、今後は1歳1歳年を取るたびにいろいろ感じることがあるのでしょうね。最近はちょっと体調が悪い日が続いていました。母親から心配されているのか、体脂肪や骨密度など測ることができる体重計をもらいました。

誕生日といっても、普通の時間を過ごしていました。嫁さんが実験で立川に行ったので、家で洗濯、掃除をしていました。なんかゆっくりと家でしていました。テレビをふと見てみると、NHKでBEAT客員教授の飯吉先生が出てました。この前はBEATフェローをして頂いておりますNIMEの堀田先生が出てました。

嫁さんが疲れて帰ってくるだろうと思い、夕食も作りました。私は料理が好きなので、別に作ることは苦でもないです。むしろ楽しいので、気分が晴れます。普段から自分でも作ることが多いのです。もっと凝ったものを作ってもよかったのですが、洗濯・掃除でちょっと疲れたので、簡単に煮物、味噌汁、さつまいものご飯を作りました。

こんなのんびりとした日を過ごすのもいいですね。

31になり、何か新しい目標を!と言いたいところなのですが、1年で目標を立てる機会になる日は3つあります。元日、新年度、誕生日の3つです。今年は年度初めに立てた目標があり、それがまだ達成できていないので、その達成に向けてがんばりたいと思います。あえて言うならフットサル行く時間をキープする(できれば増やす)ことでしょうか。小さいですが・・・(笑)

これからもよろしくお願いいたします。
ここ1か月で学会に2つ参加しました。語学教育+ICTの利用に関するセッション、または学会なのですが、ちょっと疑問に思うことがあります。ものすごく単純なことなのです。


「学習者にツールを与えるだけでは何もならない」ということです。


もちろん学習者の属性も影響するので、それがすべて言いきれるわけではないです。ただ、最近、語学教育にICTを利用しようと考える方々の中で、1つの誤解があるのではないかと思うのです。eラーニングでも携帯電話でも学習者に与えれば、学習者はやる気になるという「誤解」です。デジタルデバイスにもともと興味があるような子はどんどん触っていって、次第に勉強していくようなことがあるかもしれませんが、大半の大学生はそうではないと思います。


そういうものを与えられれば、最初はやるでしょう。新規性効果がありますから。しかし、次第に使用しなくなっていくでしょう。先日の学会でも携帯電話を使って、自律学習を促進するという旨の研究発表があったのですが、やはり結果として、やる気のある子はどんどん勉強をするが、やる気がない子はやらない、携帯電話でせっかく教材を提供してもやらないということが示されていました。

これは何も疑問がない、至極真当な話です。ツールを与えただけでは、動機付けにも何もならないということです。やる気がある子は何を与えても勉強はしますし、誰から何も言われなくても自分で学習することができる子が大半だと思います(もしかすると、そういう子は自分の学習スタイルができているので、ツールを与えられること自体を嫌がる可能性もあります)。「ツールを与えれば、学習者の動機付けにつながり、学習するようになる」というのは、私は「妄想」だと考えます。


しかし、ICTでなければできないこと、ICTがあれば楽になること、効果が大きくなることが予想されることは多くあります。ただ、ICTは、たかがツールです。それをどう利用するか、効果が出るようにコントロールするのは現場の教員(研究者)です。


外国語教育研究というのは、もちろん、「教育」と語っている以上、教育現場に研究成果を還元できるようにしなければなりません。研究フィールドも現場が多くなります。ですが、新しい何か、ここでいうとICTになりますが、そういうものが登場し、その効果を検証するためには、やはり実験的検証を行わなければなりません。教育工学では王道なのですが、(実験的評価→修正)×N回→実践評価というプロセスは重要だと思います。ソフトウェアを開発するときも似たようなプロセスです。


外国語教育に関する研究発表をご覧になられた方々も多いかと思うのですが、実践を重んじるばかり、要因統制があまりできず、ツールの評価といっても、ツールの評価になっていない、あべこべな結論になっているものも少なくありません。外国語教育の研究すべてがそうかというと、そうではありません。外国語教育と関連が深い応用言語学は1980年にApplied Linguisticsという論文誌が出版されて、今は大きな研究分野となりましたが、その頃はちょうど認知心理学という学問分野が現れれる時期で、応用言語学は認知心理学の研究知見とも加味して研究されることが多いのです。アプローチとして、当然、教室における授業、長期的な評価も行いますが、実験室実験も行い、要因間の検証を応用言語学は行っています。確かに「習得」というレベルで見ると、それは実践的に長期的にやらないといけない部分もあるとは思いますが、言語情報処理の過程や情意面の評価、アウトプットの比較評価という点では実験室的な評価でも相当な部分を検討することが可能だと私は考えます。応用言語学と外国語教育学とは少し違う研究分野にはなるのですが、重なっている部分があるこの分野にいる研究者や実践家が実験的アプローチを知らないわけではないのです。


コンピューターの登場、携帯電話の登場、最近はそれらデバイスを使って、ブログやSNSなどのソーシャルソフトウェアの教育利用が検討されてきています。それをいきなり実践評価するという研究発表もありますが、そもそもそれらの効果は何なのか、その効果を主張するための仮説は何か?ここの検討・検証がなく、研究が進められている感があります。特に外国語教育についてはそれが顕著だと、私はここ数年、外国語教育系の学会に参加して思います。これは日本だけか?と思っていましたが、そうでもないです。世界的に実験的アプローチが忘れられている?軽んじられているのだと思います。それゆえに「外国語コミュニケーションのツールで、マルチモーダルのツールを使用して、効果があった」とか言ってしまうのです。そのツールの何かよかったのか、悪かったのかという議論もなく。


先日、発表した時に、BEATでもお世話になった東京電機大学の吉成先生が座長でした。発表が終わった後、吉成先生より「しっかりと効果検証された研究ですね。ぜひ続けてください」と言われました。それは大変うれしいお言葉でした。


外国語教育系の学会では、おそらく、今後も実践ベースの研究がメインになると思います。実践ベースの研究を否定するわけではないです。私は3年間、高校と大学で英語を教えた経験もありますので、実践評価の価値、重要性、また難しさも理解はしています。むしろ、実践ベースの研究がない教育研究はあり得ません。しかし、今、一度、実験室ベースの研究に立ち戻り、実践で利用したいツールの効果検証をしっかりするべきだと私は思います。


今、英語の非常勤講師をやめたので、実践の場がありませんが、実践に還元できる研究知見を出し続けることができ、またそれが望まれる限り、実験ベースの外国語教育+ICTの研究は続けたいと思っています。

大学におけるESPを考える

電車の中の、英会話学校のGabaの中刷り広告に

「実感。仕事が変わると必要な英語も変わるんだな」

と書いてありました。


英語教育の分野ではESP(English for Specific Purposes)という、何かの目的達成のための英語教育というものがあります。このESPというのは大概念で、これがビジネス向けになるとEBP、学術向けになると、EAP、医学向けになると、EMPなど、分野ごとにいろいろ呼称が変わります。よく樹形図で、この関係性について説明されます。さらにその目的が一般的なものか、より詳細なものかで分類され、ESAP(English for Specific Academic Purposes)とか、EGBP(English for General Business Purposes)などに分かれることもあります。


このブログでもなんどか紹介している「なりきりEnglish!」ですが、これはESBPにカテゴリーされます。English for Specific Business Purposesですね。昨年度の実践で言えば、新日鉄様の営業担当向けに特化したビジネス英語リスニング教材なので、ビジネス英語一般について学習するためのものではないのです。


なりきりEnglish!の実践を通じて感じるのは、ESPの目的は英語の使用目的に特化した英語を指導するだけではなく、その目的に関係する業務や作業についても指導する役割も場合によってはある思います。言葉というのは、仕事内容、もっと細かいレベルになると動作とも関係して発言されるので、その業務に関係する業務、動作には一般英語ではない、その業界特有の特化した英語や表現があるはずです。学習者が業務のベテランであれば、何も問題はないのですが、その業務にこれから就こうと考えている人、またはまだ新人、就いて間もない場合は、業務に関する学習も重要になります。特に海外と仕事している場合はなおさらだと思います。


大学でもESPという講義をすることがあります。特に私立大学では最近、増えてきています。学部卒業後、就職というルートたどることが国立に比べて、多いからということも背景としてあると思います。就職希望の学生の動機付けなどの点を考えると、実際に社会に出て役に立つ英語を学習することは大変効果があると思いますが、大学教員も企業で勤務経験がない場合は限界があります。教える内容にそこまでビジネスの話を入れることができず、教科書頼りにならざる得ません。これはESPを研究・教える教員としては頭が痛いところであります。


これをどうすればいいのか?これは確かに難しいことです。自分の友人や研究会に出て、企業の方々とお話するきっかけをつくり、コンテンツを一緒に作ってくれる人を探したり、授業に協力をお願いするのは大変困難なことでしょう。しかし、最近はWEB上にはいろいろ情報も公開されています。たとえば、@ITではエンジニア向けの情報が網羅されていて、IT企業の実際を見ることができます。時々英語学習についてのネタも出ていて、おもしろいです。ESPのコンテンツを設計するには十分な話もあると思います。私でも読んでいると「海外のエンジニアと話すと、こんなことあるよなー」と、しんみり思うこともあります。


最近、実践的に活躍できる人材の育成というのが大学の1つの大きな課題となってきていますが、単なる一般教養の英語は今後、ますますその実践的な人材育成にどう貢献できるのか?問われるところだと思います。教科書頼りのビジネス英語から、積極的な情報収集とコンテンツ作成をして、教えていくESPが求められていくのだと思います。なりきりEnglish!のプロジェクトを通じて、今後の大学におけるESP教育について深く考えるのでした。
最近、「緩さ」ということを考えます。特に学習において「緩さ」というのはなんだろう?と。もちろん、学習の場に「緩さ」なんて考えなくてもいいという話もありますし、そうなのかもしれません。ですが、ブログやSNSなどのソーシャルソフトウェアを学習に利用するという研究や実践が増えてきている状況から、この学習における「緩さ」、ソーシャルソフトウェアを使用する場合は「緩い」学習コミュニティーというものは何なのか検討する価値はあるように思います。


ソーシャルソフトウェアを学習に利用する場合、ソーシャルソフトウェアで提供される学習環境で学習を完結させ、学習能力の向上を狙ういう観点ではなく、その「学習内容が好きになる」とか、「学校へ行きたくなる」とか、そういう情意的なものをゴールにしておくのが程良いのではないかということなのです。あくまで情意面の向上を目標にする(その先の学習面の向上も暗に目指すのですが)というのが学習における「緩さ」を検討するにあたって、適当と思います。


先日の教育工学会でのSNSのシンポジウムを聞いて、安武先生@広島大学のご講演で、安武先生がおっしゃっていたのですが、「自分の授業で、教室の1番前で誰が寝てたとかそういうことをブログで書いていると、自分のブログのアクセス数が増えた」ということで、SNSが使えるのではないかというヒントになったそうです。やはり、ブログにしろ、SNSにしろ、くそ真面目なことを書くのではなく、授業の様子でちょっと笑えるようなことや自分の経験、身の回りのことなど、状況は授業を取り扱っていても、「緩さ」を感じさせるようなコメントが重要なのだと思います。そう考えるとTwitterなんて、うまい考えだと思いました。「今何しているのか」一言コメントを書けばいいのです。ただ、たぶん、日本語でやると「緩い」と思うのですが。


SNSを学習者との接点、または学習者間で使用するということをあくまで目指す場合は、授業内容のことをズラズラ書くことや、ブログで宿題をさせること、コメントを強制的に書かせること、英語教育ではよくされるのですが、ブログや授業内容の感想を英語で書かせるようなことをしますが、これではダメです。それはLMS付属の電子掲示板でも使えばいい話で、学習者間のつながりを意識しない、あくまで個人に閉じた学習をさせた方がよっぽどマシです。その方が、学習者にとっても教員にとっても楽です。


もちろん、「緩さ」なんて考えなくても、うまくいく場合があります。それはソーシャルソフトウェアの使用する対象が自律的に学習できる子たちの場合です。その場合は面倒なことを考えなくても、器とちょっとした材料を用意しておくと、学習者たちだけで勝手に使用してくれます。でもこんなことが可能な大学はほとんどないでしょう。まず学部生は辛そうです。


「緩さ」というのはどういうことなのでしょうか。「気楽さ」、「楽しさ」、「自由」というのは当然、キーワードになると思うのですが。このあたりを基本調査してみるとおもしろいと思います。JSiSEではSNSの研究部会があることは先日、このブログで書きましたが、是非、こういうことも含めて議論をして頂き、ご報告をお願いしたいと思います。


IT Media気心の知れた仲間とコミュニケーションできる「booon」

Booon
http://booon.jp/

日本教育工学会第24回全国大会が終わる

上越教育大学で開催されていた日本教育工学会全国大会が終了しました。今回も大変勉強になりました。このシーズン、東京は少し涼しくなっている感じなのですが、新潟はさすがに寒かったです。夜になると冷え込みは強いですね。冬はもっと厳しい寒さなんだろうと思います。


実際の発表ですが、いきなり初日から私は発表でした。運がいいです。語学教育セッションは教育工学会ではあまり盛り上がらないのですが、今回は多かったですね。いつも10名~15名程度なのですが、2,30人はいたような気がします。実践発表が多い語学教育セッションで私だけ毛色が違う、実験的な内容の発表でした。


ビデオカンファレスと対面における学習の情意面と学習意識の差について検討を行ったというものです。最近、さまざまなコミュニケーションメディアが教育の場で使用されてきていますが、人の姿が見えることや声が聞こえることで当然自分の意図が伝わりやすいので、コミュニケーションがしやすくなりますし、それは外国語によるコミュニケーションでも同様に言えることです。しかし、学習のためのコミュニケーションツールとして考えた場合、なぜ自分の意図(非言語によるコミュニケーションも含めて)が伝えやすくなるのか、それが外国語習得にはどういう効果があるのかという点は世界的に見ても多く研究されていません。今回は、対面環境とビデカンファレンスを比較することで、それぞれの特徴やビデオカンファレンスの特徴について発表しました。ありがたいことに多くの方に聞いて頂きました。私の発表をここ数年、ずっと聞いて頂いている先生よりご質問も頂きました。教育工学ではマイナー・・・というより、あまり注目されていない影のセッションですが、このような方がいらっしゃって、ご質問して頂けるということだけでも十分に研究のモチベーションがあがります。大変ありがたいことです。村上先生@京都外大、水野先生@福岡県立大学、湯山さん@青山学院大学、西原先生@東工大(赤堀先生の隣の研究室。渡辺君@東工大等の指導教官)にもきて頂きました。


午後からはシンポジウムでSNSのシンポジウムを聞きました。「実践研究をどう論文にするのか」というもう1つのセッションと大変迷ったのですが、指定討論者が加藤先生@NIME(私の先輩で、博士論文の審査教官としてお世話になりました)ということで、「ガッツリ」と議論をして下さるかもしれないという思いと、私はSNSの学習者向けの利用についてネガティブな考えを持っているので、講演者の先生方のご意見と議論したいと思っていたこともあり、SNSの方にしました。風間先生@NTT、庄司先生@国際大学、虎岩先生@Trywarp、安武先生@広島大学のご講演でした。大変、興味深い発表でした。風間先生がご講演された「つながり」の視覚化というところでは、見せ方というのは情報技術である程度カバーができると思いますが、何をパラメーターにして見せるかというところは工夫ができますし、ソーシャルソフトウェアではいろんな変数を取ってくることができますので、この点は面白いところだと思いました。安武先生は期待通りでした。最初から「私は『実践をどう論文にするか』のシンポジウムに行きたいんですが」と、いきなりつかまれました(笑)。安武先生のご講演では閉じた社会と開けた社会でどうソーシャル・ソフトウェアを使うかというところは議論の観点になると思いますが、SNSなり、Wikiなり、何をゴールとするのかをはっきりさせないといけないと思います。別の考え方としては、SNSの特徴を定義づけ、それに合うタイプの講義を設計するという話もありだと思います。


村上先生@京都外大のご発表も聞いてきました。ムービーの特徴値を基に分割されたシーンに対して、いろいろアノテーションをしていくツールですが、動画間の関連性を加味して、サポートできるツールになれば、いろいろな教材に使用できるかな?と思いました。昔、会社にいたときに、メタデータの関連についてメタデータを付与し、それを検索させるなどのシステム開発をしていましたが、村上先生のこのシステムにもそのような機能を学習利用できる形になると発展していくように思いました。


ポスターもいいですね。おもしろい研究がありました。やはり歌代さん@東工大の研究はいい研究だと思います。あいづちという日本語のコミュニケーションで重要な部分に着目して、あいづちを教えることで、どうなるのか?という評価は大変興味深かったです。歌代さんはコミュニケーション不安という観点で評価をされてましたが、これを学習という観点で切ると「あいづち」を教えることによる効果がより明確になるのではないかと思いました。学習の観点ではコミュニケーション不安がある程度ある方がいいと思います。あと、日本語能力が高い外国人にあいづちに関する調査を行って、学習歴が短い学習者と比較することや、学習教材へどう活かすかなども検討するとおもしろいと思います。


私の先輩の研究も面白かったです。柳沢先生@東洋英和女学院大学の発表では、黒板、白板、PowerPointで学習の主観的な評価や学習項目の記憶定着(2択テスト)を実際の授業で評価されていました。実際には見やすさなどでPowerPointが有意に高いなど項目がありましたが、記憶定着では黒板が一番高く、やはり板書量から検討しても、黒板が効果がありそうな結果でしたが、柳沢先生はこれらの結果は今までの学習習慣が強い影響を与えるのではないか?と仮説を立ててらっしゃいまして、今後、黒板を使った授業が少なくなってきている状況を考えると、PowerPointを見て理解するというような認知的処理、または学習方略があるのではないかとおっしゃってました。


森田先生@早稲田大学は学習者特性を性格検査の分類がどういう学習者タイプかという関係しているかを調査した結果を発表されてました。内向的-外向的、思考型か直感型かなど分類でみると直感型などが将来的なニーズを見合わせて学習をしているといったことが示唆されたということでした。大変おもしろい発表でした。森田先生とお話したのですが、たぶん、学習者特性によってはブレンドよりも完全オンライン型の方が合っているというお話になることや、コンテンツ自体の問題になることも予想されるので、どこまで学習者に合わせていくかというところが、今後のポイントになりそうです。


他にも面白い発表がありました。静岡大学の大島先生の学生さん(なのかな?)のキャリア教育も今後の発展が楽しみです。大学におけるキャリア教育、さらにどうやって現実に働いている社会人のキャリア意識を高めるのか?というところは難しいところです。たぶん、新人社員やベテラン社員が講義の前に立って話するだけではほとんど効果がないと思うのです(学年にもよりますが)。新人社員が経験するような問題を学生に体験させ、問題解決させるのか、インターンにもっと参加させるようにするのか、常々から目的、問題意識を高くするように工夫した講義を提供するのか(どうするんだ???相当、教員と学生間のコミュニケーションを密にするなど考えないと辛そうだけど)、いろいろ考える点がありそうです。


望月先生@専修大学、椿本さん@東大MEETの話も聞きたかったのですが、今、業界的に注目を浴びている2人ですから、人が多くて、聞くことができませんでした。残念。同じ大学ですし、会う機会はこれからいくらでもあるので、またお話を聞かせてもらおうと思っています。


2日目の夜は例年通り、自称ワカモノたちの大宴会を行いました。110名ほどの方にご参加頂きました。誠にありがとうございました。大変盛り上がりました。東工大メンバーが下見へ行き、会場は平澤先生@新潟大学教育学部付属長岡小学校にお世話になりました。飲み会準備でも上越教育大学の学生さんにご尽力頂きました。ありがとうございました。来年は重田さん@東大が幹事長で盛り上げていきたいと思います。来年も多くの方にご参加頂けると幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。


そのほか、いろいろご紹介したい発表がありますが、ここまでにしたいと思います。今後の研究の指針を得るためにも大変重要な機会だと思いました。来年は東京大学で行います。2004年に東京工業大学で行いましたが、あれからもう5年経つのですね。あの頃は私はまだ修士2年でした。柳沢先生や加藤先生を始め、大浦くん@ワシントン大学、山本くん@ジャストシステム、御園さん@東工大が深夜、起きて、システム作りをしていたことを覚えています。あの日々が来るのですね・・・私もいろいろバタバタ動き回っていたと思います。発表もしたのですが、何を発表したのかも覚えていません。忙しくて、発表した後は座長の先生に事情を説明し、発表部屋から出て、仕事していたと思います。がんばっていきたいと思います。


さて、土曜日も学会発表だ・・・朝、フットサルしてから行こっと。

紹介文献

山田政寛、赤堀侃司、言語教育システムの利用中における社会的存在感と学習意識に関する検討:対面とビデオカンファレンスの比較において、日本教育工学会第24回全国大会講演論文集、pp.227-228

村上正行、丸谷宜史、正司哲朗、角所考、東正造、蔦田聡、美濃導彦、「授業映像シーンを用いた授業の要約による教育効果の検討」、日本教育工学会第24回全国大会講演論文集、pp.369-370

歌代崇史、柳沢昌義、赤堀侃司、「聞き手反応の学習による日本語不安と聞き手行動の変化」、日本教育工学会第24回全国大会講演論文集、pp.593-594

柳沢昌義、福田沙織、岸亜希子、「黒板とPowerPointによる授業と学生のノートテイキングの関係に関する研究」、日本教育工学会第24回全国大会講演論文集、pp.855-856

森田裕介、柳生大輔、平野順子、津村英幸、藤木卓、寺島浩介、「学習者特性を考慮した効果的なブレンディッド学習のための基礎調査」、日本教育工学会第24回全国大会講演論文集、pp.875-876
世界的にゲームを教育利用するという動きが出てきています。以前もこのブログでお話をしましたが、日本でも数十年前にも教育ゲームブームはありました。ファミコンで算数ゲーム、国語ゲームカセットが出ていた。でも、周りで買った友達はいなかった。ちょうどその頃はドラゴンクエストとかファイナルファンタジーが流行っていて、教育ゲームブームが起こる予感すらなかったと思います。さらに、世界的に見ても日本の学力は低いこともなかったですし、学校外の学習は塾で十分だった(というよりも、学力(今も低下しているほどでもないと思いますが)についてそこまで意識することがなかった)こともあったと思います。


最近、ここまでゲームの教育利用についてトピックに上がるのは、情報機器、ネットワーク、ソフト面の技術発展もありますが、学力向上への意識が世界的に強くなってきていることや、学校外での学習機会をどう与えるか、また継続的に学習をさせる方法など、学力向上につながる周辺的なことに対して注目されるようになってきたことがあると思います。


教育工学の世界的な国際会議"ED-MEDIA"では、教育ゲームについて、ここ数年間で、アワードを受けるものが多いので、世界的にはゲームの教育利用についてポジティブに考えている人が多いと思います。数年前のED-MEDIA(オーランドでやったときだったと思います)では、南アフリカの先生がアワードを受けていましたが、バイオ・ハザードのような3Dゲームで、4人パーティーでそれぞれ、医者、探検家、生物学者とあと1人(忘れました)でジャングルを探検するゲームです。学習目標は医療の文脈において、緊急対処についての知識をつけるというものだったと思います。ゲームでは猛獣に出くわして、襲われて、怪我したり、蛇に噛まれることや、伝染病になったりするわけです。そのトラブルの度に対処を考えるというものです。


最近では教育にゲームを使うための授業設計や教育ゲームを作るにあたって参考にするべき理論をレビューするような研究発表が増えてきています。日本ではNintendo DSで出てくる学習ソフトが流行しています。日本では学習ゲームというと、ネットワークで介して集団で行うというよりも、1人で閉じて行うものが多いように思います。日本では学校でゲームを使うということが教育利用としても、タブー視されていることが多いですし、難しいですが、1つの有効な学習環境として捉え、研究を進めていくきっかけは欲しいものだと思います。


マイクロソフトがゲームの教育利用を研究する「G4LI」をニューヨーク大学などと設立

ゲームというエンターテインメント要素が強いものを大学だけで作るのはちょっと難しいと思います。そこでこのようにゲームベンダーが協力して行うことは大変インパクトが大きいことですし、学術界・産業界に与える影響は大きいと思います。

ブームを起こす、ブームに乗る、ブームに乗って、成果を活かすということにはそれなりのきっかけが必要で、投資が必要になります。ゲームにしろ、情報機器、ソフトを教育に利用するというのは近年より強く世間から熱いまなざしを受けるようになってきています。私たち教育工学の研究をしている者たちはあまり変わらない状況と思うかもしれませんが、今まで明らかに違うのは、世間の目が向いてきているということだと思います。私たち教育工学関係の研究者ができることは大変多くあると思います。あとはそのきっかけ作り。ここは難しい。でもこれからの研究者に求められることの1つだと思います。

SNSの教育利用を再び考える

そろそろ教育工学会です。一昨日、中原先生の研究室学生の発表練習がありました。私も修士学生のころはよくやってました。研究室メンバーで自主的に練習会をやって、先生にご指導を受けてました。懐かしいです。

発表練習後、中原先生より、学会の見どころの話がありました。私も教育工学会のプログラムはあまりよく見てなかったので、おもしろそうな発表がないかチェックしてました。

興味があるところはやはり1つはSNSというのがあるのですが、これは教育システム情報学会(JSiSE)でも1つのセッションになるほど、テーマになっていたということでした。JSiSEでは研究部会ができるほどです。


しかし、このSNS、再び思うのですが、どのように教育利用するのがいいのでしょうか?(そもそも教育利用するべきなのか?という議論もあっていいと思いますが)前に、私の後輩の大浦君(現在、ワシントン大学博士課程学生)とは「今のところ、日本でSNSの教育利用で成功してそうな研究は少ない」という話をしていました。なぜなんだろう?とちょっと考えてみたのです。うまくいっていない理由がいくつかあると思うのですが、私が思うところでは・・・


1:フォーマルラーニングの場には合いにくい
 -SNSの特徴である社会的広がり(招待などで、参加者が増えていくことや、学習者中心のコミュニティーを形成することが難しいなど)があまり活発に起こらない。「常に動いている」というSNSでの大きな特徴が活かしきれない。広がりや「常に動いている」というような特徴がないものは電子掲示板やブログと同じです。
 -「人間は楽をしたい生き物」 今の学生の特徴かもしれません。学校外まで勉強はしたくない学生が多い中で、勉強するためのSNSという環境を与えても敬遠されるだけではないか?


2:情報の価値があまり高くない
 -成功しているSNSはMixiにしろ、WEBデザイナーのSNS、就職活動学生のSNSにしろ、SNS内で交わされる情報が学習者にとって価値があるのか?という点です。学習者が興味・関心を自主的に強めて、「知りたい」、「勉強したい」という気持ちになる情報が交わされるものなのか?前に、専修大学の望月先生ともお話をしてたのですが、SNS内で交わされる情報に対して、学習者が強い価値を感じないとSNSはうまくいかないでしょう。World CALLでも日本人の先生で、異文化学習の文脈でSNSを導入したという実践報告がありました(まさしく実践です。研究ではありません)。「日本人側で、コンスタントに参加した人数はどれくらいですか?」と聞かれ、「2,3人」と答えていました。それは当然と言えば当然なのかもしれません。2,3人でもそれは実践として成功だと思います。2,3人の学生にとって、大変価値がある情報がその場で交換されていたのであれば、大成功でしょう。学習者がやりたいことを自主的に行い、学習する環境としてSNSは提供されないといけないと思います。「どうしてもフォーマルラーニングでSNSを使うんだ!」という意思が固い研究者や教員の方は、1授業2,3人程度(それ以下になることもあると思いますが)が常に参加すれば成功というラインを引いておくのがいいと思います(点数を付けるとか、単位をあげるという話になると、SNSの特徴が崩れると思います)。


3:「緩さ」
 -ガチガチに教員が参加するSNSは難しい。特に単位が関係するものでは特に難しいでしょう。監視されているような感覚が生じるのは望ましくないと思います。参加するのも自由、発言するのも自由。ROMもあり。という感じがよいと思います。緩いコミュニティーであることが重要だと思います。進捗とか、管理し始めるとそれはSNSではなく、グループウェアです。


やはり、教員が介在する学習の場にSNSを使用するのは大変なことかと思います。さらに強制力を感じさせないようにするということです。難しいです。SNSの使用は自分本位なのです。自分が使用したい時に使用する。それが友人がきっかけに学習のためのSNS利用を促進できればいいですよね。開放感がある感じで。

こういうニュースがあるようです。
教育家庭新聞:高校生限定のSNS en高校生

IT Media エンタープライズ
FacebookやTwitterの社内利用に肯定的な立場を貫くGartner
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0809/30/news005.html

企業で活躍する人材育成のために

私が中原先生が総括された「なりきりEnglish!」プロジェクトに関わらせて頂いてから、企業内で活躍できる人を育成するために大学ができることは何かということを考えるようになりました。

業務で必要なコミュニケーション能力の育成をするためには

大学は社会で活躍できる人材育成を行うことが1つの使命でもありますので、この点はやはり考えなくてはいけないところだと思います。大学教員は最近は私のように社会人経験を持った人が増えてきました。これはいい傾向のように思います。研究と実践をうまくあわせていくサイクルを作ることができるチャンスになると思います。実際に、ニュースでも

@IT IT人材育成の促進を支援
「大学のシーズと産業界のニーズを付き合わせる」、NIIとIPAが協定


にあるように、企業内で活躍できる人材を育成するために産学連携という、社会人を大学教員として雇うよりも大きな枠で進んでもいます。マイクロソフトも高専と組んで、人材育成に取り組んでいるので、実践的な人材育成の場として教育機関と組むということについては大変重要視されているのだと思います。世の中の情勢から考えると、企業(業界の団体)と教育機関が人材育成のためのプロジェクトを進めるというのがおもしろいのだと思います。お互いに限界がある点を補完しあえると思います。


実践的な人材育成を大学を行うためには、やはり、教える内容がどこまで企業で行われる業務に近くすることができるかという点にあると思います。情報技術や専門用語、設計方法などそういう知識はもちろん重要なのですが、それだけでは今までの大学教育でも十分に対応ができます。産学連携などでできることはチームとして仕事を行う難しさ、またお客様を相手に仕事をする難しさ、ここが重要だと思うのです。


例えば、このニュースでテーマになっているIT業界で新人社員がよくあることとしては、一度、システム仕様を固めたにも関らず、お客様でミドルクラスの方にくつがえされそうになる状況や、要求仕様で、ヒアリングを行ったにも関わらず「仕様漏れだろ!」としつこく言われるようなお客様と仕事をする状況をセッティングし、学習することなどあると大学生でもIT業界の実際を感じながら、学習できると思うのです。私はIT業界にいた人なので、IT業界のことしかわかりませんが、システム開発で一番、重く、体力的にも精神的にもつらいのは要求定義、内部設計、外部設計などの上流工程だと思います。特に要求定義は辛いところだと思います。お客様が口にしていること以外の部分もできるだけ気を配っておかないと、後で文句を言われることが多々あります。このような状況をセッティングし、学習していけるような環境を作るのは大学の研究者ではできないことです。産学連携や社会人経験がある人を大学教員として雇う意味があると思います。


「なりきりEnglish!」は実践的な英語リスニング能力育成のための教材・システムです。実際に働いている人の業務をそのまま英語の教材にしています。上記で記述した、ビジネス上のトラブルについてもコンテンツにしていますので、なりきりEnglish!が対象とする学習者にとっては現実度が高いと思います。「なりきりEnglish!」は社会人教育向けなのですが、これは高等教育で直面している問題に対しても1つの解決策となりえると考えています。


「なりきりEnglish!」がある所以の1つにもなると思うのですが、現状の大学におけるESP(English for Specific Purposes)、特にビジネス英語を対象としたESPは業務遂行の話まで踏み込まない限り、どこまでいってもEAP(English for Academic Purposes)だと思うのです(この点はHutchinson and Waters(1987)も指摘していますが)。ビジネス英語というのは、業務遂行という文脈と結び付けられて初めて活きるもので、どこまでその業務遂行という文脈を大学で実現できるか、ここがキーになると思います。難しいですが、この点を形にして初めて大学におけるビジネス英語教育になると私は信じています。「なりきりEnglish!」は内容として、業務をそのまま英語教材にしているので、業務に関する学習そのものといっても過言ではありません。この教材で不足している業務遂行知識を補完できる方と共同で、もしくは業務遂行知識を身につけて講義を行うことができると本当の意味でのビジネス英語教育になるのだと思います。理想論ではありますが。


現実的にはどこまでできるのか?東京大学 教養学部附属教養教育開発機構の林一雅先生(私のフットサル友でもありますが)が博士課程の頃にされていた、スタンフォード大学との共同プロジェクト学習は実際に企業から資金を頂いて、製品開発を行うというものだったと思います(企業へのフィードバックはあったように記憶していますが、ちょっと定かではありません)。さすがにここまで大規模なことは難しいですが、業界が実践的な人材育成の場として大学を認知し、人材育成の重要性に理解して下さるのであれば、大規模ではなくても、1セメスターの講義でも可能だと思います。単純に社会人を招待し、1回の講義で講演していただいても、学生には真正性(オーセンティシティー)がないので、わからないと思います。


大学側には実践的な人材育成の場と就職率向上という実績、企業側には人材育成のコストダウンと一定の優秀な人材ソースとしてのメリットがあります。体制としても、大学側は人材育成のプロフェッショナルとして、教育・学習環境の設置と教材開発、講義の実施。企業側は教材と環境の設計と育成(社内文化)に関するノウハウの共有、資金の提供(ここは大学にもメリットがあるので、出してもいいと思いますが。またウン百万とそんな高額でなくても可能だと思いますし)。もちろん一連のコースで行うことがいいと思いますが、1つの講義からコツコツやることで、同調者も現れ、広がりを見せていくのではないでしょうか。また研究所よりも、1つ、2つの大学で動いた方が小回りもききますし、また就職層が一番多い、学部を抱えているという大きなメリットも活かせると思います。


これから大学の授業というのは大きく変わるような気がします。大学教員も自分の専門をただ教えるだけではなく、社会との結びつきを説明し、できるだけそれがわかるような取組が求められるのだと思います。


@IT IT人材育成の促進を支援
「大学のシーズと産業界のニーズを付き合わせる」、NIIとIPAが協定


世界のギャップを可視化する

この夏の赤堀研究室の合宿でも読んだのですが、eラーニングで学習をするには、それなりに自分で学習を進めていくという強い気持ちと態度、行動が必要になります。場所、時間を問わず、好きにできるという意味は裏を返すと、自分で自分の普段の生活態度や意識を自分自身で理解しないと、そういう便利なツールを使ってもあまり意味がないということなのかもしれません。

合宿で読んだ本では物理学のシミュレーションソフトの仕組みについて説明している章がありましたが、物理ほど難しいものでなければ、簡単なシミュレーションソフトを作ることができます。一番やりやすいのは数値をグラフ化して、変数間の関係性を見せるということです。

世界中にはいろいろな情報が公開されていますが、これらの情報を使って、何かおもしろいことはできないか?と思うわけです。PHPでも数字をグラフ化する関数がありますが、GoogleもGraph APIを公開しています。これを使ったおもしろいものがありましたので、紹介します。

gapminder1.jpggapminder2.jpg

GapMinderというものです。これ自体はここ数日、このブログで紹介した、世界の諸問題を解決しようというような意図はないのですが、グラフでもアニメーションにして、時間の推移ともに変化する状況をグラフで見ることができます。このサイトでは、たとえば、世界各国の平均収入とCO2排出量との関係性や、平均寿命と教育水準と一見関係なさそうな関係性も見ることができます。2軸の変数は軸の名前のところがプルダウンメニューになっているので、その中から自由に選択することができます。グラフの上にマウスカーソルを合わせると国の名前が表示されます。

gapminder3.jpgまたこんな感じで、地図上にグラフをマッピングしてくれうと、地域ごとでの状況も見ることができます。














gapminder4.jpgグラフ下のPlayボタンを押すと、時間軸に沿って、各国の状況変化をアニメーションで見せてくれます。Google Graph上ではこれをMotion Graphというらしいです。

このグラフ作成はGoogleのAPIを使うこともできますし、このグラフ作成の基になっているデータも公開されているようです。

このGap Minderのコミュニティーに入るといろいろな情報交換ができるようです。






gapminder5.jpgスプレッドシート上でもMotion Graphが動きます。おもしろいですね。

こういったツール、社会科とかでも使えそうですね。教育に費やされるお金と関係がある変数を見つけ出して、その理由をいろんな資料を調べさせるような授業とかおもしろいかもしれません。小学生では難しいかもしれませんが、中学、高等ではできるように思います。








FlashでもAJAXでも、PHPでも数字をグラフ化するAPIは出てきていますが、見せ方をこのような形で実装すると面白いですよね。自分でもどんどん変数の設定をして、グラフを作ってみたくなります。

Gapminder World
http://graphs.gapminder.org/world/

Google スプレッドシートでも公開されています。
http://spreadsheets.google.com/pub?key=pCQbetd-CptE1ZQeQk8LoNw

このサイトは金沢大学 大学教育開発・支援センター 准教授 山田政寛(やまだ まさのり)のブログです。教育工学の観点からICTを使った教育環境の構築と評価に関する研究を中心に行っています。