Web2.0と学習システム

最近、教育工学系の学会の発表でWeb2.0的な学習システムに関するものが多くなってきた。
世界的にWeb2.0という言葉が流行り、いまや、Web3.0とか、4.0とかなにやらよくわからない
ことを言う研究者もいる。

このWeb2.0という言葉。何を意味しているのか?
単純にWikipediaやBlogを使えばWeb2.0だとは思っていないでしょうか?
私が主に研究をしてきた言語教育の分野ではそういう考え方が多いように
思います。

学習に情報技術を使用する場合は、学習に関係する理論を理解した上で、
技術を使用しないといけません。その技術を使用すると学習の何が変わるのか、
それを仮説として、効果の検証をしないといけません。たとえ、何も変わらなかった
としても。

Web2.0は何か?規格でもありません。Web2.0の提唱者の1人、オライリー
によると、Webを使った時に「Web2.0」と判断される人間の行動に関する判断
基準のようなものということです。オライリーはWeb2.0の要素は7つあります。
これを1つでも満たしていれば、そのアプリケーションはWeb2.0的と言えますし、
その利用者の行動もWeb2.0的と言えます。なので、WikiやBlogを単に使う
だけでは「Web2.0」ではないのです。Wikiを使っても、単純に電子掲示板で
よくある、議論をしているようでは「Web2.0」ではないですし、逆に電子掲示板
でも、「Web2.0」的なユーザー行動はあり得るのです。

オライリーがいう、Web2.0の要素をWeb Designingがまとめています。

1:リッチコンテンツではなく、リッチな体験に(Googleサジェストなど)
2:ユーザーによる分類:タグつけ(はてな、flickr、del.icio.us)
3:誰もが情報ボランティアに(価格.com、@Cosme)
4:80:20の法則の崩壊(Amazon、Google AdSense)
5:情報発信ではなく、情報への参加(Blog、SNS)
6:ユーザーを信頼する(Wikipedia)
7:分散化ネットワーク(BitTorrent、SETI)

学習場面に使うのならば、これらの要素がどのように学習に結びつくのかを
学習理論と照らし合わせて説明されなければならないと思います。
たとえば、情報への参加という面では、だれでも自分が好きな情報を世界へ
発信することが可能になるわけですが、この行動が学習理論上ではどのように
説明され、どのような効果があるのかを説明しなければなりません。
しかも、「それってさ、Blogじゃなくてもよくないですか?」と言われるのは結構
辛いです。「BBSでいいんじゃないですか?」と言われかねないということなのです。
そのため、単にツールを使えばいいというわけではなく、「Web2.0」的なユーザー
行動を支援することが重要になるでしょう。

ということは、単に「Web2.0」的アプリケーションを使っただけでは、学習への効果
を測ることはできず、「Web2.0」的な行動をとった学習者が、どう学習的な側面で
変容したのかを検証するというのが正当な評価方法だと思います。

Tim O'Reilly "What is Web 2.0?"
http://www.oreillynet.com/pub/a/oreilly/tim/news/2005/09/30/what-is-web-20.html
このサイトは金沢大学 大学教育開発・支援センター 准教授 山田政寛(やまだ まさのり)のブログです。教育工学の観点からICTを使った教育環境の構築と評価に関する研究を中心に行っています。